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姿を現した真の最終話

お久しぶりです。

 勇者安田さんこと俺が、訳のわからない棒人間やらデカイカップ麺やらを退治して、こむら返りの三倍の痛みと引き換えに女神しゃまを特殊召喚してから1ヶ月がたった。


 今は王城にある部屋でパーティーメンバーとまったりしているところだ。


「ナピーナップって国に来てから変な吸血鬼を仲間にしたり、教え子が金太郎になったり、おじいちゃんの勇者に出会ったり、ホームレスみたいなビジュアルの魔王になりかけのオッサン助けたり、月が三つになったり、いろいろあったよね鈴木さん」


「……うん、そうだね。色々あったね。……なんで安田くんがこの国に来てからあったことを時系列順に語りだしたのかは全くわからないけども、色々あったね」


 俺のセリフに同調してくれるのは太ったおじさん勇者こと鈴木さんだ。

 36歳の太ったおじさんだ。

 まごうことなくそれ以外の何者でもない。


「どうした龍臣、眠いのか?私は吸血鬼だが変ではないぞ」


 なぜ俺が睡魔に襲われてると思ったのかはわからないが、今話しかけて来たのは胸の大きな吸血鬼の勇者だ。

 御年2000才オーバーらしい。


「安田さん、ブーちゃんとの訓練終わりましたよ」


 太ったおじさんや吸血鬼と会話していると今度は部屋に鬼が入ってきた。

 いや、鬼ではない。

 間違えた。鬼みたいな顔をしている勇者東くんだ。

 彼は鬼みたいな、世紀末覇者みたいな顔をしている高校生だが、心は乙女という非常にぐらぐらしている存在だ。


「先生、余はお腹が減ったよ」


 東くんの後から入ってきたのは金太郎みたいなビジュアルをしたこの国の王子だ。

 俺の教え子でもある。ビジュアルを金太郎にしたのも俺である。


「ブーちゃん、飯は漢字の書き取りしてからだぞ」


「ええー、余はお腹が減ってんだけどな」


 小太りの子供らしいセリフを吐きながら、ブーちゃんは漢字の書き取りを始める。

 ちなみにこの金太郎王子は先日国を救ったりしている。

 勉強はからっきしだが、見た目が金太郎だけに戦闘能力はすごいのだ。

 だが勉強はからっきしだ。思わず二回からっきしを使ってしまうほどからっきしなのだ。


 今も真面目な顔をして漢字の書き取りをしているが、右手にシャーペンを二本持ってる。

 あれは二本のシャーペンを平行移動させて一回の書き取りで2つ同じ文字を書くという離れ業に挑戦しているのだ。

 そうして漢字の書き取りを二分の一の時間で終わらせようとしている。

 努力の仕方が間違っている。

 勉強をする時間をなんとか減らす方に労力を傾ける典型的な勉強できないやつだ。

 しかもそれを教師である俺の目の前で堂々と繰り広げている。

 大馬鹿野郎、もといとんでもない胆力の持ち主である。


 そもそもこのダブルシャーペン殺法をやりはじめてから、こっちも書き取りの量を二倍にしているからね。

 だがブーちゃんは書き取りを二倍にされていることにも気づいていない。

 大馬鹿野郎、もとい非常に器の大きい人物である。


「先生、書き取り終わったよ」


 今日もブーちゃんは二倍にされた漢字の書き取りを二分の一の時間で終わらせた。


「よし、じゃあ飯にしよう」


「やったー」


「先生、ジェット王子の魔法訓練もちょうど終わりましたよ」


 今度は部屋にでかいカワウソが入ってきた。

 俺のパーティーメンバーであるカワウソ族のピンタさんだ。

 子持ちの渋い声のオッサンなんだが、ビジュアルはものすごいかわいい。

 ちなみにジェット王子というのはブーちゃんの弟だ。

 子憎たらしい顔したブーちゃんと違って将来イケメンになること請け合いの美少年だ。


「じゃあ、みんなで飯にしよう」






 みんなで豚カツを食べながらワイワイガヤガヤと食事をする。

 俺は食事をしながらブーちゃんを観察している。



名前   バイサク・ナピーナップ ♂

年齢   10才

職業   王子(小結)

種族   人族

称号   太った王子


レベル  18

HP   155/155 

MP   18/18


相撲力(小結)


装備


ヤル気満々前掛け


所持スキル


斧レベル3

縦割り、横割り、豪快斬り、剛力岩盤割り


相撲レベル4

上手投げ、ぶちかまし、大逆手、居反り、百烈突っ張り、豊穣の土俵


神降ろし(横綱)


綺麗な字




「よーしよしよし」


「ん?なんだ龍臣、急に犬わしゃわしゃする時みたいな声を出して」


 座ってる吸血鬼が俺のセリフに反応してきた。

 犬わしゃわしゃする時みたいな声でちゃってた?

