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石坂凛はうるさかわいい  作者: 矢田悠進
2/5

もひとつオマケにありがとう

さて、今日もいつもと同じ朝が始まる。

ガラガラと教室の扉を開けると、やはりその先には石坂がいる。


「おはよう!けす、けすーこ、かおか、みか、けすーこかおみか……んー、難しかった!ししっ!」


「逆さからか……噛みまくってるじゃねえか」


照れ笑いしている石坂につっこみながら俺が座ろうとすると、


「あー待ってまだ座らないで!」


石坂にとめられた。


「え?なんで?」


「これ見て!」


石坂は自分の机の上に両手の人差し指を向けてツンツンと動かしている。


「何に見えるー?」


「何って……ペンが散らかってる。あ、違うか、文字だなこれ」


「そそそそそそ。ペンを並べて書いてある言葉はなんでしょーか!チッチッチッチッ……」


なんのタイマーだよ。制限時間も言われてないよ。楽しそうだからそのまま言ってればいいけどさ。


「GWだな」


「そう!GW!来週からゴールデンウィークだよー!」


「ああ、そっか」


俺は自分の椅子に腰をかける。あ、こうすると文字が読めない。石坂が座るなと言った理由が今わかった。


「んー?コースケはあんまり興味ないー?」


「え、なんで?興味ないなんて言ってないけど」


「うぃー、それはごめんだ。返事がそっけないと思ったからさ……私もまだまだだねえ」


「ああ……それは、なんか悪いな。もともとテンション低めなんだよ」


「なーに謝ってるの!落ち着きあって良いじゃない!コースケもうるさかったら私達公害になっちゃうよ、クラスの皆に訴えられちゃうよ」


うるさい自覚はあったのか。

しかし相変わらずプラス思考な奴だ。石坂を怒らせたり悲しませたりするものなんて存在するのかと思うほどだ。それとも、そういった負の感情を隠している……?


「コースケ〜」


いや、やめておこう。彼女の明るさは、何よりの長所であり簡単には真似できない尊いものだと思う。それを曲がったもののように見るのは、無礼というやつではないか。一瞬でもくだらないことを考えた自分が腹立たしい。


「コスケっ!」


「あ、なに?」


「一回無視したでしょ?無視ポイント1ね」


「う、ごめん。けど無視ポイントってなんだよ」


「この静かな教室でたった1人しゃべり続けるこのリンちゃんを無視できたことをたたえるポイントなんだゾ」


「なんだその話し方……」


あ。よく見るとほんの少し眉間にしわがよっている。


「もしかして…怒った?」


「……ううん」


「ほんと?」


「えへへ、大丈夫だよ」


「いや笑い方もなんか違うし、無理してね?」


「……」


「無視したこと怒ってんだろ?本当にごめんな、ちょっと考え事しててさ」


「……怒ってないよ」


「だから……」


「ホントに怒ってないの!……ちょっと怖かっただけ」


「?」


「さすがにうざかったかなって……」


「……好きな友達ランキングー」


「へ?」


「俺の好きな友達ランキングを発表しまーす、3位・勉強できる奴。テスト前に力になってくれるからな」


「コースケ、変だよ?」


「2位・くだらねー話聞いてくれる奴。なに話してもいいって思える奴はリラックスできますねー」


「なんか……キャラじゃないこと言ってるよ?」


「そして1位。いっぱい話しかけてくれる奴」


「……!」


「俺は無口な方だからな。相手が喋ってるのを聞くのが好きだ。なんならそっちが無限に喋ってろとさえ思う。そういうわけだから石坂。うざいなんてことはない。好きなことを好きなだけ話してくれ。あー、あとは……」


「なに?」


「うざいって単語、似合わないなお前。寒気がした」


「……ぷっ、寒気って、え、なにそれなにそれ最後に酷くなーい?もー、笑っちゃったじゃん!」


「へっ」


「なんじゃその笑い方は!」


俺たちの笑い声が教室に響いている。


・・・


恥ずかしいっ!なんだよこれ恥ずかしいよ!俺恥ずかしい!おいおいおい顔あっつー!頬あっつー!なに?え、なんなの友達ランキングって?もちろん嘘はいってないけどな?気持ち悪かったよなあれは……珍しく石坂のテンションが下がってたから元気づけようとしたんだが、下手くそかよ!石坂みたいにぽんぽん前向きな言葉が出てくるなら話は早いけどさあ!無理じゃん!小テストで何点とっても喜べるポジティブお化けと同じことはできないよお!笑ってるから結果オーライかもしれないけど。「へっ」とか言って笑っちゃったし。照れてしまったじゃあないか!!はぁ……。


「ねえコースケ」


「どうした!?」


机に肘が当たって、ガタッと音が出る。


「ちょっ、過剰に反応しすぎ。もしかしてこれ以上無視ポイントためないようにしてるのかな?私は嬉しいぞー。うぇーい!」


「うっせ。で、今度はなに?」


「うーん、さっきから言おうとしてたんだけどね、連絡先交換しようよ?」


スマホを片手に、石坂はそう言う。


「ああ、良いよ」


そういえばまだだったな。俺もズボンの左ポケットからスマホをとりだして、メッセージアプリを開く。

QRコードですぐにお互いが登録できるなんて、お手軽な時代だよな。


「うししっ、ありがとっ!」


「おう、こちらこそ」


ピロン。俺のスマホから通知音が鳴る。

早速石坂からだ。隣にいるのにわざわざなんだろう。


『ありがとっ!』


「二重で言わんでいいっ!」


「テヘペロ?」


まったく、しょうもない奴だ。


ーーーーー


(そりゃ、ひとつ目は連絡先くれてありがとうだけど、2つ目は別のだよ。でもさ……本当は弱い私を、励ましてくれてありがとう、なんて恥ずかしくて面と向かって言えないよ。)

高鳴る鼓動を感じながら、石坂凛は呟いた。

「鈍いよコースケ……」



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