royal battle royal⑥
俺は階段を必死に駆け上がった。下の階で戦うシンシア、グレイシー、ジャックの心配もよそに。
俺の心の中はアイラのことだけで埋まっていた。
階段を駆け上がると、屋上には教会のような建物が建っていた。俺はすぐにそこへ走って行き、教会の扉を開く。
ちょうど着飾ったロザリオが白いウエディングドレスを着たアイラに誓いのキスをしようとしているところだった。俺はバンと強く扉を開けると、言った。
「悪いがその結婚、認めるわけにはいかねぇなぁ」
俺のセリフにロザリオは顔を歪めてこちらを見た。
「どうやらネズミが一匹入り込んでしまったようですね。こうして誰の邪魔立てもなく結婚式を行おうとしていたところなのに」
「ウルセェ。お前がしようとしているのは結婚式じゃねぇ。アイラの意思を無視すんな!」
ロザリオは、品定めをするように俺を見た。長髪が鬱陶しい。気取ったメガネも、何もかもが気にくわない。
「ほう。ならあなたはアイラさんの何だと言うんです?」
ロザリオは聞いた。
アイラは虚ろな目で俺を見た。意識はあるようだ。
なら、俺の言葉でぶん殴って目を覚まさせてやるぜ。見てろ。
「俺か? 俺はアイラの……伴侶だよ! 将来のな!」
ロザリオは顔を歪ませ、「何を馬鹿なことを」と呟いた。
ほぼ同時にアイラの目に光が戻る。
「ははははは伴侶!? 私がアキヤマさんのはははは伴侶なのです!?」
アイラは顔を真っ赤にしてすっとんきょうな声を上げた。俺はその様子を見て状況を忘れ、思わず笑った。そして返事をしてやる。
「待ってろ。今助けてやるから」
そう言うとアイラはいつもの調子を取り戻し、ロザリオと俺を交互に見た。
「ああ……そういうことですか。ご迷惑をおかけします。お願いしますよ、アキヤマさん」
そう言って彼女は笑った。誰よりも可憐な笑顔で。
「調子に乗って! 私が直々に相手をしてあげることにしましょう」
俺とアイラがイチャこいている間に、ロザリオの怒りは頂点に達したようだった。
「ここじゃあ狭いな。外に出るか」
「ええ。構いませんとも」
俺たちは同意の上、教会から出て、屋上の広間に戻った。広間で俺とロザリオは向かい合った。ロザリオの後ろ、教会のすぐ前にはアイラが心配そうな目で俺を見ている。ロザリオはローブをはためかせて言う。
「あなた、アキヤマとか言いましたか?」
「ああ、そうだが?」
ロザリオはふんと鼻を鳴らした。そして言う。
「魔導学園で大暴れしたと言う噂は耳にしています。ですが、ダンテを倒したぐらいで調子に乗られては困ります。アレは魔法教会のつまはじき者。魔法教会とは何の関係もない人物なんですから。だから私は魔導学園の校長は魔法教会の者にしろとあれほど……」
「あー、えと」
「とにかく。調子に乗ってこんなところまでやって来て。私の邪魔をするなんて。ふざけるにもほどがあります。……ですが。そうですね。もし、魔法教会に入信するつもりがあるのなら、見逃してあげても構いません。ダンテを退けた実力があるなら幹部への道も夢ではありませんよ」
ロザリオは金属縁の丸い眼鏡をクイッと押し上げた。
「俺の答えは一つ。『お断り』だ。そんなものに興味はないんでね」
「愚かですねぇ。実に愚かだ。魔法教会を敵に回すということは、『世界』を敵に回すということです。それがわかって言っているのですか? 魔導学園とは状況が違うことをわかっているのですか?」
アイラは顔を青くして叫んだ。
「アキヤマさん! やっぱり帰ってください! 魔法教会と正面切ってあらそうとなればアキヤマさんもただでは済まないのです!」
そうは言うが、猫耳が不安そうにうなだれている。そんな悲しそうな表情をしてちゃせっかくのウエディングドレスが台無しだ。
ま、そう心配するなって。
俺は高らかに宣言する。
「誰が何と言おうと俺の答えは一つ。『お断り』だ。ふざけているのはそっちの方だ。アイラが嫌がっているのに結婚しようとしている時点でお前のやっていることには筋が通っちゃいねぇ。魔法教会? 世界が敵? 知ったこっちゃねぇんだよ。こちとらこの世界のことなんざ知ったこっちゃねぇんだ。無駄にしようとしたこの命。使って娘の命一つ救えねぇでどうすんだ」
俺が言い切ると、ロザリオは額に青筋を浮かべて丸い眼鏡を外し胸ポケットに入れた。
「なるほど。死にたいと言うことで間違いないようです。他の人の手を煩わせる必要はない。私が直々に処分してしまいましょう」
「いいぜ。それがわかりやすくっていい。俺が勝てば、アイラは返してもらう」
「ふん。世迷言を。私が今から行うのは、勝負でも戦いでもない。虐殺なのですよ」
ロザリオがポケットに手を入れた瞬間、俺たちの戦いは始まった。




