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ステラ・システム  作者: オオトリ
5/5

会合

ピピピッ、ピピピッ、ピピ、ガチャ。


目覚まし時計のアラームがけたたましく鳴り響く。


瀬竜は目を擦りながらベットから体を起こす。


時刻は午前7時。

京造との待ち合わせの時間まではまだ時間がある。


カーテンを閉めた窓の間から入る陽光に目を細めながら、瀬竜は軽く体を伸ばして自分の部屋をでる。


洗面所で顔を洗い、居間に向かう。


居間の電気は既に付いていて、夜と変わらずテュポーンがソファーに座りテレビを観ていた。


「おはぁよう、テュポーン」

まだ眠気の抜けていない瀬竜はあくび混じりにそう言う。


“オハヨゥ”

テュポーンは体を瀬竜の方に向けてそう言い返す


“ゴハン”

続けて金色の眼をキラキラさせてそう言う。


「ぁあ、分かった。少し待ってくれ」


瀬竜は了承すると、キッチンに足を運ぶ。


確か卵が残っていたはずだから、ベーコンでも混ぜてスクランブルエッグにでもするか。


あ、でも目玉焼きも捨てがたい…。


そんな事を考えながら瀬竜は食パンにバター塗る。


すると、テレビからニュース番組のキャスターの声が聞こえた。


『今日のニュースです。今朝未明、都内の渋谷駅前で複数の男女が人に襲いかかるという事件が発生しました。

男女はすぐに拘束され、被害者も死傷者は出ておらず。軽傷で済みました。

襲いかかった男女は事件直後の記憶が混濁しており、警察は異能犯罪を視野に入れて捜査を進める模様です、また……』



異能に目覚めて進化した近代でも未だに犯罪は後を絶たない。


まぁ、天輪で制限が生まれたからといって、特異な力には変わりないからそれなりに舞い上がってしまう者も少なくはない。


そういった異能を用いた犯罪は少なくない。



世の中は便利になってきている分、なかなかに物騒だ。



しかし、それでも年々減少に向かっているのはひとえに政府の働きがあったからだろう。







「テュポーン、目玉焼きとスクランブルエッグどっちがいい?」


瀬竜は、食パンをオーブンに入れ、トーストのボタンを押してからテュポーンに聞く。


“マルイホウ”


目玉焼きをご所望のようだ。


「りょーかい。あ、5分経ったら食パン裏返してくれ」


瀬竜がテュポーンにそう言うと、テュポーンは“分かった”と言って、こっちに向かって歩いてきて、オーブンの前で立ち止まる。


すると、オーブンの前で屈んで中を見始める。



金色の眼で、オーブンの中のトーストをジーっと見つめる姿はなかなかに微笑ましい。



瀬竜はそんなテュポーンを見ながら卵の殻をわり、ベーコンと一緒にフライパンに入れていく。


ジュウゥゥと音をたてて、ベーコンと卵が焼ける良い匂いがする。


「硬めでいいか?」


瀬竜がオーブンを除くテュポーンに向かって聞く。

すると、テュポーンは首を横に振りながら、


“ヤワラカイノ”

と言う。


「りょーかい」

瀬竜は了承すると、菜箸で目玉焼きの卵白をつつきながら焼きあがるのを待った。

硬さが丁度よくなってきたので塩と胡椒を軽くふる。




チーーーーン

オーブンから音が上がった。

テュポーンがそれと同時にオーブンを開く。

オーブンの中の食パンとバターの香ばしい匂いが鼻をくすぐる。テュポーンは食パンを裏返してまたオーブンを閉めてトーストのボタンを押した。

熱がる様子は微塵もない。


「よし、これでいいかな」

瀬竜はコンロの火を消して、フライと菜箸を器用に使い、目玉焼きの黄身を破らないように皿に取り分ける。

あとは一緒に焼いていたベーコンを添えて完成だ。



「テュポーン、冷蔵庫から醤油だしといてくれ。あとこれ台拭き」


瀬竜はオーブンの前で屈んでいたテュポーンにそう言うと、テュポーンに水で濡らした台拭きを渡す。


“ワカッタ”


