こぼれ話 That Night
真夜中、イクスとシールの会話。時間軸は第五話と第六話の間です。
※
「ねえ~」
「…………」
「イクス~」
「…………」
「ねえ~」
「……なんだよ」
「何か話そうよ~。眠くなっちゃうよ~」
「だからこうしてお前の頭を掴んでるんだろうが。足りないならもっと強くしてやろうか?」
「痛いのはすぐ慣れちゃうよ~。あたしだって話してたら寝ないからさ~」
「……わかった。ただし手は離さないぞ。刺激は多い方がいいからな」
「え~……。まあ、いいけど~」
「で、何を話すんだ」
「そこは任せる~」
「お前……。まあ、いい。なら『招集』についてだ」
「もっと楽しい話がいい~」
「もっと強く握った方がいいみたいだな」
「なんでも聞いて~」
「……ったく。チェインから聞いたが、精霊は三体まで実体化できるそうだな」
「そうだよ~」
「今はお前とチェインの二体だ。もしラッグがもう一体『招集』すれば、もう精霊を呼べなくなるのか?」
「新しく呼ぶのは無理だね~。でも誰かの実体化を解除すれば呼べるよ~」
「仮にお前の実体化を解除したら、また後でお前を呼べるのか?」
「呼べるよ~」
「……実体化を解除すれば、精霊は狭間とやらに戻るんだよな」
「そうそう~」
「じゃあ、精霊は死んだらどうなるんだ」
「狭間に帰るよ~」
「そうなったら『招集』できるのか?」
「できるよ~」
「なっ……。つまり、精霊は不死身ってことか?」
「旗手が生きてればね~。でも時間はかかるよ~。この体──『実体』は現世で生きるための器で、壊れたら直さないとだから~」
「……悪魔は」
「ん~?」
「悪魔はどうなるんだ」
「悪魔が死んだら~? 狭間に帰るよ~。でも実体は直らないね~」
「理由は?」
「悪魔は勝手に現世に来てて、それは悪いことだからね~。もう一回現世に来れるようにはならないよ~。旗手に呼ばれて来る精霊とは違うんだ~」
「なるほどな」
「ふわあ~。他に聞きたいことないの~? ないと寝ちゃうよ~」
「……これでも、かなり力を入れてるつもりなんだけどな。お前は平気なのか」
「平気じゃないよ~。痛いよ~。でも、精霊は人間に比べれば強いからね~。悪魔もそう~。だからあたし結構驚いてるの~。イクスって力強いね~」
「痛がってるようには聞こえないな。……もう頭を掴まれるのには慣れたのか。なら──」
「ぎゃあ~! ほっぺたつねらないで~」
(……本当に効いてるのか?)
これにて毎日更新は終了です。第二章はしばらくお待ちください。
(追記)物語の途中ですが、第二章更新の目途が立たないため完結済み設定にさせていただきます。




