royal battle royal⑤
「アキヤマは行ったようだな」
ジャックはもうガハハとは笑わなかった。ジャックは目の前の少年を見つめると言う。
「損な役回りだぜ。でも、これも悲願を達成するため。罪のない少年を一人ぶった切るぐらい。今更何てことないわな」
「キャハハ? ボクをキルって? 面白いことを言うおじさんだなぁ?」
アリスはケタケタと笑って言った。
「ああ、まだ意識があるのか。偉いもんだ。でもな。ボウズ。悪いが容赦はしない。アキヤマを信用しないわけじゃないが、今のアキヤマがロザリオに勝てるとも思えん。ロザリオの好き勝手に動かれるのは俺としても困るんでな」
ジャックの言葉をアリスは完全に理解していないようだった。
「ロザリオ……? ドウデモイイ。ボクはおじさんを殺したいんだ。そうだ。おじさんはそんな武器を使うんだ。ならボクもそんな武器を使おう。ミラージュ」
アリスが唱えたショートカット魔法で、みるみるうちにアリスの体はジャックのそれと同じ形になっていく。そして次の瞬間には、全く同じ大剣を握ったジャックの姿をしたアリスがそこにいた。
筋肉隆々の体で露出が激しく、紋章が浮き出ているのは痛々しいが。
「さ、殺し会おうヨぉ!?」
アリスはジャックに向かって駆け出した。
「同じ形になったからって筋力まで同じにはならんだろう!」
ジャックはアリスを迎えうった。
アリスの振りかぶった大剣をジャックの大剣が受け止める。しかし、吹き飛ばされたのは、ジャックの方だった。
「何!?」
壁に衝突し、血を吐いたジャックを見てアリスは笑った。すでに彼の精神はここにはない。
「くそ。あの紋章は身体能力もこんなに上げんのかよ。ガハハ。俺より力の強い大剣使いだとぉ? ……燃えるじゃねぇか」
ジャックは大剣を持って立ち上がった。アリスの身に何が起こっているのか分からなくとも、ジャックには負けられない理由があった。
彼自身の望みのために、彼の仲間の望みのために、彼は一度たりとも負けられないのだ。負けたらそこで、紅蓮の牙は立ち止まってしまう。路頭に迷ってしまう。
ジャックとアリスは何回も何回も剣を重ねあった。
優勢なのは相変わらずアリスだったが、ジャックも粘っていた。力は魔法で底上げしているアリスが完全に上回っていた。
「おかしい……。魔法による身体能力の向上はこんなに長時間続くもんじゃないぞ。どうなってやがる。あのボウズ」
ジャックは言ったが、その通り。以前アリスが使った身体能力の向上の魔法は一瞬のものだった。しかし、アリスはすでに10分以上底上げしたままだ。
かつてよりは向上度合いは少なくなっているが。それでも以上な効果時間だった。
「お前。何もんだ?」
「ボクはアリス。ただの可愛い男の子だよ? さぁ。まだまだ殺し合おう」
「キチガイが」
ジャックは初めて顔を歪ませて、そして剣の柄に刻まれた魔法陣が光り出した。
「悪いが、手加減はしてる余裕がないんでな。一気に殺させてもらう」
ジャックはアリスに向かって走り出した。剣は以前として光ったままだが、何も起こってはいない。
ジャックはそのまま大剣を振りかざして、アリスに向かって振り下ろした。当然それをアリスは大剣で受け止めようとした。
が、次の瞬間。アリスの体は後ろから横方向に真っ二つに切り裂かれていた。
アリスが受け止めようとしたところには誰もいない。ジャックは魔法を使ったのだ。紅蓮の牙は魔法を使えないものの集まりだ、そうアリスは認識していた。戦闘に必要な情報だけは残ったままだったのが不幸だったのだ。
「悪いな。ボウズの事情には踏み込めなくてよ」
そう言い残すと、ジャックはアキヤマを追って上の階へと向かおうと踵を返した。
――しかし。
「何で? まだボクは終わってないよ」
アリスは上半身だけの体で言った。
かと思えば、アリスは上半身だけになった体で下半身を持ち、自分の上半身につなぎ合わせた。ぐちゃぐちゃと気持ちの悪い音がして、みるみるうちにアリスの体は繋がってしまった。
「おいおい。ボウズ。もう一度聞くが、お前何もんだ?」
「キャハハハハハハ! ボクはただの人形。魔法教会のおもちゃさ」
アリスは立ち上がり、またけろっとした顔で言う。
「さぁ。まだまだ遊ぼうよ、おじさん」




