第二章 5話 歓迎会をしてくれるらしいよ。
本日3話目の更新です。
ご注意下さい。
木の枝にある街ナウマヤカに着いた俺達は、王様たちに歓迎されて今は王城の控え室にいる。
何やら勇者歓迎パーティーをしてくれるらしい。
みんなスーツとかドレスとか着させられてる。
「よかったんですか安田さん、あんなこと言って、なんですかスーパーウルトラなんちゃら回し蹴りって」
東くんがまだ気にしてるようだ。
スーパーウルトラフリーズドライ製法大回転後ろ回し蹴りな。
「いいっしょ別に、退治したわけでも宇宙に吹っ飛ばした訳でもないけど巨人の問題は解決してんだし」
「まあ、私ここにいるけどな」
謎の巨人の正体は俺の真横にいるが解決したのは間違いではない。
「まあ確かに唯川さんが巨人になれる能力持ってるとかばれない方がよさそうだよね。怖がられそうだし」
鈴木さんがいいこと言った。
そうよね。怖がらせたらダメよね。
「まあ、正確には巨人になれるのではなくて、目の部分に運転席があるんだけどな」
京がとんでもないこと言った。
え、まじで?
つまりあれロボットなの?
鈴木さんも東くんもびっくりして声が出てないようだ。
「……まじで?コックピットあんの?」
「ある。何だか知らんが車のハンドルがあって、それを握ると思った通りの動きをするのだ。あのウル○ラマンは。ちなみに目は二つあるからコックピットはもうひとつある。助手席みたいなのが」
「……それ今度乗せて」
「……あ、僕も乗ってみたいです」
「じ、自分も乗ってみたいです」
「うむ、一向に構わん」
どっかの海王さん風に許可が出た。
やったぜ。ウ○トラマンの中入れるぜ。
あ、そうだ。浮かれてる場合じゃねえや。
みんなに一応再度忠告しとかねえと。
「みんなあれだからね。この国後継者争いの真っ只中だからね。変に首突っ込まないようにね」
「うん、わかってるよ。困ってる人がいるわけでもないしね。なにより面倒だし」
「わかってます」
「まかせろ、ヤスダ、私黙ってるの得意」
「確かに首突っ込まないのが無難ですね」
鈴木さんと東くんパーティがいい返事を返してくれる。
「うむ、龍臣がそういうならそうしよう」
「カワウソ族は先生に従いますよ」
よし、吸血鬼とカワウソも了承してくれた。
「先生、時間のようじゃ」
おっと部屋に入ってきた執事っぽい人に呼び掛けられたパニニじいちゃんが時間を知らせてくれた。
俺達が控え室から出ると、貴族がたくさん居て拍手して出迎えてくれた。
俺達なんにもしてないけどね。
何にもしてない勇者ヤスダが皆さんの元に来ましたよ。
せっかくだし歌でも歌ってやろうか。
「安田くん、おかしなことしないでよ」
あ、鈴木さんに小声で機先を制されたよ。
ん、くるりんヒゲのオッサンが前に出てきた。
この国の王様だ。
「今一度勇者一行の来訪を心より歓迎しよう」
「ありがとうございます」
なにかと異世界に慣れてる東くんが軽くお辞儀してる。
俺達もやった方がいいかな。
「さ、バイサク、次期王として、勇者東様に挨拶をするんざますよ」
「お待ちください。マドリーヌ王妃、次期王はまだ決まっておりませぬ」
あ、ぶーちゃん王子の母親である意地悪オバサンが何やらやろうとして、王様じゃないヒゲのじいさんに止められてる。
この国はヒゲ率が高い。
こっちのヒゲは宰相とかそっちの人だべな。
しかしこれは不穏な気配、いきなりめんどくさい空気。
「それに東様に対する挨拶なら、ジェット様は会った時にもうすませています」
宰相っぽいヒゲがなにやらダメ押し的な意見も言い出した。
んん~、めんどくさいぞ~、これはめんどくさい。
「次期王にはジェット様がふさわしいのだから此度もジェット様が挨拶するべきだっ」
「「「「「「そうだっ」」」」」」
あ、後ろにいる貴族達も何やら入ってきたぞ。
こいつら美少年派だな。
「第一王子はバイサク様ではないかっマドリーヌ様の血を引くバイサク様が挨拶するべきだっ」
「「「そうだっ」」」
あ、今度は別の貴族の集団が騒ぎだした。
こいつらぶーちゃん派だな。
でもぶーちゃん派は少ないようだ。
明らかに声が少ない。
ぶーちゃん人望ないらしいからな。
んん~、しかしこんな騒いでたら当の子供たちがかわいそうだな。
ああ、もう美少年王子は涙ためておどおどしちゃってんじゃん。
ぶーちゃん王子は、……なんだろうな。なんか食ってるわアイツ。
ああ、騒ぎがでかくなってきたな。王様が「静まれいっ」とか言ってるけど両陣営とも騒ぎすぎて聞こえてないようだ。
おお、めんどくさい。
あ、東君がこっち見てどうしますか?て顔してる。
……う~ん。
場所名 樹中都市ナウマヤカ
説明
豊かな国なので正直どっちが王様になっても大して変わらない。
ただし王様に向いているのは太ってる方。
ちなみにこのまま放っておくと数年以内に内戦が勃発する可能性がかなり高いです。
え!?まじで?
