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第二章 7話 王様達との食事会だってさ。

 王子二人の家庭教師をやることになってから一週間が経った。

 王子達のスキルはこんな感じだ。

 レベルはそのまま。



名前   バイサク・ナピーナップ ♂

年齢   10才

所持スキル


無し



名前   ジェット・ナピーナップ ♂

年齢   8才

所持スキル


綺麗な字


間違わない掛け算


早い暗算


読解力




 ぶーちゃんはなにも覚えてないのに比べて弟の出来の良さったらなかった。

 これでぶーちゃんのが王様向いてるらしいから不思議だな。


 弟君はこの一週間ずっとニコニコしている。

 この兄弟は元々仲良かったらしいが、例の後継者争いで最近はあんまり会えてなかったらしい。

 弟君はぶーちゃんにやたらなついているようだ。

 それに対してぶーちゃんはよくわからん。弟君を可愛がっているような気がするが、基本的になに考えてるかわからん。

 いつもボーッとしてる。

 今もボーッとしてる。


「おい勉強しろぶーちゃん、次は四の段だぞ」


 ぶーちゃんは九九真っ最中だ。


「先生、人には向き不向きがあるのだ。余はね勉強が嫌いなのだよ」


「教師の前ではっきり嫌いっつったな。いいかぶーちゃん、嫌いなことでもやらなきゃいけない時はあるんだよ」


「余は王子様なのに?」


「王子様だろうが神様だろうがだよ」


「兄上、ちゃんとやりましょう?」


 8才の弟に促されるなよな。


 うんまあ、こんな感じで割りと平和な日常を送っている。




 城で王子二人に勉強を教えた後夕食に招待された。

 王様一家と夕食らしい。

 王族と食事か、まあ緊張なんてしてやらないわけだが。


「ザマスオバサン、ぶーちゃん全然勉強しないんで、説教しといて下さい」


「まあバイサクっ、またざますかっ、先生の言うこと聞いてちゃんと勉強するざますっ」


「あっ!!先生っ、母上に言うのは反則ではないか?ずるいのではないか?」


 別に反則ではねえよ。

 なんのルールブックそれ。


「父上、今日は僕解の公式を覚えたんだよ」


「解の公式か、父上王様だけどそんなん知らない」


 ほら見てみ、異世界の8才児なのに解の公式覚えたナチュラルな天才発言。ぶーちゃんとはえらい違いだ。

 正直弟君は飲み込みがスポンジかって位早いからな。

 対してぶーちゃんはゴムなんじゃないのかって位なにも吸いとらない。


「余はね母上、難しい問題は全部ジェットに解決してもらうことにしたんだよ。死ぬまでそうやって生きていくよ」


「任せてよっ兄上」


「ダメざますっ、死ぬまで弟に丸投げで生きていく発言を10才でするのはホントに全部ダメざますっ、ジェットちゃんもダメざますっ、もうちょっと成長を促してほしいざますっ」


「はっはっは、勉強せんといかんぞバイサク」


 王様は呑気に笑ってるわ。平和な家族ですこと。


 あ、そういえばぶーちゃんと弟君は腹違いの兄弟なんだよな。

 じゃあ弟君の母親はどうしたんだべ。

 第二王妃ならここにいてもおかしくないような気がするが。

 うーん、今聞いて、昔に亡くなってますとかの地雷踏むのもあれだしな。

 じゃあ眼鏡かけてと。



鑑定結果


第二王妃ミルドレット・ナピーナップは呪いを患っているために余り表に出てきません。

呪いはユニコーンの呪いです。

世界樹の南の枝にある森に生息するユニコーンに呪われていてユニコーンの角を模した変な被り物を被っていないと落ち着かない呪いにかかっています。

変な被り物をつけているのであまり表に出てこないのです。

ユニコーンの森の奥にある無花果石を使って治せます。

特殊な呪いなので普通の光魔法などでは治せません。

ヤスダの滅竜烈火神殺拳でなら治せます。

まんじゅうの魔法でも治せます。



 ほう、呪いか。

 まんじゅうの魔法か俺のワケわからんスキルでも治せるらしい。


 ていうか角を模した変な被り物を被ってないと落ち着かない呪いってなんだ?

 そもそも角の被り物ってなんなんだろうか、角って普通頭についてるもんなんじゃないのか?被るの?


