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magi code  作者: ロジカル和菓子
3章 魔道学園、スクオラ編
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その老人、校長

「やぁ。初めましてじゃな」

 高価そうな革椅子に堂々と座るその老人は厳格そうな雰囲気とは裏腹に、気軽に話しかけてきた。


「私はダンテ・フローラス。ここの校長をやっておる。気軽にダンテさん、と読んでくれて構わないぞい」

 その老人は人当たりの良さそうな雰囲気を醸し出して微笑みながらそう言った。


「ああ。ダンテさん。よろしく」


「ああよろしく。「やぁ。初めましてじゃな。そうじゃな。まずは客人をもてなさんとな。ほれ」

 ダンテはそう言うと指を鳴らし、鳴らした瞬間に机の上になみなみと何かが注がれたコップが現れた。

「そう緊張せずともよい。まずはそれを飲んで落ち着きなさい」


 警戒しながらもそのコップを口に近づけると、ほんのりと甘い香りがした。少し口に含んで見ると、それは紅茶のようなもので、口いっぱいに甘い花の香りが広がった。


「おいしい……」


「そうじゃろうそうじゃろう! これはわざわざロンザーヌ地方から取り寄せたフラグラでのう。香りが特に良くてのう!」


 思わず感想を口にしてしまったのは俺の方だったが、話がどんどん脱線して行きそうだったので、元に戻させてもらうことにした。


「はぁ。……あの、それで、話っていうのは……?」


「む? 気がはやいのう? これからフラグラについてのうんちくをありったけ聞かせてやろうと意気込んでいたところじゃったと言うのに」


 早めに切り込んで言ってよかったと心の中で安堵する。老人の長話に付き合わされずに済んだようだ。


「すみません」

 俺は苦笑で対応。


「ふむ。そうじゃな。では……あ、そうじゃこのフラグラを入れた器なんじゃがのう?これも特注品でな?フラグラと同じロンザーヌ地方を訪れた時に知り合った行商人に頼んで譲ってもらったんじゃ」


「いやあの本題……」


「そうじゃそうじゃ。このフラグラはロンザーヌ地方から取り寄せたものでの? さっき話した行商人に取り寄せてもらったんじゃよ。甘い香りが特徴的での〜」


 ボケてんのかこの爺さん。


「あの!」


「……こほん。では早速だが本題へ入るとするかの?」

 咳払いをして何をごまかしたのか。どこが早速だよこのジジイ。


「お願いします」

 不満を隠し礼儀正しく対応する。仮にもこの老人はこの学園の学園長なのだから。


「まずはS+ランク昇格おめでとう。アキヤマと言ったな。君はこの学園始まって二人目の天才じゃ。入学して一回目の試験でS+に上がると言うのは本当に始まって以来、二人目。素晴らしいことじゃ」


「はぁ」


 なんだか二人目を連呼されているからそんなに嬉しくないんだが。


「それで……あの……二人目……と言うと?」


「ああ、そこかの? 史上最高の魔法使いは入学試験でS+ランク入りが決まったシンシアじゃからの。そこは比較するのが間違っているくらいじゃからの」


「シンシアが……」

 あいつそんなにすごいやつだったのか。言動からはあんまりわからなかったんだけど。確かに変なやつではあったけどさ。


「そうじゃ。彼女はとにかく天才でのう。入った当初なんかそりゃあもう周りは騒ぎ立てて……っと、話がまた脱線してしまうところじゃった。とにかく、おめでとう。ただ、S+と言うのは最高位だけあって、ただ皆と授業を受ければ良いという訳でもないのじゃ。S+は昇級も難しいが維持も難しい。度々課される追加課題をこなさなければすぐに降級じゃ」

 俺はただ黙ってダンテ校長の話を聞いていた。

「今S+を勤めておるシンシアもアリスもすでに何十回と追加課題をこなしておるからの。もしわからないことがあればあやつらに聞いて良いからの。もちろん講師にも質問はして良い。ただ、追加課題とその内容についてはS+クラス以外の者には決して漏らさぬようにすること。それだけは必ず守るのじゃ」


「わかりました」


 秘密厳守。追加課題とやらはそれだけ、危険なのか、やばいことなのか。どちらにせよきな臭いことだけは確かだ。


「内容については……そうじゃな。今伝えておいても良いじゃろう。追加課題はキメラの合成じゃ」


「キメラ……ですか?」


「そうじゃ。これは魔法教会からの依頼でもあるんじゃがな。キメラを合成する技術を高めてほしいとのことなのじゃ。それでいろんな魔法陣を使って合成を試みているのじゃよ。S+にしか課題を課しておらんのは危険が伴うからじゃ。失敗すれば合成に巻き込まれる可能性もあるからのう」


 いやちょっと待って。また危険ですか。


「最初の追加課題は……そうじゃな。早いほうがいいじゃろう。明日の夜、再びここに来なさい。鍵は……ほれ。この魔法陣をあの突き当たりで実行すればここに入ってこれるから。課題の内容は来た時に伝えることになっておる。1回目じゃから簡単なものじゃよ。緊張せずに来るといい」


