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石坂凛はうるさかわいい  作者: 矢田悠進
3/5

割引券がなくても

「なにィ!!」


俺は、寝坊した。


ーーーーー


学校に到着したのは8時25分。結論を言えばセーフだ。良かった良かった。しかし明日からゴールデンウィークだって言うのに、ラスト1日でこんなことになったのは悔しい。

教室に入ると、すでにお喋りに興じる生徒たちで満たされ、賑やかだ。いつもとは違う空気に、少しムズマズしてしまう。


「おうコウスケ、今日遅いじゃん」


「ちょっと寝坊した……ギリギリで焦った」


ドアの近くにいた友達に話しかけられたので、事情を説明する。言っておくが、男友達、いるからな。石坂としか話してないわけじゃあないからな。


自分の席に鞄を置くと、教室のど真ん中でトークしている石坂と目が合った。……ただ、目が合っただけだった。いや、何か期待していたわけではないけれども。


実は駅から学校まで走って来て疲れたので、そのまま自席に座って何もせず時を過ごした。


やがて、時計の長針が6を指すと、ホームルーム前の予鈴が鳴る。皆、がやがやと各々の席へ戻っていく。


ちなみに、この時点で予鈴を無視して喋り続ける奴はあんまり好きじゃない。時間をみて行動しろよー。


「えいっ」


「ひょっ!?」


「わ、変な声ー」


「石坂……急になんだよ」


ちゃんと予鈴に従って戻って来た石坂に、「ほっぺツン」された。おかげで右頬がむずがゆい。


石坂は俺の後ろを通って席に着く。


「今日遅かったねコースケ。どしたの?」


「ちと寝坊した……」


「おー、睡眠は大事だ」


寝坊賛成みたいなフォローをいれられた。


「いや、つってもなあ」


「いーじゃんいーじゃん。間に合ってるんだからさ。逆に普段早めに起きてさっさと学校来てるのすごいと思うし、たまにはゆっくりでもいーじゃない」


「うーん、まあそうか。でもさ、石坂も早くね?俺より早いよな?何時に来てるの?」


「え!?コースケが来る5分くらい前かな。ほとんどおんなじだよ……?」


「へー」


じゃあ俺が来るまでの5分、一人で遊んでるのか?なにしてるんだ?


そうこうしている間に、チャイムが鳴る。ホームルーム開始時刻だ。


ーーーーー


1日と言うのはあっという間で、気づいたら授業は全部終わっている。あとは帰りのホームルームが終われば、もう放課後。一年生は、4月の内は部活もないので、帰宅するのみだ。


教科書を鞄に詰めたりと、帰る支度をしていると、石坂が話しかけてきた。


「ねえコースケ」


「ん?」


「その……このあと暇?」


「暇だよ?」


「じゃあさ、ちょっと付き合ってくれない?」


「……は?」


ーーーーー


王浜。言わずと知れた大都会。もちろん首都トウキョーには負けるだろうが、夜景のキレイな港町だ。俺の高校は王浜の駅から徒歩15分の所にある。放課後にここで遊んでいく生徒も多い。

そして、石坂と俺も、王浜に向かっていた。


「いやあ、突然ごめんねー。王浜って、一人で歩くのは怖いからさ。怪しい人に絡まれたら嫌でしょ?」


「そりゃそうだ」


JKが一人で歩いていたら良くない奴に狙われる可能性は高そうだ。そればかりか、男の俺だって一人だったらカツアゲとかありえる。都会での単独行動は危険だ。


「でも、なんで俺なんだ?普通に女子と行けばよかったじゃん」


「それがさー、メイちゃんもサトちゃんも塾だってー」


知ってる前提で進んでるけどメイちゃんサトちゃんとは誰だ。まだクラスメートの名前は把握しきれてない。


「あ、私がいつもつるんでる2人ね」


「つるんでるって……そーいや3人でよくいるな」


「メイちゃんの行ってる塾にサトちゃんが説明聞きにいくんだって。皆勉強してて偉いねえ」


それは……大丈夫なのか?石坂ハブられてないよな?女子の友達事情はよくわからないが、いやだからこそ無駄に心配になってしまう。


「そーゆーわけだからコースケ誘ったんだ」


「ほー」


正直嬉しい。


「で、何しに行くの?」


「化粧水がなくなっちゃったから買い足しー!」


「化粧水!?」


なにそれ、化粧品か。え、俺知らないよ?キラキラした店連れてかれるのか?