 ……とりあえずその人すげえ見たい。


「時に王様、ジェット君の母上は何かしら体調崩してるか何かなんですか?うちのパーティー回復役沢山いるので病気でも呪いでもなんでも治せますよ?」


 ホントは明確に症状を知ってるが、すっとぼけて聞いてみた。


「ん?ああ、そうなのだ。ミルドレットは軽い呪いでな。あまり人前には出てこようとせんのだよ。しかしそうか、並みの魔法では治せなんだが、勇者の従者殿達に治せるなら治してもらってもよいかもしれんな。まあ、特に困ってるわけでもないのだが」


 お?呪いなんて言うから深刻なのかと思ったが、なんか王様ヘラヘラしてんな。

 まあ、被り物をしてないと落ち着かない呪いだからな。

 そんなもんかもな。


「母上は変な被り物してるんだよ。すごく変なんです先生」


 弟君がニコニコしながら言ってくる。

 実の母ちゃん変な被り物してんだろ?

 ニコニコしながら言ってやるなよ。


「ジェットちゃん、自分のお母上を変だ変だ言うものじゃないざますよ」


「でもあれは余も変だと思う」


「バイサクっ、ざますっ」


 とうとうざますを、こらっ、みたいな感じに使い始めたザマスオバサンはとりあえずスルーして、その変な人に会わせて貰えることになった。









「初めまして勇者ヤスダ様、こちらからご挨拶に行けなくて申し訳ありません。なにぶん動きづらいものですから」



挿絵(By みてみん)



 長い。


「ああ、そうでしょうね」


 なんか気のきいたこと言いたいが、凡庸な返事しかできない。

 なんでこんな長いの?

 なにこれ?

 弟君の母親だけあって顔は美人の気がするが、全然そっちに目がいかない。


「ジェットの面倒も見ていただけているそうで、ありがとうございます」


「いいえ~」


「まさか知らない間に次期王がバイサク様に決まるとは思いませんでした」


 あ、嫌味かな?これから嫌味いわれんのかな?


「あ、気にしないで下さいまし、マドリーヌ様のお子なのですものバイサク様が次期王になるべきなのです。私はそもそも次期王の母親ができる器ではないのです」


 ほう、そうなのか、俺には器とかよくわからんな。

 聞けばこの人歓迎パーティーにも来るはずだったが、何やら天井のなにかにあれが挟まって動けなくなってたんだそうだ。

 なにそれ、笑っちゃいそうなんですけど。


 知らない間に次期王が決まっていてびっくりしたらしい。

 まあそりゃそうだ。

 俺はあなたの頭にびっくりしたが。


 つうかもうだめだわ。

 気になってまともに話もできない。

 王様とかなんで普通に談笑してんの?

 あんたの奥さん頭に変な角被ってんだよ?


「あの、その被り物の呪いって、ユニコーンの森の奥にある無花果石って言うので解けるらしいんですよ。よければとって来ましょうか?」


「え!?」


 角王妃びっくりだ。


「なんと、他国の高名な光魔法使いでも解けぬ呪いだったのだが、そんな解き方があるのか」


 ヒゲ王様もびっくりだ。


「ええー、いえ別に解いていただかなくてもいいのですよ。勇者様にそんなご迷惑をかけるわけには……」


「いやいや気にしないで下さい」


「安田先生もそういっているざますよ。せっかくなので解いてもらったほうがいいざます」


「マドリーヌ様、でも~」


 あれ?なにこの人。むしろ解いてもらいたくない感じなのか?