 でもしようがない。

 目的達成できたんだから。

 さて、じゃあどうするかな。


「よし、東くん、縦線と横線はどっちが好き?」


「……は?縦線と横線?……考えたこともないです。なに言ってるの?」


「じゃあ、京は?」


「龍臣、私は二千年生きてるがそんな訳のわからないこと考えたことない。まず縦線と横線に好みの違いが見出だせない」


「じゃあ、鈴木さん、縦と横の二択ならどっち?」


「え?僕?うーん、じゃあ、……縦?」


「よし、決まりね。えー、では明日出発っ」


「「「「「「ええっ!?」」」」」」


 パーティーメンバーみんな驚いた声を出してる。


「ちょ、ちょっと安田くん出発って明日この国出るの?」


 鈴木さんが驚いて聞いてきた。


「そうよ」


 明日出発だから用意なさい。


「いやいやいやいやいやいや、なんでそんな急に?急すぎない?なんか前もそうだったけどさ」


「急でもない。ブーちゃんがなんか賢そうなスキルを得たら出発するって決めてたから、俺の心の中で」


「次から安田さんの心の中で決めたことは、前もって声に出して言っといて貰えます?」


 東くんが呆れた顔してこっちを見てくる。


「で賢そうなスキルってなんだ?龍臣」


 俺と付き合いの長い吸血鬼の姉ちゃんは動じずに聞き返してくる。


「今鑑定したら綺麗な字っていうスキルがブーちゃんに発現してたよ」


「ほう、中々よいスキルですな。漢字の書き取りばかりやらせてたのはこういうわけでしたか」


 ピンタさん達カワウソ族はなんか納得した顔でうなずいてる。


 俺が王子二人に勉強を教えはじめて結構たつ。

 おかげで弟のステータスはこうだ。


名前   ジェット・ナピーナップ ♂

年齢   8才

職業   王子

種族   人族

称号   賢い子


レベル  7


装備


ミスリルの片手剣(緑)


