第一章 少女回想
ソラは不思議な少年に出会った。
初めて見たその顔は見たこともないような絶望の色をしていた。彼の目線には息も絶え絶えになっている自分と同じ孤児の男の子がいた。彼の絶望はいったい何なのだろうかとその時疑問に思った。
もしかしたら親族だったのだろうか?
違う。そんな感じじゃない。
それじゃあ優しい人?
違う。彼は自分が持っているご飯を分け与えようとはしなかった。
では悪い人?
……違う。死んだあの子を抱きかかえるあの人の表情が悪人の顔なら、この世は余程悪意に満ちていることになってしまう。それにあの表情はどこか、昔お母さんがしていたような記憶があった。病気の自分を見て悲しむ表情。あの人はきっと憐れんでいるのだ。誰にも見られることもなく消えていく命を。
程なくしてあの少年はソラの下に現れた。そしてさらに突拍子もないことを言い始めたのだ。見ず知らずのソラに、ご飯を食べさせてやると言ったのだ。
——ソラが鬼の子と知っても、その態度が変わることはなかった。
だから不思議な少年だと彼女は思った。しかも結局彼は何一つ手に入れることなく、ソラが物乞いして得た糧を泣きながら食べていた。
その姿はなんというか、情けなくて、バカバカしくて、でもなんだか愛おしい。この世にはこんなバカな人がいるのだと驚く。そしてこのバカな人が現れ、その人の世話をするだけでソラは今日感じた苦しさを忘れていた。
しかもそのバカな人はソラのような汚らしい子供を同志と誤魔化しながら呼び、まるで友達のように話しかけてくるのだ。素直に友達になりたいと言えばいいのに、恥ずかしくなったからこんな変な言い回しになったのだろうとソラはクスリと笑う。
その日の夕飯は土で汚れた握り飯だった。
——その味は彼女にとって生涯『喜びと愛情の味』になった瞬間だった。