第一章 この故に我々は戦う④
久しぶりの投稿過ぎてなろうの環境変わり過ぎてて少し驚きました。
町に戻ったレンは再び先ほどの場所に戻っていた。レンは少し戸惑った後、路地の奥へと進んでいった。ここに戻ってきた理由は単純。まだレンはここに引かれていた。髪がざわついているのだ。この謎の感覚の正体は分からないが、放っておけるとは思っていなかった。もしかしたらこの奥に、先ほどのような光景が広がっているかもしれないと思ったのだ。
そしてレンは犬の鳴き声を聞きつけると同時に走り出した。そして路地の奥にたどり着いたレンは小さい子供がうずくまりながら唸り声をあげる野良犬に襲われている光景を目にした。
カッと血が上り、俺は全力で走った。体の中で何かが燃え上がるような感覚を覚えると共に、急に走るレンの足が膨れ上がったような気がした。
気が付けばレンは野良犬を蹴り飛ばして壁に叩き付けていた。今までに体験したこともないような力で犬を蹴り飛ばしたものだからレン自身も体を制御できずに壁に背中を打ち付けていた。
「ぐぅっ!?」
レンは背中の痛みを感じながら野良犬の方に目を向けた。犬はよろよろと立ち上がりながらレンから逃げる様に路地の出口に向かって行った。
「……ッ! 大丈夫か!?」
「うぅ……」
子供はうめき声を上げながら顔を上げ、そしてレンの赤い瞳を見つめた。
——その瞬間、レンは心臓を掴まれたかのように硬直してしまった。
その子の瞳は青。レンとは対照的な空の色だった。少女は薄汚れてやせ細り、頬や目は醜く赤く腫れている。しかしその瞳から望むその瞳には先ほどの子供のような淀みがなかった。まるで、本当の青空のように、自由が光っていた。
レンはたじろいだ。小さなこの子供が秘めた内なる輝きに気圧されたのだ。
レンはあの程度の不幸で死んだ魚のように目になり、世界を呪っていたというのに、この子の瞳はまるでそんな呪いとは無縁であるかのように鮮やかな青色だった。
レンは理解出来ないものを見たかのように混乱した。
この世は理不尽で、ホヅキみたいな何でも持っているような奴がいる一方でレンの様に何も持っていない奴もいるものだ。だからこそあの子供もレンもこの世を呪いながら生きていた。それが普通だと思っていた。
——レンはさらに気が付いた。
「……ッ!? お前、『鬼の子』なのか!?」
青い瞳の子供が顔を上げた時、かぶっていた布が頭からずり落ちた。そして露になったのは右の頭に生えた小さい一本の角だった。そしてよく見てみれば犬歯が異常に発達している。あれは牙だ。
聞いたことがある。妖怪と人間のハーフとして生まれた子供の中には、時々牙と角を持つ異形の子供が生まれることがあるという。明確に種族があるわけではないが人々はその異形の子を総称して『鬼の子』と呼んでいるらしい。
「——ごめんなさい。嫌なものを見せてしまいました」
その子供、少女と思われるその子は布を深くかぶり直すとレンに一言謝った。その意味を理解できず、レンは息を詰まらせた。なぜ、謝ったのか?
「——人間様のお目汚しをしたことをお許しください。お手を煩わせてしまったことをお許しください。だから、だからこの化け物に痛いことしないでください」
少女はそう告げる。曇りなき眼で。
「俺は、俺は……、そんなことはしない」
「ごめんなさい。触れるのも嫌なら、今すぐ消えますから」
そういいつつ彼女はふらふらと立ち上がった。しかしすぐに足をもつれさせて地面に転がった。俺は慌てて少女を抱き上げた。
「お前大丈夫か!? さっきのガキみたいに、しばらく何も食ってないんだろ!?」
「大丈夫です。大丈夫ですから」
「待ってろ、食い物、探してくるから!」
レンはそういって立ち上がると自分の頬をぶん殴った。訓練所で負った傷が痛んだが、それよりも自分の先ほどの行動に対する後悔のほうが強かった。どうして俺はあの時食べ物を食べてしまったのか、と。
一文無しになったレンは路地を飛び出した。また、誰かが目の前で死ぬのを看取るのは御免だと心に言い聞かせて。
作品自体はキリのいい二章まで出来ているのでそこまで投稿しようと思います。それ以降は私のやる気次第で作るかどうかを決めたいと思います。