確率変動。
八王子から電車に揺られ30分。
やっぱ特急乗ると早いな〜。
京王線バンザーイ!バンザ…
「ついたで?」
『うん』
久々やなー。
あれから1回も来てなかったなー。
「場所わかるん?」
『んー。』
コマ劇前でキョロキョロ。
明らかに不審者。
マミおらんかったら捕まってるな。
「あれ、終じゃん?」
ん?
なんや。
唯やないかーい!!
まだスカウトしてたんかーい!!
『うっす、久々。またスカウトしてるの?』
唯「もうオープンしたよ、今日月末じゃん?これからお客様のお迎え。ねえねえ、隣のお姉さん何?さらってきたの?人身売買?逆に終が売られるの?値がつかないか終じゃ!あはは」
マミ「藤咲唯…」
『ん?』
マミ「ん?なんもない」
『なぁ、唯さぁ、お店行きたいねんけどダメ?』
「お前、すげぇな。普通それ言う?すげぇよ、あはは。部長と社長に話通してやるよ、今度はどっか行っちゃダメよ」
『おー、良いヤツやな!ありがとう』
-グレート、入店-
ギィィィイイィィ
『うわ』
深夜0時半、店内はほぼ満席。
座れずに、立ってる従業員の姿も。
順番に黒服からの指示でお客様の席にヘルプ※として座る。
※指名されているわけではなく、席を盛り上げるために座る。飲む量も基本的に増える。指名されたホストの分も飲むため。指名ホストの負担を減らし、助ける、の意味のヘルプ。
『すげェェェェエエ!!』
唯「いらっしゃいませ、こちらへどうぞ」
唯「お客様2名様ご来店でーす!!」
従業員「いらっしゃいませー!!!」
40人くらいの大合唱!
何この活気!のまれそうやわ!!
スター状態なのに!やば。
通称、A卓と呼ばれる主に男性+女性客用に使われる席に座る。
立っているヘルプの1人がサッとおしぼりを開いて「いらっしゃいませ、どうぞ」
唯「じゃあお迎え行かなきゃカンカンプンプンだから行くね、ごゆっくり」
『ありがとうなー』
マミ「オープンして初月末やからすごいな〜人が」
『月末ってなんかあん…
「申し訳ございません、お客様!恋愛中でしたか?ホットココア、要ります?」
?
意味わからんなんや?
マミ「あはは、いらんから」
!?
「失礼します!部長の喜一と申します、ご一緒させていただいてよろしいでしょうか?」
マミ「どーぞ、マミです、よろしくね」
…
クッソイケメンきた!!
クッッッソイケメンやん!!
なんやこいつ。
喜一「よろしくお願いします。お見合いかよ!で、終くん、ですね。よろしくお願いします!』
『うっす』(bass)
喜一「終くん、今日からって聞いたけど、景気づけに1杯いっとく?」
カァーーー!!イケメン!!
飲むわ、今日は飲む!!
ん?
今日から?
景気づけ?
従業員「フィーバー!終〜!イケイケ終〜!」
うるさっ!!
なんだ?なんで、拍手してる?
喜一「はい、飲んだ飲んだ!!」
?
ゴクゴクゴクゴク…
『お酒濃い!オレンジジュースめっちゃ少ない!』
クラクラ…
喜一「マミさんもいっときます?終くんの入店祝い!」
マミ「気が早いな!あはは、飲むよー」
従業員「ライッ!ラララライッ!!」
マミ「ホスト久々〜、ここって唯くんいるんでしょ?」
喜一「うん、唯いますよ〜後でつけるね」
マミ「おっけー、終、今日から働くんでしょ?あはは!着替えておいでよ」
喜一「裏からサイズ合うの着ていいからね!タイムカードは作ってあるから渡辺ってのに聞いてね」
『うっす』
スーツスーツ…
あった!!
サイズは…やっぱブカブカやわ。
まぁええわ、下もTシャツやけど良いか。
バァーーーン!!
新しい俺を見よ!!
お酒作りとライターは任せろ!
今日は気分が良い(酒)
トイレ掃除だってやるぜー!!
