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magi code  作者: ロジカル和菓子
3章 魔道学園、スクオラ編
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負け犬の矜持③

 決死の覚悟でキメラ合成の機器破壊作戦に打って出ようとする夜……になる前。俺は一人、サラの書いた魔法関係の本を読み漁っていた。それは俺とアイラが旅に出た時、勉強用にと何冊か渡してくれたものだった。


 しかし、その内容は難しかったり、時間がなかったりできちんと端から端まで読む余裕はなかったのだが、いまになって必要性を感じ読み直し始めたのだった。



【魔法の成り立ちと有効利用】著:サラ・アイバーン


『みなさん、ごきげんよう。私だ。天才美人魔女ことサラ・アイバーンだ。この本を読むようなレベルの読者諸君らのことだ。もちろん私の他の魔術書にも目を通して来てもらったことだろう。そしてこの本は魔法の基本知識はあるものと思って説明するものとする。』



 その本はそんな書き始めから始まっていた。なんだか懐かしいように感じる口調だ。しばらく会っていないと少し寂しさを感じてしまうような気がする(気がするだけだと思いたいが)。俺はサラが書いている他の本と同じく、口語の文体で書かれたその本を一心不乱に読みふけっていた。



『諸君らは魔法をいかにして展開するか、という点に関しては理解してくれていることだろう。今回は私が長年の研究の結果知り得た「魔法の根本」について解説したいと思う。


 魔法が魔法陣に書かれている魔法文の命令を一つ一つ実行することによって展開され、効力を発揮するということはみなさんご存知の通りである。しかし、それがどのように、なんの力を得て行われているのかについてはまだはっきりとはわかってはいない。


 ここで魔法を少しわかった気になっている諸君らは魔力が原動力になっているではないか、と口を揃えて反論して来ていることであろう。しかし、その考えは実に甘い。めちゃくちゃ甘い。腐りかけの果物ぐらい甘い。その反論にはこう返そうではないか。では魔力とはなんなのだ、と。

 残念ながら魔力の正体については私もまだ解明には至っていない。しかし魔力がなんらかの生命エネルギーを変換してできていることは明らかである。魔力を消費すると一般的に肉体的にしんどいものだ。それは諸君らもご存知の通りであろう。時に人は魔力を放出しすぎると死にいたることさえあるぐらいだ。


 ではその魔力を変換する魔法陣は一体なんなのか? 何が魔力を魔素に変換したり様々な事象を引き起こすのか。これについても残念ながら詳細についてはまだはっきりとはわかっていない。ただ、これも私の長年にわたる必死の研究によって少し解明の糸口が見えて来た。


 魔法文を理解するのは、紛れもない人間である(もちろんそれは獣人でも良いのだが)。そして人間が魔法文を理解するのに使っているのは、脳だ。


 脳で魔法文の意味を理解しなければ魔法は使えない。もちろん神代文字は皆に読めるはずもないのだが、魔法はプロセスを理解しないと使えない仕組みになっている。諸君らも私の教えに従って魔法を学んだのなら、それはきっちりかっちりと理解していることだろう。


 要するに私が言いたいのは魔法文を処理し、実行しているのは紛れも無い人間の脳だということだ。これは重要な事実であり、ノー○ル賞ものの発見だと思うのだが、このご時世、魔女の提唱する学説など見向きもされないだろう。よって諸君らに特別にこの知識を授けることにしたのである。』



 それはえらく偉ぶった上から目線のサラらしい文章だった。思わず途中でツッコミを入れたくなるような。というかこの世界にもノー○ル賞とかあるの!?俺はさらに読み進めた。



『諸君らはインクルードについてはもうだいぶん理解していることだろう。しかし、私は最近、特殊な魔法陣のインクルードを実験している。


 その一つは体の動き、ジェスチャーに合わせた魔法の発動だ。これは過去の遺産から得た魔法文なのだが、例えば私は指を鳴らすと物理魔法が発動するように登録している。


 これは動作と魔法を結びつける魔法陣が見つかったからできる芸当なのだが、簡単に言えば、指を鳴らすという動作をすると他の魔法を発動するようにセッティングしているのだ。


 未だ魔法文の解読が難航しているいま、インクルードによって加わる新たな機能については詳しく述べることはできない。しかし、新たに魔法を実行するためではない魔法陣をインクルードすることによって魔法が使いやすくなるだろうことにおいては、はっきりと断言しよう、明らかであると。魔法文の解読を期待しておいてくれたまえ。』



 それはこれまで読んだどの本よりも刺激的だった。インクルードの新たな使い方、脳での処理、今からでも利用できそうなことは少なそうだったが、好奇心が刺激される内容だった。しかし僕はさすがにすぐに役に立つ情報はないと諦めかけた、その時。前の世界で無能だった上司のクソみたいなセリフを思い出した。


「効率化ダァ? 新入りがふざけんなよぉ!? 俺の考えたプロセスのどこがダメだってんだぁ!?」


 効率化……


 そう、確かあの時は会社に入ってすぐのことだった。上司の考えた設計でプログラムを書かされていたころ、俺は自分の考えた設計でプログラムを組み直した。圧倒的に効率的に。そこから上司の嫌がらせの仕事振りが始まり、新人いびりが始まったんだ。


 でも今はそんなことはどうでもいい。効率化、という文字から僕の頭にはとある考えが浮かんだ。まずは、魔法文、長くないか? という問題だ。通常プログラムに使われるのはコマンドという英単語などを省略したものを使って描かれることが多い、というかそれは言語によって異なるのだが、魔法文についてもそれを応用できないか。と考えた。


 つまり、魔法文に出てくる単語を省略できないか、という話である。もし、それが可能になれば、長文で書かれた大魔法の魔法文も完結に、短くなり、インクルードにかかる容量も少なく済むのではないか。


 そして僕はとりあえず、サラの魔法単語を引っ張り出し、覚えのある単語を見つけ出して来て、いつも使っている単語のコマンドを決めることにした。


[1, register “charge”=“cg” “convert”=“cv” “magic power”=“MP” “fire”=“Fi” “water”=“Wa” “earth”=“Ea” “wind”=“Wi” “thunder”=“Th” , end]


 それは単なるコマンドの登録であったが、画期的な発明につながるような予感がした。そもそも魔法文は少しプログラミングに似ているところがあったのだ。脳をパソコンに見立てれば、プログラミングと似たようなことができるのかもしれない。


 しかし、今の状況を考えて、それ以上システムについて思考を凝らしている時間はなかった。とりあえず有用そうな魔法陣をかたっぱしから集めて、コマンドを使い魔法文を書き換えた。


 そして僕はまず先ほどのコマンドの登録をインクルードした。そしてその上でコマンドで書き換えた大量の魔法陣をインクルードし、体に刻みつけた。そしてその作業が終わると俺は一人寮を出て、ルシエラとアイラとの集合場所へと向かっていった。


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