1
【1】
覆面で顔を隠し、自動小銃を装備した集団による立て篭り事件は、発生してから丸一日が経とうとしていた。
研究施設の一室に固まり、数人の研究員を人質に取っている。
「武装集団の所属、詳細は不明。先程の発砲で、研究員一名が負傷」
警視庁特殊部隊の特殊急襲部隊SATが、突入のタイミングを伺っている。
細長い蛇のようなカメラを内部に忍び込ませて、中の様子を確認。銃器を構えて指示を待つ。
中では、研究員一名が足を抑えてもがき苦しんでおり、他の研究員が脅されながら何かの装置を動かしている。
……と、装置から煙りが噴き出した!
「おい、何をした!」
怒鳴る敵に研究員が、訳が分からん奴らにこれは渡せんと言って反抗。
敵集団が慌てる。
「此処で起動するとまずいぞ!」
「始末しろ!」
すると、研究員達に向けて一斉射撃を行った。が、しかし、煙りが邪魔して避けられてしまう。
銃声を聞いたSATが突入を開始!
室内にスタングレネードが投げ込まれ、白い光が周囲の視界を奪い、音を掻き消した。
次の瞬間! 研究施設が爆発。
建物が真っ赤な炎に包まれ、外に巨大な衝撃波が広がる。
透明な波が街を歩いていた男に当たれば、彼が手を突いた壁に罅を入れる。
彼は驚いた。そんなに力はないと、手と罅を交互に見つめる。不思議にも何か、恐怖した。
他にも、道端で足を擦りむいたばかりの女性にも当たり、彼女が痛みに反射して傷口を抑えれば、直ぐに傷が消えた。
波は、力を与えると薄れた。