喜一、マミ「おかえり〜」
おーうふ、喜一部長、マミの隣に座ってるやん。
『オレ、ドコ』
(俺はどこに座ればいいの?)
あまりの動揺で、頭がいかれちまったどっかの部族みたいな話し方になる。
マミ「終はヘルプで修行!安心したまえ、喜一くんは場内やから」
何語を喋っとんねん!?
みんな場内におるやないかい!!
喜一がなんで隣で俺が前やねん!
まぁ良いわ。
喜一がたばこを取り出す。
マミ「はい終、火!火〜!あはは」
『あ、あぁうぅ』
シュボッ
完全に部族。
初めて火をおこす時の部族。
マミ「あはは、出来たやんすごいやん!」
ギィィィイイィィ
「お客様1名様ご来店でーす!!」
唯の声や。
従業員「いらっしゃいませー!!」
うわ、めっちゃ綺麗な人やな〜
モデルさんやん、絶対そうや。
唯、ずる。ずるい!
マミ「見過ぎやろ、私が背あったら負けへんで」
『いや、比べるもんちゃうやろ、みんな魅力あるわけやし』
喜一「ホストかよ!」
俺、マミ『ホストだよ!』
で、楽しい時間はあっという間に過ぎていき、5時だってさもう!
早過ぎやろ、今日初めて時計見たわ!!
従業員1「C卓C卓〜!!唯くんテーブルの琴さんより〜!!ドンペリブラックいただきました〜!!集合!」
従業員一同「ありがとうございまーす!!」ゾロゾロゾロゾロ…
なになになになに?
もう唯も琴さん?も見えへん!
従業員の人波で見えへんやん!!
従業員一同「今夜は!今夜は!可愛い!可愛い!姫より!姫より!ドンペリブラック、い、た、だ、き、ま、し、た〜!!」
鳴り響くユーロビート!!
息のあったドンペリのコール!!
『やば、なに?高いの?お祭?』
マミ「ブラックは60万」
『でぇぇぇいあっ!!』
変な声を出しながら後頭部を壁に強打する。
そんでもって、それを皮切りに、他のテーブルでもガンガン入る。
マミ「唯はルイ、リシャール、ブック全色」
マミお前、なんでそんなに詳しいの?
マミお前、麻雀みたいな言い方やで?
マミ「全部で200こえてるね〜エグっ」
『でぇぇぇいあ!!まじ?」
「お待たせ、ご一緒、よろし?」
唯!!
全部で200超えてる唯やないか!!
俺はオレンジジュース割の鏡月や!!
部長「唯嫌いだから移動〜ははは」
唯「出た、部長の作戦出た!」
マミ「どーぞー」
唯「終、スーツいいじゃん、売れっ子みたい、あ。人身売買の方ね」
『まだ引きずってたんかい!』
こいつ、やべえわ。かっこいい。
なんか知らないけど、馴れ馴れしいし顔も普通だよな、ヤバいかっけぇ。
マミ「こんなとこいないでかぶりの席行きなよ〜あははは」
唯「いいのいいの、ワインも寝かせたほうが美味しいんですよ、姫♩」
マミ「ウザ!あはは!」
姫って言うた!!
姫って言われてキモくない感じ!!
なんやねん、こいつ。
『アハァ』
完全沈黙。
だが食らいつく。
ザワザワザワザワ…
『ねえ唯さぁ、俺も他のヘルプ行かせてよ』
唯「まじ?月末のヘルプとかしぬよ?あはは」
『しぬの?』
唯「わっかんないけど。あははは」
ザワザワザワザワ…
マミ「1回ならしんでも良いんちゃう?」
『いや1回死んだら終わりやろ』
ザワザワザワザワ…
ヘルプ「失礼しまーす、マナトでーす、ご一緒よろしいでしょうか?」
唯「お、じゃあお邪魔しました〜」
唯、忙しいなー。
いっぱいお客様来てるのか。
マミ「唯くんまたねーありがとう!マナトくんどーぞー。で、終、もう慣れた?」
…は?
なんやねん。
『え?』
街は今日も輝いている。