テュポーンは台拭きを受け取ると、冷蔵庫の扉棚から醤油を取り出す。

そして、居間に歩いて行った。


瀬竜は電気ケトルに水を入れて、スイッチを押してから盛りつけた目玉焼きを両手に持って、テュポーンに続く。


チーーーーン


パンが焼けたようだ。

瀬竜は目玉焼きをテーブルに置くと、皿を2枚持って台所に向かう。


オーブンを開けると、バターの染み込んだ食パンが少し茶色がかっている。

香ばしい匂いが食欲を煽る。


やはり、朝はパンに限る。とつくづく思う瀬竜だった。


瀬竜はトーストを皿に乗せて、テーブルに置く。


すると、コップを2つ用意して冷蔵庫の上の籠からインスタントコーヒーを取り出す。


コップの中にインスタントコーヒーを入れて、電気ケトルのお湯を入れる。


テュポーンはブラックは好きではないので、砂糖と牛乳をたっぷりいれてコーヒー牛乳にする。


「よし、これでいいかな」


瀬竜はそういうとテーブルの椅子に座り、手を合わせる。


テュポーンも反対側の椅子に座り、手を合わせる。


“「いただきます」”


さぁ、今日が始まる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「いらっしゃいませー」

店員が笑顔を作ってそう言う。


時刻は午前10時。

瀬竜は京造に指定されたファミレスに来ていた。

ちなみにテュポーンも一緒だ。



昼前という事もあり、店内はほとんど空席の状態だ。


「お〜い、こっちだ瀬竜!」

窓際の座席からチャラそうな男が手を振り、瀬竜に呼びかける。

京造だ。


テーブルの上には先に頼んだのか、ハンバーグステーキとライスが置いてあった。


瀬竜は京造の向かい側の席に座る。

テュポーンも俺の隣に座る。


ちなみにテュポーンは今は透明化している。

俺もテュポーンの異能を完全に把握しているわけでは無いから、今更透明になったぐらいでは驚かない。

理由としては見た目だけの問題ではなく、人に観測されるのは神としてはあまり良くないらしい。

京造が分かったのは、テュポーンのことを予め知っていたからだ。



まぁ、テュポーンのことを知ってるのは俺と京造ぐらいだ。

只でさえ友達と呼べるほどの間柄が少ない俺には信頼できる奴が京造しかいないからってのもあるけどな。



「お、今日は幽霊娘も一緒か」

京造は茶化すように言う。


「ぁあ、珍しく付いてくるって言っていってな。まぁ、問題ないだろ?」

瀬竜は京造にそう言い返す。


「勿論。ぶっちゃけ俺ら2人は正面から攻められたらオジャンだからな。腕の確かな壁役は大歓迎だぜ」

そう言って京造は瀬竜にメニューを渡してくる。



「俺はあんまり腹減ってないから、ドリンクバーだけで良いや。テュポーンは何か食べるか?」


瀬竜はメニューを開きながらテュポーンに問いかける。

テュポーンは甘味のページを開くと、上にプリンやアイス、苺などがトッピングされたかなり大きいパフェを指差した。


“コレ”

なんだろう、魔物が仲間になりたそうにこっちを見ている時と何故か同じものを感じる。


「ぁあ、わかった。ほんじゃそのボタンを押してくれ」

瀬竜は了承するとそういう。


テュポーンは言われた通りにボタンを押す。


ピーーンポーーン


すると店員が早歩きでこっちに来る。


「はい、ご注文はお決まりでしょうか?」


「えっと、ドリンクバー2つとこのデラックスストロベリーパフェを1つ下さい」


瀬竜がメニューを指差しながら注文する。


「はい、ドリンクバー2つとデラックスストロベリーパフェですね。

では失礼します。」


店員が注文機械を手に厨房に戻る。


「じゃあ、京造。本題に入ろうか?」

瀬竜が京造に切り出す。


「オーケー、じゃあ作戦会議の前に情報交換といこう。俺からも話すことがあるし」


京造はフォークを皿に置き、紙ナプキンで口を拭いてから自分のリュックに手を伸ばす。


するとノートパソコンが顔を出す。

京造はテーブルの上に乗せて、画面を開くと、東京都の地図が写っていた。

赤いピンがそこらかしこに付いている。


「取り敢えず敵がどの辺りで活動しているかを具体的に調べるために、俺らの春休みが始まってからの未成年の行方不明事件や誘拐事件とか未遂も含めてちょっとばかし調べてみた。まぁ、ネットの事件洗いざらい調べただけだから、関係ないのが混ざってる可能性も否定出来ねぇが取りあえず無いよりマシだろ。画面の地図にある赤いピンが主な事件場所な」