ぶーちゃんの方が向いてんのか。
そうなのか、う~ん。
でもどっちがなっても大して変わらないんだよね。
つうか、ほっとくと内戦になるの?え~。
……う~ん……う~ん……う~ん。
んん~?
これあれだな。
どっちかに利権がらみの権力求める悪いやつがいるんじゃなくて両方とも自分が正義だと思ってるパターンだよな。
これは俺たちがどっちかに肩入れして勝たせても最終的には胸くそ悪くなるパターンだ。
じゃあやっぱほっとくか?
ほっといて様子見るパターンにするか?
いやいや内戦コースになるならそれこそ一番胸くそ悪くなるパターンだわ。
パターンパターン考えすぎてワケわかんなくなるパターンに入ったパターンだわ。
パターン。
パターン。
ハッピー○ーン。
あ、やべ、めんどくさすぎて思考がおかしくなった。
あれこれマジでどうしようかな。
んん~、んん~、んん~、んん~、んん~、んん~、んん~、んん~、んん~、んん~、んん~、んん~、んん~、んん~、んん~、んん~んん~、んん~、んん~、んん~、んん~、んん~、んん~、んん~、んん~、んん~。
……ああ、もう活字にしたらゲシュタルト崩壊おこして、んん~、ってのが変なマークに見えちゃいそうな位考えてるな俺。
ああ~もうめんどくさい。
もうなんでもいいんじゃねえか。
貴族どもはまだ騒いでるしよ~。
ああ~、ギャーギャーうるさい。
もうどうでもいいんじゃないか?
どっちがなっても大して変わらないって書いてあるし。
うん、よし。
「第一回王様決定勝ち抜きジャンケン大会ーーーーーーっ!!!!!!!!!!」
腹から声だしてパーティー開場中に聞こえるように大会の開催を宣言してみた。
みんな驚いて騒ぐのをピタッとやめた。
パーティー開場を静寂が包み込む。
「おい召し使いよ。何を言っとるんだ」
ヒゲの王様が首かしげながら聞いてくる。
「王様、俺召し使いじゃねえから、安田さんはこのパーティーのリーダーです」
「何!?そなたが勇者安田……まさか、東殿」
王様がびっくりして東くんに真偽を確かめてる。
「……ええ、この人が安田さんです。うちのパーティーは基本的にこの人が動かしてます。……今はちょっとそのことを後悔してます」
ほんとになぜ俺がリーダーなのかは謎のままではあるが、リーダーなのだから仕方ない。
「王様、ジャンケンで決めましょう」
「……何をだ?」
「次期王様を」
「いやいやいやいや」
「あ、あれですよジャンケンって言うのはねグーとチョキと……」
「いやジャンケンのルールは知っとる。そういう問題ではない」
あ、この世界にジャンケンあんのか。
「いやもうね、正直このままだと内戦になるらしいのでさっさと決めた方がいいよ」
「何!?」
内戦って単語に王様とかその他の貴族が敏感に反応した。
「なにをおっしゃるのですっ!?いくら勇者と言えど言っていいことと悪いことがありますぞっ」
宰相っぽいヒゲじいさんが突っかかってきた。
ちなみにこのじいさんのヒゲは仙人タイプのあご髭が長いタイプのヒゲだ。
名前 バブル・ナピーナル ♂
年齢 63才
職業 宰相
種族 人族
称号 まあまあな宰相
レベル 11
HP 47/47
MP 15/15
STR 13
AGI 15
VIT 22
INT 33
MND 25
DEX 17
装備
南国高貴服
所持スキル
正確な計算
杖レベル1
受け流し、石割り
説明
この国の宰相、まあまあな宰相。
賢い第二王子が王位を継ぐべきだと思っている美少年王子派。
余談
キーワードは「ミヨちゃんはあの時洗面器を持っていなかった。そして今は桶屋討伐の旅に出ている」
ああ、やっぱ宰相だったか。
……ていうか、え?キーワード?キーワードってなんだ?