所持スキル


綺麗な字


間違わない掛け算


早い暗算


読解力


作文のセンス


絵画のセンス


もの作りのセンス


鍋作りのセンス


片手剣レベル1

縦斬り、横斬り


土魔法レベル3

ストーンショット、ストーンウォール、土槍、土人形、槍臥間




 弟のジェットが一番最初に覚えた勉強関係のスキル「綺麗な字」そして計算関係やら、文学関係やらを覚え、絵やもの作りに果てはなぜだか鍋作りのスキルまで覚えた。

 天才丸出しだ。顔よし頭よし血筋よしのパーフェクト王子だ。

 そして弟が一番最初に覚えたスキルを今になって兄がやっと覚えた。


 もうね。いたたまれない。

 なにこの兄弟格差。

 ブーちゃんがコンプレックスを感じない強靭で独特な精神の持ち主で本当によかった。

 まあ何はともあれ、これでなんとか安田さんの面目を保てる。


「……縦と横っていうのはなんだったんですか?」


 東くんが聞いてくる。


「うん、次の目的地っていうか、次はどこに行こうかって思ってて、この際世界一周コースはどうだろうって思ってね」


「……で?何が縦と横なんですか?」


「いやだから、縦に世界一周するか、横に世界一周するか」


「「「ええっ!?」」」


 パーティーメンバーみんなびっくり。


「安田くん、縦に世界一周なんて聞いたこと無いよっ、普通東周りか西周りじゃないの?なにそれ、南極行った後北極行くってこと!?」


「そうよ。結構過酷な旅路よ」


「そうよ。じゃないよ、えー、うーん。えー?なんで僕さっき縦って言ったんだろ?」


「まあ、中々楽しそうだな。私は賛成だ龍臣」


「我々カワウソは先生について行くのみです」


 吸血鬼の姉ちゃんとカワウソ達は賛成してくれたようだ。


「まあ、安田さんの奇行は今に始まったことじゃないですしね」

「うん、まあそうだねえ、……おかしな行動には定評がある安田くんだしねえ」


 よし、俺はなんか納得いかないが、鈴木さんと東くんも納得してくれたらしい。


「え、先生、出てくの?」

「余、余は認めないぞっ」


 お、話を横で聞いてた王子二人がなにやら焦った感じで話に入ってきた。

 おいおい、泣きそうな顔するなよ。

 て言うかあれだからね。


「お前らも出てくんだぞ」


「「え?」」


「なんか世界中の王族が集まる学校あるんだろ?お前らもそこに入学するらしいぞ」


「ああ、なんかそんな話聞いたね」


 鈴木さんはこの世界にある世界中の王族が集まるという珍妙な学校の存在を覚えてたらしい。


「うん、ブーちゃん達の親のヒゲ王様がそろそろ入学させたいからってこの間から色々用意してたのよ。あとは教師である俺のゴーサイン待ちだったのよね」


「余たち聞いてないけど!?」


 うん、そりゃあ今言ったからね。

 というわけで旅立ちの時です。










 そして次の日の朝。


「安田殿、あまりに急すぎるだろう」

「本当ざますよ」

「ねえ、近々だとは思ってましたけど昨日の今日でねえ」


 ヒゲ王とざます王妃と角王妃の二人の王子の両親が見送りに来てくれた。


「安田様、お元気で、我ら騎士団は安田様達とした冒険を忘れません」

「「「元気での」」」

「救い主様をお救いいただいたご恩、我々蟻族は永遠に忘れません」

「安田様、唯川様、向田様、娘と妻を救ってくださったご恩。決して忘れません。私になにかできることがあればなんでもおっしゃってください」


 他にも一緒に向田さんの国に乗り込んだ騎士団やら向田さんのメダカや蟻、あとオッサン魔王家族もいる。


「向田さん、まじで一緒に来なくていいの?」


「うん、ワシにはこの国の子達を見守るしごとがあるからね」


 おじいさん勇者の向田さんも見送りに来てくれている。

 またの名を鈴木さんの父親。


「義くん、また会おう。いつかまたこの国には来るんだろう?」


「……ええ、向田さんもお元気で」


 複雑な二人が別れの挨拶をしている。

 鈴木さんは向田さんが自分の父親だとうすうす勘づいているが結局最後まではっきりさせることはなかったな。

 なんかよくわかんないが大人だわー。


「先生、行ったらダメだ。余は次期王様なんだから、行ったらダメ。命令だから」

「そうだよ。行ったらダメ」


 ああ、王子二人がまた泣き出した。

 急遽出発を決めて王子二人が騒ぐの色々ごまかそうと思ったが結局失敗だわ。

 この二人は昨日の夜から行くな行くなと泣きっぱなしだ。


「俺はブーちゃんとジェットの先生で二人より偉いから命令は却下。それに二人も近々学校行くんだろ?そうしたら会いに行くよ。泣くなよ」


 この二人も数日中にこの国を出る予定らしい。


「ふぐ、ぶええ」

「うええぇ」


 あー、二人がまた泣き出した。

 俺は目線でざます王妃と角王妃に子供二人を任せる。


「安田殿、ではこれを」


 ヒゲ王が手紙を渡してきた。

 南から世界一周することになったので、ナピーナップから南にあるヒゲ王様の後輩の国に行くことになったのだ。

 別名オッサン魔王を産み出しかけた国だ。

 ちなみにこの手紙は後輩の王様に対する俺達の紹介状の役割がある。

 近々ヒゲ王が直々に後輩の王様をけつバットしに行くとも書かれているので地獄への招待状の役割もある。


「どうも、じゃあみんな元気で」


「ぎゃああああ、だめーっ、行っちゃだめーっ」

「うわああああーんっ」


 暴れる二人の息子をざます王妃と角王妃が苦笑しながら抱きしめておさえてる。


 仲間たちみんながそれぞれ別れをしてから飛行船に乗り込む。

 さて、じゃあ俺も。


 空を飛ぶにつれて、だんだんナピーナップのみんなの姿が小さくなる。


「あれっ!?先生っ、そんな感じで行くの!?」


 ブーちゃんがおかしなことを言っている。



挿絵(By みてみん)



 いや言ってない。

 あれ?なにこれ?

 空は飛んでるがまだ俺は飛行船に乗ってない。

 別れの感情でぼうっとしてたがおかしい。

 なんで光に包まれて浮いてんだ。

 なんか「じゃあ僕たちは自分の星に帰るよ」みたいな感じになってる。

 いやいや普通に飛行船に乗って行く予定だから。


「龍臣、なんだこれは?」


 隣にいる京も一緒に浮いてる。こいつなんでこんな落ち着いてんだ?

 京の他にも近くにいたカワウソ四人娘も浮いてる。

 まんじゅうは?あ、腰にくっついてるわ。

 ていうかこれ何よ?


 ウルトラ鑑定。


鑑定結果


安田たちが勇者召喚されました。






 ……マジでか……。


3章明日から始まります。

夕方5時辺りに新作として投稿します。

読んでいただければ嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  一昨日このシリーズを見つけて一気に呼んでました。  大変面白かったです。
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