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magi code  作者: ロジカル和菓子
3章 魔道学園、スクオラ編
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脱出DASH

 ハルトが戻って来てからは、荷物をまとめたことを気づかれないよう、布団の上でずっとゴロゴロして夜を待った。夜になると、二人が俺の部屋を訪れて来た。ノックの音が聞こえたので、部屋に招き入れる前に。ハルトを騙して部屋を出る段取りをつける。ちょうどよくハルトも昇級してAクラスになったようで。


「二人から昇級するお前にサプライズプレゼントがあるみたいだから。目隠ししていいか?」


「それ本当かよ!? 嬉しいぞおおおお!」


 ハルトは喜んで目隠しをつけてくれたので、荷物を布団の中から取り出して二人に合図して部屋を出る。ゆっくりと扉を開け、ハルトに別れの言葉を。


「それじゃ、1分数えたら目隠しを外していいからな? それまで準備があるから外しちゃダメだぞ?」


「おうよっ!!」


 心の中でサヨナラを告げ、部屋を出た。部屋を出てからは特に何事もなく学園の正門付近まで辿りつくことができた。しかし、正門を登って外に出ようとしたとき。


 バチィ!!!


 登ろうと正門にかけた手に衝撃が走った。


「いてぇ!! なんだこれ!?」


「これは……結界です。結界が張られているのです。それも一流の魔法陣で貼られた結界なのです」

 アイラは冷静に現状を分析した。


「なんで? 昨日まではこんな結界なかったじゃない?」


「そうだよ……なんで今日になっていきなり……」


 この学園に来てから生徒が外出するのは何度か見て来た。結界なんてものがまずあることにも驚きなのだが、それが、今、この状況で学園から出られないように張られているということは何を意味するのか。


「夜に外に出れないように張られたという可能性はあるのです。夜に外出する生徒は見たことがなかったので。でももし行動を読まれてのことだとすると……」

 アイラも俺と同じことを考えていたらしい。そう。行動を読まれているのだとしたらまずい。とりあえず学園に戻った方が良いだろう。


「いやな予感がする。とりあえず戻ろう。この結界? ってやつはどうしようもないんだろう?」


「今すぐどうこうできるものではないのです……そうですね。戻りましょう」

 アイラも同意し、ルシエラを見ても黙ってうなづいていたので、学園に戻ろうと校舎の方に向かおうとした時。


「やあやあ。みなさん。奇遇だね。こんな時間に。大きな荷物を持って。散歩かな☆」


 俺たちの前に都合よく、あるいは都合悪く登場したのはアリスだった。


「アリス……」

 苦虫を噛み潰したような顔でアリスを見ていると。


「まぁまあ、そんなに怖い顔をしないでよっ☆ 別にボクは君たちを咎めに来たわけじゃないから」


「「アリス……」どういうことだ?」


このタイミングで来て、咎めないとするならば、一体なにが目的だというのか。


「せっかくS+にまで上がって来たんだから。もっと遊んでいきなよってこと。アキヤマはちょうどいいタイミングで昇級したんだよ? 面白いものが見れるから、もうしばらくいなよ」


「はぁ…?」


 アリスの言葉は全くもって意味がわからん。俺は訝しむような目でアリスを見つめた。


「それとも、下々の民は見捨てて逃げたい? アキヤマがそうしたいというならそれでもいいよ? 残念だけどね。もしそうならこの結界ぐらい壊してあげるよ。ただ、次に会うときは多分敵になるんだろうけど☆」

 アリスは屈託のない笑顔で言った。表情とセリフが合っていない。


「下々の民を見捨てて? おい。それってどういうことだ! それになんで俺に協力してくれるんだよ!」


「えー? 言わなきゃわかんないのっ? ばかっ、鈍感ッ!」

 アリスは顔を赤らめてまるでゲームに出てくる女の子のようなセリフを口にした。ゲームに出てくるような性格でもなければ女の子ですらないんだけど。


「茶化すなよ。ちゃんと聞かせろよ」

 とことん茶化してくるアリスに対し俺は真面目なトーンで向かい合った。しかしそれは逆効果だったようで。


「はぁ? ノリ悪いなぁ。お前、いい年こいて自分で考えるってことを知らないの? 人にばっか聞いてないでちょっとは自分で考えてみな☆」

 ☆をつけたところで明らかに柔らかくなっていないその口調は、明らかな拒絶を示していた。もちろん、最初から受け入れられてなどいなかったのだが。


「なっ」

 さっきとのギャップで驚き思わず声が出てしまった。


「いい顔☆ うん。そうだね。ならこう言ってあげとこう。アキヤマよ、この街で起こる大量虐殺を止めたければ、学園の調査を続けるがいい!」


「た、大量虐殺!?」


「そ。大量大量。ボクから言えるのはここまで。さ、どうする? 逃げる? 留まる?」

 アリスは再び笑顔を浮かべて問いかけて来た。なんでそんな笑顔ができるんだ。


「そんなの……決まってる。アイラもルシエラも。いいよな?」

 俺の答えは決まっているが、二人の意思も確認したかった。


「そうですね……ここまで聞いて逃げることなんて出来ないのです」


「あったりまえよ! 言ってやりなさい!」

 予想通りの対応でなんだか安心した。二人とも。やっぱいいやつだな。


「留まる。調査は続けるよ。というか調査してることまで知ってたんだな」


「良かった! これからも楽しめそうで何より……ってん? あれ隠してたの? ボクにはバレッバレだったよ?」


「えっ」

 アイラとルシエラからの視線が痛い。そんなにあからさまに調査してたつもりはないんだけど。


「まぁ教師陣は気づいてないよ。ここにみんながいることも多分ボクしか知らないし。だからみんな、安心してっ☆」

 アリスは軽いテンションで言うものの、ぜんっぜん安心できる要素がないんだが……


「それじゃ、自分の部屋に帰るか……。あ、ハルトどうしよう……」

 ふと部屋に放置して来たハルトのことを思い出した。


「ああ、あの子なら眠らしておいたから、夢だとでも思わせとけばいいよ」


「は?」


 アリスからの予想外の答え。というか元々問うてさえいなかったけれど。


「いや、どうせ引き留められるだろうから、後のことを考えて眠らしておいたのさっ☆」


「お前! まじか! 神対応! ありがとう!」

 俺は思わず抱きついて感謝を表現してしまった。だが、問題ないだろう。この外見でも男なんだし。いくら可愛くても男なんだし。


「なっ…、ちょ、ちょっと? 乙女に気安く抱きついちゃダメでしょ? っていうかさっきまでものすごい顔でボクのこと見てたのになんなの!?」

 アリスから帰って来た反応は、予想外のものだった。高飛車に俺のことを貶めてくるものとばかり思っていたが、案外可愛らしい反応だ。


「乙女じゃないんだしいいだろ〜」

 アリスの反応が面白かったのでからかってより抱きついてみる。しかし、ある程度からかったところで別ベクトルから止めが入ってしまった。


「ちょっと。アキヤマさん。早く戻るのです。ホモのアキヤマさん」


「そうよ。ホモヤマ」


「ちょっとちょっと待って? 変なあだ名つけないで??」


 なぜか二人からのあたりが強くなったものの、和やかな雰囲気で学園寮に戻ることができた。これからの課題は山積みにしろ。寮に帰ると、アリスの言っていた通りハルトは眠っていて、うまく誤魔化すことができた。

 その夜はこれからのことに不安を抱きながらも、眠りにつくことになった。

 そうして、俺の弱腰の脱出は、アリスの登場で失敗に終わることとなった。


DASHしてないじゃんって?ゴロだよ。ゴロ。

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