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ロスト  作者: 輪廻 終
5/14

柘榴。

「終〜、早く戻っといで〜」


時間は朝の7時を過ぎてた。

その月のナンバー入りを競い合うホストにとって、月末は営業時間が自然と延びるのはザラやった。


マミに呼ばれ、散々吐いた直後トイレで顔を洗いまたピンドンの待つ席につく。


マナト「終くん、何者?どっかでホストやってたの?」


マナトは初めてヘルプについてくれた、ホスト歴6ヶ月くらいの所謂売れないホスト。しゃくれた顎に長い金髪、決め台詞は「今のは顎が勝手に喋ったんです」、黒い肌と顎が印象的やった。

ちなみに少しだけついた部長や唯は、挨拶みたいなもので実質ヘルプではない。

肩書きが上にいけばいくほど、自由に行動できる。


『やってないっすよ!マミに連れてきてもらったらこんなんなってん。』


マナト「いやぁだってさ、このままいくとナンバー入り確実だよ?」


と言いながらドンペリをグラスに注ぐ。

更にネクターピーチを注ぎ、マドラーで混ぜる。


マナト「僕もいただいてよろしいですか?」


マミ、俺『どーぞー』


『え?ナンバーワン以外になんかあるの?どういう仕組みなん?』


マミ「んと、今歌舞伎って200軒以上ホスクラあるのね」


マミとマナトの説明によると、ホストで1番偉いのは例外なくナンバーワン。

もちろん、オーナー、社長、部長、と肩書きがある者は立場は上だが現役という訳でもない事も多い。

この店では部長のみ現役で、ナンバー2。

ナンバーは10位からカウントされており、数字が若くなるに連れて売上、給料ともに高くなる。


この店のナンバー10、つまり40人以上がしのぎを削る中、実力、運、センス、全てにおいて長けている選ばれし10人、という訳。


その中でもトップ3は毎月大激戦。

文字通り、札束が乱れ飛ぶ。


唯は、この店の前は系列店で10ヶ月連続してナンバーワン。

9月の誕生日、バースデーイベントでは、

一晩で1000万を売り上げた天才。

俺が感じたあのビリビリはオーラってやつ。

現社長が独立するという話を受け、喜一部長が唯をひっぱって来たらしい。



…どーりで。

マナトが、唯が載った雑誌をたくさん見せてくれた。


『表紙も飾ってる、エグ…』


マミ「エグいよな、ほんますごい人やと思うわ。名前は知ってたけど。」


『マミはなんでそんなホスト詳しいの?好きなん?ホスト』


マミ「んー、万が一やで、騙されても笑えるやん?どうせ騙されるなら華やかなんが良いねん私。」


んー、わからん。

今だにそうやけど、女心はわからん。


お金大丈夫?

これ何回も聞こうとしたけどやめといた。

なんとなく。

野暮やな、と。


『俺今何位なん?』


マナト「それは受付に聞いて、ここじゃダメなんだよ、爆弾※」

※爆弾とは…簡単に言うと、言ってはいけない事、やってはいけない事。例えば女性客に年齢や職種を聞く、指名ホストが離席している時にヘルプがお客様に電話番号やメールを聞く、悪口を言う等。


『へー、ちょい行ってくるわー』


逆さにしたコースターをグラスの上に置き、受付へ。


『渡辺さん、俺って今何位っすか?』


ナベ「ナベでいいよ、今ね終くん10位、金子が11位で6万差、このままいけば初日でナンバー入りだね。」


うわー、何?

どんだけ頼んどんねん。

ピンドン3本よな?

36万+12万ちょい。


『だいたいいくらくらいすか?』


ナベ「今総売上で98万、金子が92くらい。」


『なんで?』(真顔)


ナベ「指名料でしょ、延長、ヘル指、ピンク3の、鏡月追加で1、ビール6、オレンジ4…」


おいおいおいおい…

どんだけ頼んどんねん!!(2回目)


ナベ「で、またピンク入ってるから…好きだねマミちゃん、ピンク。」


どんだけ頼んどんねん!!(3回目)


『マジっすか』


こん時、初日のくせに。

俺はもう染まってた。

てか、狂ってた、全部。


ナベ「マジだよ」


さっきからずーっと俺を睨んでるあの席…

確実に金子だ。金子とかいうやつの席だ。

なんやねん、金子ってなんやねん。

名前どうなっとんねん。カネコて。


とりあえず席に戻る。


『今10位やって、もう良いよ頼まんで』


マミ「遊ぶ時は遊ぶ、私は順番関係ないからな〜」


『あぁそう』


マミ「なんやねんその返し!あははっ!」


ドスッ


膝を殴られた、ちょい痛い。


『あたっ』


マミ「うそやん!あはははっ」


数分後、マミの頼んだピンドン。


従業員一同「マミちゃん!マミちゃん!ひと言!ひと言!3.2.1.キュ!」


マミ「初日ナンバー入りもらったぁ〜!」


従業員一同「よっしゃぁーーー!!」


お前、順位関係ないんとちゃうんか…

ノリノリやないかーい!!


更に数分後。


あの卓。

絶対そうだ。

あの女の子、金子に耳打ちしてた。


喜一「なぁんとなんとー!!ラストオーダー直前!!最後の最後!金子くんのテーブルより…」


喜一「ピンドン1発!!いただきましたー!!従業員、しゅーごーう!!」


ダンダンダンダン♩


喜一「それでは!それでは!最後に!最後に!金子の!金子の!ひと言!ひと言!3.2.1.キュ!」


「負けられません、ナンバーの座は死守します」


マミ「真面目かっ!!」


ドクン、ドクン、ドクン…

心臓が脈を、激しく刻み始めた。

なんやろ、なんて言うんかな。

わからんけど、何かが俺の中で生まれた。新しく、でも確実に。



『マミさぁ…』


街は今日も輝いている。

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