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#1 序
鉦や太鼓が響き、哀切を帯びた異国風の音曲が玻璃の窓に反響する。最初のうちこそ戸惑ったが、ヨウはすぐに旋律をつかんだ。
低く高く、うねる音曲に、ヨウの三弦が絡みあい溶けていく。村人達の唱う祝詞がそれに重なる。
その燭台に照らされた中央では、少女たちが舞っている。
「あんたの目が見えればなあ」
ヨウの傍らで太鼓を叩いていた、大柄な男が囁くように言った。
「スアン嬢ちゃんが踊っているんで……?」
ヨウも三弦を奏でながら、頬にかすかに笑みを浮かべて言った。
「舞も上手いし器量もいい。あんただから言うが、舞手の中でもスアンは一番よ」
やがて周囲の村人や、囃し手までもがその輪に加わった。
燭台の灯りに玻璃がきらめき、さして広くもない祭殿の内はこの世のものとは思えぬ美しさだ。人々の頬も赫く照り映え、みな陶然とした表情であった。