柘榴。
「終〜、早く戻っといで〜」
時間は朝の7時を過ぎてた。
その月のナンバー入りを競い合うホストにとって、月末は営業時間が自然と延びるのはザラやった。
マミに呼ばれ、散々吐いた直後トイレで顔を洗いまたピンドンの待つ席につく。
マナト「終くん、何者?どっかでホストやってたの?」
マナトは初めてヘルプについてくれた、ホスト歴6ヶ月くらいの所謂売れないホスト。しゃくれた顎に長い金髪、決め台詞は「今のは顎が勝手に喋ったんです」、黒い肌と顎が印象的やった。
ちなみに少しだけついた部長や唯は、挨拶みたいなもので実質ヘルプではない。
肩書きが上にいけばいくほど、自由に行動できる。
『やってないっすよ!マミに連れてきてもらったらこんなんなってん。』
マナト「いやぁだってさ、このままいくとナンバー入り確実だよ?」
と言いながらドンペリをグラスに注ぐ。
更にネクターピーチを注ぎ、マドラーで混ぜる。
マナト「僕もいただいてよろしいですか?」
マミ、俺『どーぞー』
『え?ナンバーワン以外になんかあるの?どういう仕組みなん?』
マミ「んと、今歌舞伎って200軒以上ホスクラあるのね」
マミとマナトの説明によると、ホストで1番偉いのは例外なくナンバーワン。
もちろん、オーナー、社長、部長、と肩書きがある者は立場は上だが現役という訳でもない事も多い。
この店では部長のみ現役で、ナンバー2。
ナンバーは10位からカウントされており、数字が若くなるに連れて売上、給料ともに高くなる。
この店のナンバー10、つまり40人以上がしのぎを削る中、実力、運、センス、全てにおいて長けている選ばれし10人、という訳。
その中でもトップ3は毎月大激戦。
文字通り、札束が乱れ飛ぶ。
唯は、この店の前は系列店で10ヶ月連続してナンバーワン。
9月の誕生日、バースデーイベントでは、
一晩で1000万を売り上げた天才。
俺が感じたあのビリビリはオーラってやつ。
現社長が独立するという話を受け、喜一部長が唯をひっぱって来たらしい。
…どーりで。
マナトが、唯が載った雑誌をたくさん見せてくれた。
『表紙も飾ってる、エグ…』
マミ「エグいよな、ほんますごい人やと思うわ。名前は知ってたけど。」
『マミはなんでそんなホスト詳しいの?好きなん?ホスト』
マミ「んー、万が一やで、騙されても笑えるやん?どうせ騙されるなら華やかなんが良いねん私。」
んー、わからん。
今だにそうやけど、女心はわからん。
お金大丈夫?
これ何回も聞こうとしたけどやめといた。
なんとなく。
野暮やな、と。
『俺今何位なん?』
マナト「それは受付に聞いて、ここじゃダメなんだよ、爆弾※」
※爆弾とは…簡単に言うと、言ってはいけない事、やってはいけない事。例えば女性客に年齢や職種を聞く、指名ホストが離席している時にヘルプがお客様に電話番号やメールを聞く、悪口を言う等。
『へー、ちょい行ってくるわー』
逆さにしたコースターをグラスの上に置き、受付へ。
『渡辺さん、俺って今何位っすか?』
ナベ「ナベでいいよ、今ね終くん10位、金子が11位で6万差、このままいけば初日でナンバー入りだね。」
うわー、何?
どんだけ頼んどんねん。
ピンドン3本よな?
36万+12万ちょい。
『だいたいいくらくらいすか?』
ナベ「今総売上で98万、金子が92くらい。」
『なんで?』(真顔)
ナベ「指名料でしょ、延長、ヘル指、ピンク3の、鏡月追加で1、ビール6、オレンジ4…」
おいおいおいおい…
どんだけ頼んどんねん!!(2回目)
ナベ「で、またピンク入ってるから…好きだねマミちゃん、ピンク。」
どんだけ頼んどんねん!!(3回目)
『マジっすか』
こん時、初日のくせに。
俺はもう染まってた。
てか、狂ってた、全部。
ナベ「マジだよ」
さっきからずーっと俺を睨んでるあの席…
確実に金子だ。金子とかいうやつの席だ。
なんやねん、金子ってなんやねん。
名前どうなっとんねん。カネコて。
とりあえず席に戻る。
『今10位やって、もう良いよ頼まんで』
マミ「遊ぶ時は遊ぶ、私は順番関係ないからな〜」
『あぁそう』
マミ「なんやねんその返し!あははっ!」
ドスッ
膝を殴られた、ちょい痛い。
『あたっ』
マミ「うそやん!あはははっ」
数分後、マミの頼んだピンドン。
従業員一同「マミちゃん!マミちゃん!ひと言!ひと言!3.2.1.キュ!」
マミ「初日ナンバー入りもらったぁ〜!」
従業員一同「よっしゃぁーーー!!」
お前、順位関係ないんとちゃうんか…
ノリノリやないかーい!!
更に数分後。
あの卓。
絶対そうだ。
あの女の子、金子に耳打ちしてた。
喜一「なぁんとなんとー!!ラストオーダー直前!!最後の最後!金子くんのテーブルより…」
喜一「ピンドン1発!!いただきましたー!!従業員、しゅーごーう!!」
ダンダンダンダン♩
喜一「それでは!それでは!最後に!最後に!金子の!金子の!ひと言!ひと言!3.2.1.キュ!」
「負けられません、ナンバーの座は死守します」
マミ「真面目かっ!!」
ドクン、ドクン、ドクン…
心臓が脈を、激しく刻み始めた。
なんやろ、なんて言うんかな。
わからんけど、何かが俺の中で生まれた。新しく、でも確実に。
…
『マミさぁ…』
街は今日も輝いている。




