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第5話 ダンジョンの変化

 探索2日目。


 昨日と同じように早朝から潜ったものの、1層、2層、どちらもまだ魔物が再出現していなかった。


 講習では再出現は概ね24時間前後という話だったけど、このダンジョンは少し遅いのかもしれない。


 帰りに再出現してることもあるかもしれないから、気構えだけはしとかないと。


 そんなことを考えながら、3層へ続く坂道を降りる。


 次の階層に出るのは犬型の魔物。


 そう、犬だ。


 うちのダンジョンには犬しか出ないのだ。


 階層が深くなるごとに大型化して、4層だと大型犬くらいのサイズになるらしい。


 なんて危険度の高いダンジョンなんだろう。俺じゃなければ死んでるに違いない。


 坂道が終わり視界が開ける。


 今までと代わり映えのない景色。


 こちらへ向かってくる足音も変わらない。


 んん? いや、変わってる! なんかでかいぞ!


 慌てて背中に固定していた鉄板を引き抜く。


 数は4体。


 もう15mほどの距離まで迫っている。


 動揺を抑え、先頭の1体に意識を集中。


 脳が茹で上がった1体が地面を転がるが、それをものともせず3体が飛び掛ってくる。


 うわっ、やっぱり大型犬よりでかい!


 少し大きめに左へ動き、バッティングのように2体目の頭を振り抜く。


 重い!


 そのまま振り向いて3体目の脳を加熱。


 4体目が着地と同時に跳ね返るようにこちらへ飛び…。


 地面に突き立てて固定した鉄板に激突した。


 よし、やっぱり足を狙ってきた。


 鼻を潰して転げ回る4体目の頭を踏み割る。


 まだまだ余裕!


 階層の奥へ全力で走る。


 残りは、あと6体。


 走ってくる俺に慌てたのか1匹だけが飛び出してくる。


 肩口あたりを狙ってきたそれを、左上から斜めに右腕の力だけで斬りつけて走り抜ける。


 たぶん死んでないけど後回し。


 5匹の真ん中を走り抜けて、しゃがみこむように止まりつつ振り返る。


 頭上から2匹。


 右へかわし、着地を狙って上から体重を乗せて殴りつける。


 さらに飛びついてきた3匹。


 高く飛んだ奴の下を潜り、後足をつかんで振り回す。


 そのまま足元を狙った1匹に叩きつけ、当たらなかったが怯んだ1匹の頭を鉄板で下から掬い上げる。


 振り回されて後ろ足が折れたらしい1匹に止めをさして、あと2匹。


 距離をとって唸ってるけど、もう十分かな。だいたいわかった。


 2匹同時に脳を加熱。


 うっぐ、同時発動はきついな。動悸が起こった。


 でもこれで終了…じゃないな、あと1匹残ってた。


 走りながら斬りつけた1匹は後足が動かないのか前足だけで必死に逃げようとしていた。


 哀れではあるんだけど、ごめんな。


 頭を潰す。


 ちょっと今のは、なんかこう、心にくる。


 まあ、こういう道を選んだわけだから考えても仕方ないんだけど。


 はぁ、気を取り直して魔石を回収しよう。


 ナイフを抜いて、頭を潰した犬の胸を裂いていく。


「ん?」


 思わず声が出た。これってもしかして。


「おおおおお!」


 すごい!


 魔石が大きい!


 さっきまでの憂鬱な気分は簡単に吹き飛んでしまった。


 上の階層の魔石より一回り?二回り?直径が1.5倍くらい大きい。色も黒というよりは茶色寄り。


 魔物らしく魔力を蓄積してたらしい。


 低位回復薬が1本ドロップしたから魔石9個に回復薬1本。


 いくらになるんだろう。洗濯機買いにいかないと。


 と、一通りはしゃいでいると、いつの間にか回りから魔物の死体が消えていた。


 ちょっと早すぎる。


 ダンジョンの中では魔魔物の死体も人間の死体も、ほっておけばダンジョンへ取り込まれる。


 だけど、こんなものの数分で取り込まれるほどは早くないはず。講習で聞いた知識だけど。


 うーん。


 低階層のリポップがなくなる。


 前の階層より格段に強くなった魔物。


 すぐにダンジョンに取り込まれる死体。


 嫌な予感がするなあ。ひとつ心当たりがある。


 まあ、考えても仕方ないしとりあえず進もう。


 次の階層に行けば、予想が当たってるかはっきりするしな。




 そうしてやってきた4層。


 予想は当たっていた。


 が、予想よりもだいぶ悪かった。


 もうこれ犬じゃないよな。大型の肉食獣?


 世界最大の犬種がこのくらいのサイズだっけ。実際に見たことないからわからないけど。


 完全に臨戦態勢だ。


 数は…数えさせてくれないか!


 3匹がほぼ助走なしで飛び込んでくる。


 大きさからは想像できないくらいに速い。


 俺の頭よりも高く飛び――


 そのまま3匹が空中で激突した。


 えー。


 あっけにとられつつも、冷静に2体の頭を叩き割り、1匹の脳を煮沸する。


 こいつらあれだ。たぶん身体の成長を認識できてないんだ。


 サイズは大きくなったのに、頭の中は小さい時のまま。


 その状態で野犬や狼の連携をとれば、最悪こうなるよなぁ。


 あと4体か。


 今の追突事故があったせいか、動くに動けないようだ。


 けっこう頭いいな。


 仕方ないのでこちらから近づく。


 1匹飛び出してくる。


 頭を叩き割る。


 さらに近づく。


 3匹が後ずさる。


 1匹を煮沸。


 2匹が飛びだす。


 飛び掛るほうをかわし、走りよるほうの頭を叩き割る。


 その勢いを殺さずに、着地する背中に全力でたたきつけた。


 背骨と肋骨が砕け、見事に身体にめり込む。


 うん、まだまだいける。


 これなら虎やライオンでも勝てそう。ヒグマだとどうかな。勝てるかな。ちょっと想像ができない。


 でもまあ、これで確定かな。


 間違いなくダンジョンコアが防衛状態に入ってる。


 通常、ダンジョンコアは貯めた魔力をダンジョンの拡張に使う。そうして少しずつダンジョンは複雑に深くなっていく。


 けど、自分が破壊されるのではという脅威を感じた場合は話しは別だ。


 自分を守るため拡張にまわす魔力を全て既存の魔物の強化や強力な魔物の生成につかう、らしい。


 しかも、効率よく魔力を集めるためにダンジョンの周囲の環境まで変化させながら。


 3ヶ月前の調査記録に比べれば格段の強化だったけど、まだ魔力は残ってるんだろうか。


 残っているとすれば、5層にはボスが出現するはずだ。


 ボスか。どんなのだろう。でっかい狼とか。黙れ小僧! とか言うだろうか。


 このまま見に行きたい気もするけど、流石に少し疲れた。


 初日みたいな無茶はしてないけど、けっこう魔法も使ったからな。


 今日はここまでにしとこう。


 一応、なにかあったときのために協会にも報告しておいたほうがいいかもしれない。


 とりあえず、魔石を回収して協会に行ってみよう。


 ふふふ、いくらになるかなあ。




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