「……解きたくないんですか?」


「……実はこれをつけているとすごく落ち着くんですよ。はずすとなにか頭が寂しいのです」


 頭が寂しいってなんだよ。

 禁煙し始めた人の、なんか口が寂しいんだよね。みたいな感じに言うなよ。


「いや、ミルドレット、解いてもらうべきだ。そなたこの間もそれが引っ掛かって首おかしくしただろう?」


 なにかに引っ掛かって首ガクンってなったんだろうな。


「そ、そうですか。うーん、じゃあお願いしようかしら」


「ああそうだ王様、ついでにこの辺りにダンジョンとかあります?」


 その無花果石取り行くついでに王子二人のレベル上げもしちまおう。

 まあ今この場でもまんじゅうの魔法か俺が殴れば治せるんだけどもね。

 いや殴るわけにはいかんか。

 むしろ王子二人の課外授業のだしに使わせてもらうべ。

 今すぐにおかしな角の被り物外すよりそっちのが生産的だわ。


「ダンジョン?ああ、あるぞ、世界樹から少し離れた島に中規模のやつが」


「そこに近々王子二人連れて行きたいんですよね。レベル上げに」


「ほうダンジョンか、それは良いな」


 王様は大丈夫か。

 王子をそんなとこには行かせられんみたいなことにならなくてよかった。


「ダンジョンですか?危なくないのかしら?」


 角王妃様は心配そうだ。


「大丈夫です。うちのパーティーのカワウソ達がついてますんで」


「まあっカワウソ様が、それは素晴らしいですね」


 カワウソ様の威光はこの国にも届いてるようだ。


「いい考えざます、バイサク、ガンバるんざますよ」


 あ、どうすっかな、現地産勇者らしいザマスオバサンも連れてくべか。


「……」


「なんざます?眼鏡ずれてるざます?」


 いや、眼鏡はずれてないけどもね。

 ……うん、やっぱやめとこう。

 四十しじゅうすぎた子持ちの眼鏡のオバサンに、実はあなた勇者なので今からバッキバキに剣と魔法の修行してもらいますとか、四十過ぎてからの人生の起伏がエグすぎるわな。


「なんでもないっす。じゃあ、せっかくなんで、ひくべかな」


「……ひく?」


「まんじゅう、プレゼントボックスやらせて」


 リンリンリン。


 俺の腰についてる箱こと、最強の魔物まんじゅうから了解のリンリンリンが聞こえる。


「ん!?なんだ箱が?ああ、これが噂の安田殿の使い魔か」


 王様はまんじゅうのこと知ってたらしい。

 俺はプレゼントボックスについて説明して試しに王様と王妃二人に一回づつ引いてもらうことにした。

 王子二人は明日から引いてもらう。


「ここに手を入れるのか?真っ暗なのだが」


 王様がまんじゅうの口に怖々手を入れる。

 お、なんか出てきた。

 薬の瓶か、多分消費アイテムだな。

 う~ん、多分ハズレかな。


「安田殿これはなんだろう」



アイテム名 超レベル上げ薬(ハッカ味)


分類    薬

レア度   A+

価額相場  64000000G~75000000G


効果及び説明


飲むとレベルが5上がる薬、ハッカ味はレベルが上がるのに加えてスキル欄にブリザードブレスという広範囲を凍らせることができる竜族のスキルが増える。



 このヒゲすげえの引いたな。ハッカ味って……。

 まあ、なんにしても超大当りだったわ。

 俺は王様に薬の説明をする。


「5!?レベルが5も上がるのか!?そして竜族のブレスが使えるようになるのか!?私が!?」


 王様は一通りびっくりしてから薬を飲もうとして家来の人に止められてる。

 毒味とか鑑定してみないと飲んじゃダメ的な感じらしい。

 鑑定できる家来の人が鑑定をすませてから飲んだ。


「!?王様、本当に5レベル上がっております。信じられない……そんな薬聞いたことがない」


 鑑定できる家来の人びっくり。

 5レベル上がるとかやっぱすごいんだろうな。


「誠か!?むむ、すう~~~、ブーーーーっ」


 ひゅごおおおぉぉ。


 おおっ、冷たい息が出た。

 人いないところに向けて吐いたから王様の椅子がカチンコチンになった。

 レベル20の氷のブレスを吐けるヒゲ魔人が誕生したようだ。


「びっくりだ。すごいな安田殿、これは貴重なのではないのか?」


「貴重でしょうね。レア度A+で六千万位するみたいですから」


「まじで!?六千万!?、王様の私でもさすがにそんな高価なもの中々貰えんよ、ていうか飲まなきゃよかった。そんなん国宝ではないか」


 王様がまじでって言った。


「そ、それ、私達もこれから引けるんザマス?」


 王妃二人が、ゴクリ、みたいな感じでこっち見てくる。


「いや、さすがに王様レベルのは大当りですよ。レア度A+は中々出ない、大概はレア度B位のやつ、ハズレならCとかもあります」


「そ、そうなんですか。安田様、Cでもただで出てくる訳ですからとんでもない話ですよ」


 そうよね。まんじゅうマジでチートよね。

 そして、今度は角王妃様が引くらしい。


 ん?なんだあれは、輪っか?