ハガキに書いたら何か貰えるんだろうか?
なんだこのストーリー性を感じさせるキーワードは……。
「俺にはそういうのがわかる能力があるんです」
「……な、何をバカな、伝説の勇者タナカ様のような未来を見る力があるとでも言うのですか?」
宰相がちょっとびびり出した。
周りの貴族達も、まさか……、みたいな感じになってる。
ちなみに予知能力があるらしい伝説の勇者タナカは前に俺が住んでたアパートの隣室の友人だったりする。
「まあ、似たような力ですかね?」
別に未来が見えるとかではない……とは思う。
ぶっちゃけ俺自身よくわかってないけど。
時々未来の情報が出たりもするけど。時々変な指令みたいのが出たりもするけど。今回はキーワードが出たよ。
……ウルトラ鑑定あらためて意味わからん過ぎるな。
「で、では証明していただきたい。本当にそのような能力があるなら」
宰相がびびりながらまだ突っかかってくる。
さてどうすっかな。
じゃあ、意味はわからんが……。
「ミヨちゃんはあの時洗面器を持っていなかった。そして今は桶屋討伐の旅に出ている」
「―――――――――!!!!!?」
キーワードを話したら宰相はびっくりするほど目を見開いてわなわなと震え出した。
「……お、おうう、ミヨちゃん……なんということなのだ」
お、おうう、宰相今度は膝から崩れ落ちて泣き出した。
ええー、何?
桶屋討伐の旅してるらしいミヨちゃんって誰で洗面器がどうしたんだよ。
周りの貴族も急に膝をついてうずくまり泣きはじめた宰相に驚きが隠せないようだ。
王様が泣いてる宰相に近づいて話を聞こうとしている。
「ど、どうしたのだ宰相、ミヨちゃんって誰で、洗面器がなんなのだ?」
それは俺も知りたい。
「……王、この方の能力は本物です。我々は従うべきです。ジャンケンで決めましょう」
なにやら泣き止んだらしい宰相が起き上がって話し出した。
ええー、宰相が一転して俺のジャンケン大会を後押しし出したよ。
マジかよ。キーワード効果絶大だな。
でもミヨちゃんについては教えてくれないんだろうか?
「このままでは我が国は間違いなく内戦になりますっ、ジャンケンで決めましょうっ」
宰相の手のひら返しがとんでもない。
手のひら返しすぎて手首取れそう。
「いや、しかし、ジャンケンで次期王を決めるなど、とてもではないが」
「そうざますっ、王はジャンケンなどで決めるものではなく、なるべきものがなるものざますっ」
あ、今度はぶーちゃん王子の意地悪オバサンが入ってきた。
王になるべきものがなるとか言ってるな。
この人、やっぱわが子可愛さにぶーちゃんを王様にしようとしてんじゃねえのかな?
鑑定だとぶーちゃんの方が王様に向いてるらしいからな。
うーん、ちょっと今一わからんな。
「でもザマスオバサン、どっちかっていうとぶーちゃん王子の方が人気ないし、今ジャンケンで決めた方がなれる確率ちょっとは高いんじゃないかな?」
「ザマスオバサン!?それワタクシのことざます!?」
そうですよ。
だってあなたザマスオバサン以外の何者でもないよ。
「マドリーヌ殿と言ったか、ここは龍臣に任せてみればよろしかろう」
え?何?
なんか急にうちのパーティーの吸血鬼が話に入ってきましたよ。
「あ、あなた様は誰ざます?」
あれ?いきなり様づけ?
「いまはそんなことよりマドリーヌ殿の息子のことだろう。王とはなるべきものがなるもの。正にそうだ。なるべきものがなるべき時に導かれるがごとくなるのだ。息子の気運を信じてみればよろしかろう」
「……気運、ざますか」
え?何このやり取り?
「わかったざます。ジャンケン大会、お受けするざます」
え?わかっちゃったの?まじで?
というわけで、俺のキーワード付きの思い付きと吸血鬼の女王様の謎の説得力により第一回王様決定ジャンケン大会が開催されることに成りましたとさ。
このパーティー開場入って来たときはみんなで跡目争いに首突っ込まないようにしようって言ってたのにな……。
むしろ主導しちゃいましたとさ。