「はぁ……」


 あまりの急展開についていけず思わず生返事をしてしまった。


「気の無い返事じゃのう。まぁ良い。話はそれだけじゃ。帰って良いぞい。2回目以降は1回目の追加課題の時に話すからの」


「……わかりました」


 話が終わるとそっけなく俺を返したその老人は、軽い雰囲気を存分に漂わせていたが、本質的な部分は全くと言っていいほど見せてはくれなかった。まぁたった一回あっただけでわかるものでもないのだけど。


 言われるままその部屋を出て階段をのぼっていくと見覚えのある廊下に出た。そこにはラストールが待っていてくれていて、後ろを振り向くとすでに階段は無くなっていた。


「お疲れ様です。早かったですね」

 なんだか真面目なラストールに対応されると安心する。


「はい……なんとか」

 俺の言葉のつまり具合から何かを判断したのか、


「はは、あの老人は話が長いことで有名ですからね。これだけ早く帰って来たのはシンシアさん以来ですよ。アリスさんのときなんか何時間ここで待たされたことか……」


「ラストールさんも苦労してるんですね」


 二人で苦笑する。


「それで、今後の話なんですけれど。基本は普段と変わりません。授業もこれまでと同じクラスですから。ただ、明日の夜、ですか? ここに来ることだけは忘れないようにしてください」


「わかりました」


 ん? 明日の夜ってもう知ってるのか? そもそも話を聞いていたから早かったことを褒められたのか。


「それでは、今日は解散でいいですよ。今日は模擬戦の翌日ということで授業もありませんし」


「はい。それじゃ、失礼します」


 お辞儀をしてラストールの前から去り、再び掲示板の前に戻ることにした。まだアイラたちが入れば、話したいことがある。早足で掲示板の前に戻ると、すでに二人はいなくなっていた。そこで、自分の腹が空いていたこともあり、食堂へ向かうことにした。


 お昼時ということもあり食堂にはすでにたくさんの人で賑わっていた。アイラたちがいないか探しながら、料理を注文しにいくと、アイラもルシエラも席に座って昼飯を食べていた。手を振るとこちらに気づいたようで、手を振り返してくれた。料理を受け取りアイラたちの席に向かうと、料理を食べる前から質問責めにされてしまった。しかし、こんなに人のいる場所で簡単に追加課題のことは言えないのでその旨を伝えると。


「ああ、それならいい魔法があるわよ」

 とルシエラは自信満々に言った。


 任せてみていると、ルシエラは自信満々にポケットから魔法陣を取り出し、魔法を展開した。


「何をしたんだ? 特に変わったようには見えないけど」


「そうね。それじゃちょっとそこから一歩離れてみなさい?」


 意味はわからなかったが、ルシエラの言う通りにしてみると、驚くことにルシエラとアイラの声が聞こえなくなった。驚きを伝えようにもここで言ったところで聞こえないことに気づき自分の席に戻って再び口を開く。


「すごいじゃないか!」


「でしょ」


 ルシエラは鼻を高くして胸を張った。


「今この3人の会話は他には聞こえないようになっているから。何か秘密で喋りたいことがあるんじゃないの? なんならもっと秘匿性の高いようにもできるけど?」


「いや。これでいい。十分だ」


「珍しいですね、アキヤマさんが人の目を気にするなんて。いやこの場合耳なのですか」


「ああ。ちょっとやばそうな話だ。S+に課される追加課題のことがわかった。内容はキメラの合成らしい。魔法教会からの依頼だと言っていた。間違いなく魔法教会は何かを企んでる。ただ、ここでのキメラの合成を止めるには障害が大きすぎる。さすがに教師クラスの魔導師を数人相手取るのは不可能だ。このままだと明日の夜にはキメラ合成に加担させられることになりそうだ。潜入はここまでにして脱出しないか?」


 俺は今さっき秘密にしろと言われたことを一瞬にしてバラしていた。いや別にこの学校に止まるつもりはないからいいんだよ。本当に。これまでにない真面目な表情で語る俺に、二人とも真剣に考えてくれた。


「そうですね……せっかくSランクに上がっておいて名残惜しいですが……そうしましょう」


「そうね……あんたこのままだとやばそうだし。仕方ないわ」


 反対すると思っていたのだが、場合が場合だけに二人とも賛成してくれた。


「よし、それじゃあ、今から帰って準備して今日の夜、俺の部屋に来てくれ。そこで合流して脱出する」


「わかったわ」


「わかったのです」


 事態が事態だけに楽しい話しもほどほどに、料理を食べ終わるとすぐに俺たちは解散して自分の部屋に戻った。部屋には都合よくハルトはおらず、こっそり荷物をまとめる必要がなく楽だった。荷物をまとめ終わると、荷物を布団の中に隠し、夜が来るのを待った。

 そして、いよいよ合流のとき。


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