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第二章 1話 世界樹のある南の島、またの名をただのリゾート地。

明けましておめでとうございます。

ちょっと復活してみました。

 こんにちわ、安田龍臣です。

 異世界にふっとばされてから、動く宝箱やらカワウソやら太ったおじさんやら鬼みたいな顔をしてるのに精神は乙女の心がぐらぐらしている十代青年やらを仲間にして、頭のおかしな王子をぶっとばしたりなんやかんやあってから数日経ちました。


 今はパーティメンバーのみんなとナピーナップ諸島という所に来ています。


挿絵(By みてみん)


「リゾートだねえ、鈴木さん」


「そうだねえ、僕こんなの生まれてはじめてやってるよ。サングラスもほぼはじめてかけたよ。なんかはっちゃけちゃった人に見えてないかな?」


 ふくよかなおじさん勇者こと鈴木さんが、なにやら妙な心配をしているようだ。


「見えてるよ。リゾート地の海辺でデッキチェアで寝ながらジュース飲んでんだから、俺たちは純度100パーセントのはっちゃけちゃった人でしかないよ」


「まあ、そうだね」


 しょうがない。

 俺たちはリゾート地の空気に飲まれてしまったんだよ。


 鬼みたいな顔してる勇者東くんはパーティメンバーと海でテンション上がってはしゃぎまくってるし。

 四十過ぎてるのにかわいい顔したおじさんカワウソことピンタさんを先頭にカワウソ達は何やら野生に目覚めるのかなんなのか海に潜っては魚やら海老やらを山ほど取ってるし。

 みんなはっちゃけっぷりが天井知らずだ。


 動く宝箱こと宝箱ミミックのまんじゅうはぎんぎんの紫外線の中で日向ぼっこしている。

 ……こいつ光合成でもできるんだろうか? 


 海の向こうには何やらでかい木のような物が見える。

 あれがナピーナップ諸島にある世界樹のようだ。

 ウルトラ鑑定するとこうなる。


挿絵(By みてみん)


場所名 ナピーナップ諸島


説明


赤道付近にある世界樹を有している群島国家、世界的に有名なリゾート地として色々な国から人がやってくる。


余談


群島国家と言われているが、ナピーナップ諸島の中心にある世界樹の木の根の上に土が溜まってできた島のため、島といっていいのか微妙。

ちなみにあの世界樹は23540年前におじいちゃん勇者向田(当時83歳)と共にこの世界に転移してきた家の庭にあったいちじくの木。

悪の巨人襲来時にもいちじくバリアで悪の巨人から出る電磁波を緩和して多くの人命を救った。

当時の記録は神話として語り継がれ、世界樹を信仰する文化として残っている。



 俺たちは向田さん家のいちじくの木の根っこの上にいるらしい。

 ……いちじくバリアってなんだべ。


「どうしたの安田君、変な顔して」


「いやあ、あの世界樹って向田さんって人ん家のいちじくの木なんだなあ、て思って」


「え!?向田さんって言った!?その人おじいちゃん!?」


 お?まさかのニアミスか?鈴木さんの知り合いなのか?


