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第二章 16話 ユニコーンの森。

 飛行船が世界樹の南端辺りを飛んでいる。

 もうすぐユニコーンの森らしい。

 しかし木の上にある森ってなんなんだろうね。

 んん?ああ、あの辺がそうなのかな?

 普通に木の上に木が生えてるな。


場所名 ユニコーンの森


説明


ユニコーンと呼ばれる珍獣がいる森。

ユニコーンは魔法を使える知性の高い生き物。

妙齢の女性からはものすごく嫌われている。



 珍獣?

 そんな感じだったっけか?

 なんか乙女しか乗せないとかそんなんだった気がするが。

 ものすごく嫌われている……?何がそんなに?


「先生っ、あれを」


 ん?ピンタさんが窓から外を指差してなんか促してる。


 ……んん?ああ、指差した方向に飛行船が飛んでるわ。

 二機飛んでる。

 あれ?片っ方の飛行船は王都に戻ってった騎士団の飛行船だな。

 んん?なんかあったんだろうか?


鑑定結果


騎士団の飛行船と王族の飛行船です。

騎士団の報告を受けた王族達が乗っています。

話を聞いて国を救ってくれた安田達にお礼を言いに来ました。

あと世界樹を与えこの国を創った向田さんのことも聞き、向田さんを王都に呼び寄せるような形にしてはいけないと、王族自らが向田さんの元に向かおうとしていますが、どうすればいいのかわからないのでとりあえず安田達に会いに来ました。