「……結構起こってるんだな」

瀬竜は頬を引攣らせながらそう言う。

俺らに関係あるとかの問題ではなく物騒過ぎるだろこの町。



「まぁ、外国の組織の方々からしたら今の期間しか無いわけだからな。躍起になるのは当たり前だな」

京造が「….しかし」と続ける。


「ッ、ック、半分以上は未明に終わってしかも、そのどれもが豚箱に直行して、ッククるんだよなぁック」

8割方馬鹿にした様な顔で京造が笑いながら悶える。



「……………へ?」

瀬竜がジト目で京造を見る。

そしてもしやと口にする。


「おい、ちょっと待て。つまり俺らに手を出そうとした奴らのほとんどがもう既に、シャバにはいないってことか?」


京造は呼吸を整えなが水を口に含んでから答える。


「その通り。ただ、ぶっちゃけまだ全部が全部捕まったわけじゃないから何とも言えねぇーけどな。てか、目星が付きにくい分、少し難易度上がってる」


京造がハンバーグを口の中で噛みながらそう言う。

しかし、その顔はさっきよりも楽しそうだ。


“ノミモノ”

テュポーンが話に割り込んでそう言う。

どうやら飲み物を持ってきてくれたようだ。手にはコーラが入ったグラスが2つ握られていた。


瀬竜は「サンキュー」といって受け取り、喉を濡らす。

そして京造に少し顔をしかめて言う。


「ぁあ、ええっとつまり振り出しに戻ったわけか?」


「いや、ぶっちゃけそうでもなくてな」

京造が残りのハンバーグを口に含んでそう言う。


「最近、とある事件が猛威を振るっててな、それというのが何と自分でも知らず知らずのうちに人に襲いかかるってもんらしくてな」


瀬竜はその話に妙な既視感を覚えた。


「それって、駅前で人が人に襲いかかったってやつか?」


そう、朝のニュースで流れていた内容にそっくりだった。


「あぁ、それそれ。そんでさ、この事で瀬竜に探して欲しい…いや、正確には調べて欲しい事があるんだが天輪あるか?」


「あるけど、何を探せば良いんだ?」

瀬竜は京造にそう答えると、右手の甲に天輪を出現させる。


「確かお前、昨日政府のサーバーに侵入したろ?その時にお前が見た名簿に載ってた奴らの住所を調べてくれ」


京造は瀬竜にそう言うとパソコンをこっちに寄越す。


「分かった。【探求者(シーカー)】」

「【最適解(カウトアンサー)】」


瀬竜がそう言うと、手の甲の紋章が光り、途端に5枚の天輪が淡く輝き砕け散り虚空に消える。


それと同時にパソコンの空白の検索画面を目掛けてenterキーを押す。


タンッ


軽い音と共にパソコンが暗転する。

そして数十秒して再起動すると、


「…ぉお、スゲェな。マジで出てきやがった…」

京造は驚嘆を顔に浮かべながらそう言う。

パソコンの画面には先日、瀬竜が見た名簿の詳細が載っていた。

顔写真やその他の個人情報までくっきりと。





一応、瀬竜は自分の名前を探し住所が、合っているかを確認する。


「よし、俺の住所は合ってるから多分これだと思うぞ」

瀬竜はそう言うとパソコンを京造に渡す。


「おっし、よくやった。ちょっと時間くれ。」

そう言うと京造が何やら凄い勢いでキーボードをカタカタし始めた。



「大変お待たせしました。デラックスストロベリーパフェです」

注文したパフェが届いたようだ。

それに合わせてテュポーンがパフェを受け取る。

「御注文は以上でしょうか?」

「はい」


淡々と店員がそう言うと厨房に戻っていく。


受け取ったテュポーンはというとかなり分かりにくくはあるが、少し頬を朱色で染めて美味しそうに長いスプーンでパフェを頬張っている。

家でも良くファミリーパックのアイスとか膝に乗せて食べてるくらい甘いものが好きだし。


そんな事を頭の中で考えながら瀬竜はスマホをポケットから取り出し、いじりはじめた。


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