「そう、おじいちゃん勇者向田って呼ばれてるみたいよ。まさかの知り合い?」


「うん、家の向かいに一人で住んでたおじいちゃんだよ。僕子供の時にそのいちじくもらったことあるわ。マッサージ師だったはず」


 まじかよ。

 そういやこの世界に転移してくるのってみんな同じ町内とか近所から転移してくるんだったっけか。

 2万年前の勇者が鈴木さん家の近所のマッサージ師だという衝撃の事実。


「……はあ、あのいちじくの木がねえ、うちの母さんが道通るときに邪魔なのよね、とかぼやいてたあのいちじくの木が、あんなに大きくなって」


 鈴木さんが感慨深い表情で変な台詞を呟いてる。

 壮大な会話なんだか、ジモティーな会話なんだかワケわからんな。


「先生っ沢山とれましたぞ、昼食にしましょうっ」


 ピンタさんがでっかい海老を持ち上げながら昼食に誘ってくる。

 あ、カワウソ達はみんなでっかい海老を持ってるようだ。

 潜ってとってきたんだろうか、さすがカワウソだな。

 ……ていうかカワウソって海水でも大丈夫なんだろうか。

 しかし海老でかいなあ。

 俺の上半身くらいのでかさの海老だわ。

 これはあれだな。

 みんなが意識の底に沈めている、海老ってよく見たら足が沢山あって気持ち悪い虫なんじゃね?ていう誰しもが心に抱えている闇が顔を出しそうになるな。


 とかなんとかつまんないこと考えながら、バーベキューにして食った。

 結局海老はぶりんぶりんで超旨かった。

 カワウソ達も好物なのか殼ごとバリバリいってた。

 なかなか野性を感じる食べ方だったわ。


「では先生、いよいよ世界樹に行かれますか?この国の王族の方々にも挨拶に行かねばなりませんし」


「うん、じゃあ行きますかね」


 どうやら王様だかに挨拶に行かねばならんらしいからな。

 サイカ国で、魔導通信っていう都市に一つ位ある電話みたいのでこの国に勇者が行くと連絡入れてたらしい。

 王族だのなんだののあたりは俺たちより先に異世界に来て色々慣れてるであろう東くんに任せよう。


「東くん、出発するってーっ!!」


「あ、はーいっ」


 鈴木さんの呼び声で早々に昼食を食べ終わり、また泳いでた東くんが返事をする。

 ……東くんずっとバタフライしてたな。

 なんでだろう。なんでバタフライだったんだろう。


 まあ、何はともあれ世界樹に出発だ。


「ようし、みんな飛行船に乗り込めー」


 ピンタさんの号令でみんなが荷物を持って飛行船に集まり出す。


 その時、急に空が明るくなった。


「何!?」

「なんじゃ!?」

「!?」


 急な事態に俺も仲間達もみんなびっくりだ。

 何やら空に光が集まってキラキラしている。

 ……なんだあれ?光の輪っか?

 キラキラしてる光の粒が輪っかの形に宙に浮いてる。

 すげえでかい。半径二、三百メートルはありそうだ。


「安田くん、鑑定」


 あ、そうか。ぼうっとしちまってた。

 鈴木さんの忠告ではっとさせられた。

 俺のこの世界来てから得たよく分からない大概の事がなんでもわかる鑑定能力をご所望らしい。


「え~と、眼鏡、眼鏡」


 まさか目が悪くない俺が、あの伝説の台詞をリアルに吐くことになるなんて……。


 おおう、鑑定眼鏡がない、魔法の袋に入れちまってたっけ?

 あれー、どの袋だっけな?

 バーベキューで色んな物入れた袋が沢山あるからわからん。


「ちょっと安田くん何やってるの?眼鏡無くても鑑定ってできるんでしょ!?」


 鈴木さんの檄が飛ぶ。


「俺はあのアホ丸出しのポーズは人前では二度としないって魂に誓った」


 どんなに切羽つまってもやらない覚悟なり。


「ええ!?何をたんたんと……、そんなこと言ってる場合なのこれ」


「多分大丈夫、まんじゅうがなんか落ち着いてるから、危なかったら野性の勘を発揮した戦闘種族まんじゅうが慌ててるはず」


 まんじゅうは空を見上げながらストローでジュースをチュウチュウしてる。多分大丈夫。


「……ええー、本当?」


 ……あ、眼鏡部屋の中かもしんない。

 テーブルの上に置きっぱかもしんない。

 うっすらとした記憶の片隅が主張してきた。


 ……ん?

 光の輪がやたらキラキラし出した。光量が上がってる。


「なんなんですあれは?」

「何だあれ、ヤスダ早く鑑定しろ」

「安田さん、あれ何なんですか?早く鑑定して下さいよっ」


 東くん若者パーティが急かしてくる。

 でも俺は眼鏡を部屋に置き忘れたことを思い出したので、この場では絶対鑑定しません。

 すっとぼけて、目の前の光景に夢中でなにも聞こえてない安田、のふりさせていただきます。


「何か、出てくる?」

「何?足?」

「足だ、銀色の足」


 光の輪から、足、膝、腰、胸、頭と銀色のでかい人型の何かが出てきた。

 ていうか、銀色に赤いライン入った巨人が……。


「……安田くん、あれは」

「安田さん」


 鈴木さんと東くんは、もう気づいたらしい。

 うんまあ、日本人なら、大概知ってるやつだわな。


挿絵(By みてみん)


「……女性型だから珍しい方だな」


「安田くん、たとえ男性型でも多分凄く珍しいよ」


 安田パーティーの前に超有名なヒーローっぽい銀色の巨人が現れた。

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