ヒゲ王様とザマス王妃と角王妃が三人とも乗っています。



「ああ、王族が来たみたいだわ、ザマス王妃と角王妃もいるみたいだぞ」


「え!?母上が来たの!?」

「やったーっ」


 王子二人のテンションが分かりやすく上がったな。

 子供らしくてよろしい。


「向田のじい様関連か?」


 京が大体正解の予測をしている。


「あと俺達にお礼がしたいそうだ」


「お礼ですか?ああ、向田さん助けたあれ関連の」


「ああ、そういえばなんか爆発?するとかって話だったもんね」


 東くんと鈴木さんがざっくりしたこと言ってる。

 爆発ってなによ。

 正確には封印されてる毒電波が放出されるんだよ。

 ……あんま変わんねえな。

 封印された毒電波ってなによ。


 ユニコーンの森が見える場所に飛行船を降ろす。

 王様達の飛行船も近くに降りてくる。


「母上」

「母上っ」


 飛行船から降りた途端に王子二人が向こうの飛行船に走り出す。


「バイサクっ、ちゃんとやってたざますか?」

「ジェット、元気でしたか?」


 向こうの飛行船から降りて来た騎士団やらの中にいたザマス王妃と角王妃に二人が飛び付く。

 角王妃さんはすごく降りづらそうに降りてきた。

 角が邪魔なんだな。

 あとザマスおばさんは相変わらずドレスだから意地悪おばさんのままだ。

 ただしドレスに眼鏡だけじゃなく背中にでっかいギンギラギンの大剣を背負っている。

 背中だけ勇者だわ。


「バイサク、なんざますその格好は?」


 ざますおばさんがブーちゃんの格好に反応した。

 まあ、自分の息子が数日の間に金太郎に転生してたからな。


「先生に貰ったんだ」


「あら?ジェット、その落書きはなあに?おでこの目が光ってるわよ」


「魔法の勉強中なんだっ」


 弟くんはまた魔法の修行でおでこに目を書いてたらしい。

 そしてまた光ってたようだ。

 息子のおでこに書いた目が光ってるのにものすごい落ち着きようだ。

 頭が角になってる母ちゃんは懐の深さが違うな。


「安田殿」


「どうも王様」


 騎士団に守られたヒゲ王様がこっちに来た。

 相変わらず立派なヒゲがくるんってしてる。

 この人はこの人で氷のブレスを吐けるようになっちゃってるからな。

 もはや妖怪ヒゲクルンと言っても過言ではない。


 頭が角の女性がいたり背中にでっかい剣つけた眼鏡のおばさんがいたり金太郎がいたり、おでこの落書きが光ってたり。

 もうこの家族のビジュアルが混沌の坩堝るつぼ


「安田殿、そして東殿、鈴木殿、唯川殿、我が国を救ってくださったようで、心より感謝をしている」


「いいえー、どういたしましてー」


 なんかお礼を言われるおばちゃんみたいな感じになっちまった。


「僕らはあまり自覚ないですけど」

「被害がなくてよかったです」

「うむ、相変わらずヒゲがくるんとしとるな」


 仲間の勇者勢も口々に礼を返している。

 いや、吸血鬼の女王が一人だけヒゲの感想を口にしている。

 思ってても口に出すなよ。


「して、安田殿、実はな……」


 ヒゲを気にしたのか、ヒゲ触りながら王様が何かを言い出そうとしている。


「向田さんに会いに行きたいんでしょ?いいですよ、仲をとり持ちましょう」


「おおそうかっ、安田殿は話が早くて助かる。して神話でしか知らんのだが、救い主様はどんな方なのだ?」


 向田さんの話になると王族はみんなこっちに注目し始めた。


「父上、向田のじい様は普通のおじいちゃんだったぞ、なあジェット?」


「うん、僕はお菓子を貰ったんだよ」


「バイサク様、ジェット様、向田様はこの国を作った方なのですからせめて救い主様とお呼びください」


 騎士団の隊長が王子二人をたしなめる。


「じい様がじい様でいいって言ったんだ。なあジェット」


「うん」


「そ、そうなのか、バイサク、ジェット、そうか普通のおじいちゃんか、安田殿、どうなのであろうか?」


「……気のいい普通のおじいちゃんですよ。そんなに気負わなくても大丈夫でしょう」


「う、うむ、そうか」


 王様が少しホッとしてる。

 すまん王様、気のいいじいちゃんなのは確かなんだが普通って言うのは真っ赤な嘘だ。

 向田さんは潜伏中のスパイだ。

 全然普通ではない。


「じゃあ、せっかくここまで来ちゃったんでとりあえずユニコーンの森で無花果石ってのを取ってきて、その後で向田さんとこ行く感じで大丈夫ですか?」


「うむ、それで構わない。感謝する」


 よし、じゃあいよいよユニコーンの森に行くかね。




 というわけで早速ユニコーンの森に出発することになった。

 メンバーは安田さんパーティーのほとんどと王子二人と護衛の騎士団、勇者勢は全員出席、カワウソもほとん出席だが、カワウソ大人組の女性陣は欠席だった。


「ユニコーンは嫌」


 とカワウソのお母さん達に言われた。

 ユニコーン……謎が深まるばかりだ。

 結局大人の女性は京だけ出席ってことになる。


 じゃあ、早速出発。


「ユニコーンか、清廉な乙女しか背に乗せない神獣というやつか。面白い、乗せて貰おうじゃないか」


 ただの森に見えるユニコーンの森を歩きながら、吸血鬼の女王様がなにやら意気込んでいるが、こいつの女子力は2しかない。

 なぜこんなに自信満々で乗ろうとしているんだろう?


 同行している騎士達が背に乗る?みたいなことをボソボソ言ってる気がする。

 うんまあこの子は乗れないでしょうね。


「先生っ、ユニコーンですっ」


 ピンタさんがユニコーンを発見したらしい。



挿絵(By みてみん)



「……私が思ってたのと違うな」


 京がユニコーンの感想を口にする。

 俺が思ってたのとも違う。

 ユニコーン感は無くはないが、……チェス感が強い。

 ……チェス感って何?

 いやでもチェス感としか表現しようがないわこれは。

 ああ、だから騎士達が背に乗ることに疑問を感じてたのか。

 これどこが背中?


「さあ、ユニコーン達よ、私を背に乗せるのだ」


 あ、吸血鬼の女王様がいったっ。

 なんか両手を広げてユニコーンに近づいて行った。

 すごい、どう考えても背中も無ければ乗れもしないのに初志貫徹の強靭な決意。

 さすが女王様だ。


「処女しか認めねえからっ」

「処女しか認めねえからっ」


 ――っ!?