と、思っていたが。


「到着〜」


たどり着いたのはドラッグストアだった。


「ここに売ってるのか」


「うん。コースケ、化粧水ってわかる?」


「いや、わからん」


「だからソワソワしてたのか〜!」


俺たちは店内へ入っていく。


「化粧水はお肌をキレイに保つものなのだよ!」


「ふーん」


「乳液とセットで使うんだぞー」


「乳液……」


2段階だと!?女子って大変だな。


「あったあった」


石坂が手に取ったのは、白いシンプルなパッケージのものだった。青い文字で「化粧水」とプリントされている。隣には、同じメーカーの「乳液」が陳列されていた。こっちはピンク色のプリントだ。


「コースケ、これオススメね」


石坂は手に持っている化粧水を俺に見せつけてくる。


「いや、俺は別に……」


「男子だし、って思ってる?ちっちっちっ〜、できるオトコはそれくらいやってるんだなぁこれが」


まじかよ。モデルとかじゃなくて?


「お肌スベスベの方がぁ、好印象なんだよー?」


「……どんくらいすんだよ」


「お!お客さん、興味ありやすー?化粧水と乳液セットで1500円!!」


「高い!!」


「あぁ〜ん、でもでも、一回買えば結構長い間使えるよ!」


「むむむ」


俺には気になっていることがあった。朝、石坂に頬を触られたことを思い出したのだ。もしかしてあの時、「こいつ肌汚っ」って思われたのでは?自覚無いけど。もっといえば、毎日そう思われていた?明るく話しかけてくれていたが、内心不快な気分だったとか!?それは非常によくない。石坂に申し訳ない。


「しかしコースケにはこれをあげよう!!」


石坂は突然、財布から何か紙を取り出す。


「このドラッグストアの割引券100円分が3枚!300円も安くなるよ!!」


「まじ!?ってそれはさすがに悪いよ」


「いいよいいよ、これお母さんが定期的にくれるからさ」


お母さん。このドラッグストアを極めし者かよ。


「あ、でもやっぱり高いし強要はしないよ、勝手に盛り……」


「買うよ」


「え」


「買う」


「うぇーい!!さすがコースケ!じゃあこれはあげます!」


3枚割引券を受け取る。


「ありがとな」


「平気ー。あと5枚持ってるから」


「ガチ勢ッ!!」


薬局を出ると、西の空は眩しいオレンジ色に染まっていた。


「さ、帰ろうか」


「そうだな」


「コースケは何線?」


王浜の駅は大きい。電車が4本くらい通っている。


「俺はパープルラインだ」


「ホント!?私もパープルだよお!」


「まじかよ、どっち方面?」


「雛山ほうめーん」


「うん、俺もそっち」


「じゃあもう少し一緒だね!」


「おう」


今日はギリギリまで石坂と行動することになりそうだ。朝寝坊で話していない分にしては多すぎるくらいだ。


そういうわけで、俺らは同じ電車に乗った。車内は空いていたので、2人で並んで座ることができた。


「コースケ」


「ん?」


「デートだね」


「ぶっ!……なんだお前、からかってんのか」


「うっしっしっ、コースケ照れちゃってえ〜」


「ったく……」


考えないようにしてたのに、露骨にそんなこと言われたら、意識しちまうじゃあないか。


「コースケどこで降りるの?」


「平台。石坂は?」


「南沢田だから…私の方が先だね」


あと15分くらいで南沢田か。

その間石坂は化粧水レクチャーをしてくれた。

化粧水を塗ってから乳液を塗るとか。

お風呂上がりに塗るといいとか。

こりゃモテ男まっしぐらっすわ。……冗談だよ。


『次は、南沢田ー。南沢田ー。』


「明日からゴールデンウィークだね」


「ああ、そうだな」


「しばらく会えないねぇ」


「そりゃあな」


「私に会えなくて寂しーい?」


「はあ?別に寂しくないわ!」


「あっはは、だよねー!」


プシュウ。


『南沢田〜、南沢田〜』


「私はちょっと寂しいな」


「え?」


「じゃあね!」


石坂は、そそくさと降車して行ってしまった。


「……え?」

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[一言]  男は黙ってハトムギ化粧水とNIVEA!  言いたかっただけです許してください。  (肌ラボねえ……メモメモ)
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