終曲
事件が解決し、神原直忠は釈放された。長谷川が神原を病院まで送り、母親と二人にさせた。そして息子の無実を知り、母親は小さな涙を流し、幸せそうに微笑みながら亡くなったという。
長谷川は葬儀には参加しなかった。しかし、死ぬ前に無実を証明できて良かった。それが、何よりの喜びだった。
それから二時間後––––。
「カンパーイ」
長谷川は仲西とおせちとオードブルを取り、軽い祝杯をあげていた。日本酒を飲み、オードブルに舌鼓をうつ。
「今回の事件、手強かったスね」
海老の皮をむきながら長谷川は言った。
「どんな人間でも、完璧な奴はいない。何かをすれば、綻びが生じる。それを納得いくまで調べた結果だ」
「またまたぁ、謙遜しちゃって、警部、ほんと尊敬しまっス」
「今回は神原直忠という最も怪しい人間がいて、全員がそっちに気を取られていた。真に重要なのは、根っこの部分をきちんと探す事だ」
ビールを飲み、仲西はオードブルの揚げ物を食べた。
「でも……警部は自分のそんっ……んぐっ!」
突然長谷川が呻き声をあげ、倒れた。それを見た仲西は慌てて駆け寄った。
長谷川は喉をトントンと叩いている。そして大きく息を吸った。
「どうした?」
「あ……いや、ちょっと海老を食べ過ぎちゃって」
「あ……テメェ! 俺の海老も食いやがったな!」
「あ……」
「あ……じゃねぇ!」
と、仲西は長谷川の顔を軽く小突いた。