 ―――ええっ!?

 何あれ鳴き声!?ユニコーンの鳴き声!?

 何てこった……なんであんな微妙にどっかがざわつきそうな鳴き声なんだ。


 ドンッ。


 あ、吸血鬼の女王様が肩を小突かれた。


「処女しか認めねえからっ」


 ドンッ。

 また小突かれた。


「……私は龍臣以外の男に肌を許したことはないっ、処女だった期間二千年だぞっ、そこいらの処女よりよっぽど処女だっ!!!!」


 すごいでっかい声で言わなくていいことを宣言してる気がするが、もうなにも聞こえないし顔を両手で覆ってるので何も見えません。


「処女しか認めねえからっ」

「処女しか認めねえからっ」

「処女しか認めねえからっ」


 ドンッ、ドンッ、ドンッ。


「……なんだこのチェスがーっ!!」


 ドオーンっ!!


「ああっ、唯川様いけませんっ、ドロップキックはいけませんっ」


 騎士団の騎士達がユニコーンにドロップキックしたらしい京のことを咎めたことはわかった。

 両手で顔を覆っているから何も見えないが。


 次に顔を覆う両手を離した時には吸血鬼の女王様は頭に立派な角の被り物を被っていた。


 ……なるほど、カワウソのお母さん達が来なかった理由がわかったな。

 どうやらユニコーンは生娘以外の女性には敵意を剥き出しにしてくるらしい。

 角王妃様もユニコーンに小突かれてひっぱたいたんだそうだ。

 そして呪われたんだな。


 ていうか立派な角はあるくせに手でドンッて小突いてくるってなんなんだよ。

 なにそれ攻撃なの?生き物の角ってなんのためについてるの?

 謎過ぎるわユニコーン。




鑑定結果


もう少し奥にいったら無花果石がたくさんあります。



 なにかドタバタ騒ぎがあったが、気を取り直して森の探索を再開して石をさがす。


「もう少し奥に行ったらあるってさ」


「はっ」


 ピンタさんや騎士達の返事がユニコーンの森に響く。


「変な動き方だー」

「行け、ユニコーン、行けっ余を運ぶのだ」

「キャッキャッ」


 ユニコーンがカワウソ子供組やら王子二人を背中だか後ろにへばりつかせて遊んでいる。

 なにやらユニコーンは子供には優しいらしい。


 あとユニコーンは東くんとそのパーティーにやたらなついてる。

 東くんに乙女のチャクラでも感じ取ったんだろうか?


 京がそれら遠目に見ながら不機嫌そうな顔をして歩いている。

 ……あれ?


「お前被り物は?」


 京の被り物がいつの間にやら無くなってる。


「呪術は私の専門だ。あんな呪い効かない」


 ああ、そうですか。

 不機嫌そうだから少しほっとこう。


「先生、無花果石というのはどれでしょう?」


 ピンタさんが無花果石について聞いてくる。



アイテム名 無花果石


分類    素材

レア度   C-

価格相場  200000G~250000G


効果及び説明


目の前にある赤茶けた大きめの丸い石がそれ。

世界樹の無花果の実が石化した物。

削って使えば下級回復薬の材料にもなる。

粉にして振りまけばユニコーンの魔力を無効化する。

普通の場合世界樹の無花果の実は魔力になって拡散し世界樹に魔物を近づけない結界のエネルギーになるのだが、ユニコーンの森に落ちてくる実は魔力が拡散した後もユニコーンの魔力で保存され形が残る。



「これみたいだわ、わりと沢山あんな」


 見る限り、そこら辺に落ちてる。

 ただの石にしか見えないな。


「え?この赤茶けた石がですか?」


 騎士団の隊長が聞いてくるので、頷いて肯定する。


「下級回復薬の材料になるらしいからいくつか持ってったら?」


 回復薬の材料になると聞いた騎士達が石をいくつか取って行くことにしたらしい。

 よし、これでユニコーンの森はクリアだ。


 俺の羞恥心のほとばしりを考えると、次にもし来ることがあっても京は連れて来ないって決意だけはしておこう。

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