アイテム名 宣誓の金の輪


分類    アクセサリー

レア度   A

価額相場  50000000G~58000000G


効果及び説明


HP、MPが+100、力、体力、素早さ、賢さ、精神力、器用さが+30される金の輪っか、ただしこの輪っかがすっぽりはまる肉体の部分、もしくは体同然になった装備品が無くては装備できないし効果があらわれない。

つまり装備するにはなにか装備品を体の一部といえるレベルにまで昇華する必要がある。

彼女の場合ほぼ肉体の一部である角にすっぽりはまり、効果も出ます。



 また当たりじゃん。

 すげえなおい。

 やっぱ王族とかって生まれながらに勝ち組だからだろうか。

 あ、でもこれ呪い解けてもあの角を定期的に被ることが確定してしまったな。


「す、すごいです。か、体が羽みたいに軽いっ」


 ガンっ、ガンっ。


 角王妃様は金の輪っかを角につけて、ピョンピョンジャンプしてる。

 垂直跳びで十メートル位ジャンプしてる。

 すごいシュールな光景。

 ちなみにガンって音はジャンプしすぎて角が天井に刺さる音だ。

 すごい天井高い部屋なんだけどね。もう天井穴だらけだわ。

 ん?ていうかあの角の被り物固いの?あぶなくね?


「じゃ、じゃあ最後は私が引くざます」



アイテム名 覇龍剣天元開放真龍光閃光剣

分類    武具

攻撃力   130

レア度   ?

価額相場  ?


効果及び説明


かつていた生産系の能力を持っていた中二病の勇者が作った両手剣。

装備すると、力、素早さ、精神力が+15され、スキル欄に光の刃、光の鎧というスキルが増える。

装備できるのは高潔な精神を持つ者のみ。

高潔な精神を持つ者が持てば羽のように軽いが、それ以外の者が持てば見た目通りの重さになる。


余談


中二勇者増田が作った剣。

能力と見た目は最高性能だったが、名前づけで失敗したために作られてすぐに破棄された伝説の剣。

それ故にこの剣の存在を知っている物はこの世界に存在しない。



 ギンギラギンの白いでっかい剣出てきたっ。

 相変わらずなに基準で数値化してるのかわからんがとんでもねえ攻撃力だ。

 完全に過去最高の数値。

 大きさは二メートル位ある。超でかい。

 あの実用性が全く無さそうな無駄なでかさ、剣から中二パワーのほとばしりが見えるようだ。

 でも名前は龍って字と剣って字と光って字が二つづつ入ってる。

 超ダサい。

 確かに名前づけは失敗している。



「な、なんざますこれ、とんでもない剣出てきたざますけど……」


「……まあ、時々剣でも振って体動かしなさいってことかもしれませんね」


 あなた実は勇者だしね。


「ええっ!?二メートル位あるザマスよこれっ、自慢じゃないですがワタクシ生まれながらの生粋のお嬢様ザマスよっ、刃物なんて持ったこともないのに四十過ぎてから急にこんなでっかい剣振るんザマス!?」


 ブオンッ、ブオンッ。


「あっ思ったより軽いざますこれっ、すごいざますっ」


 ザマスオバサンが急に剣振り回した。

 いや危ないからね。




 ひゅごおおおぉぉ。


 ガンっ、ガンっ。


 ブオンッ、ブオンッ。


 ヒゲが氷のブレスを吐き。

 頭が角の女が天井に穴をあけ。

 眼鏡を掛けた四十過ぎのオバサンが二メートルの剣をぶんぶん振り回す。


 なんてことだ。ここが地獄か。



 ……うん。

 じゃあテンション上がってるオバサンオジサンはほっとこう。


「いくぞ、ブーちゃんとジェット、明日からダンジョンでレベル上げだぞ~」


「……先生、レベル上げたら余達もあんな化け物になってしまうの?」


 ブーちゃんと弟君は怯えた表情を浮かべながら聞いてくる。


 いやならないよ。

 君たちの家族が新進気鋭のサーカス団みたいになったのはたまたまだからね。

 俺は怯える二人をなだめながらそっと部屋を出る。


 さ、ダンジョンでレベル上げのお時間です。

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