発表と面会
寮から校舎へ向かうと、エントランスに集まったみんなが、壁に貼られた紙を見てざわざわと話している。しかし人が多すぎて近くに行くことができず、書かれている文字は読めない。
「あ! アキヤマさん! 今来たのですか? 私もなのです。人……すごく多いのです」
そう言うアイラは人ごみの中俺を見事に探し出して声をかけて来たようだった。
「おお、アイラか。俺は今来たとこだけどよ。それにしてもこれはみんなして何を見てるんだ?」
「はぁ!? それを知らずに来たのです!? というか昨日あれだけ大変な思いしておいてそれなのですか!?」
アイラは呆れ顔で言った。眉毛がハの字になっている。
「んぁ? なんのことだ? 俺の模擬戦のことならアイラは見てないだろ?」
「それも知らないのですか? 上位のクラスの模擬戦は校内で放送されていたのですよ? もちろんアキヤマさんの戦いも放送されていたのです」
「放送!?」
「そうなのです。以前お師匠様がアキヤマさんとしていた通信技術のようなもので配信されたのです」
「ああ。あれか。それにしても……放送されていたとは」
なら魔法をあまり使わなくて良かったかもしれない。怪しまれる危険性もあるわけだし。
「というわけで、私はじっくりアキヤマさんの戦いを見たってわけなのです。ちなみにお師匠様もなぜか見たそうなのです。どうやったのかはわからないのですが……」
「うわ……本当かよ……」
「二人も来てたの!? こんなに後ろで何やってるの?」
後ろから声をかけて来たのはルシエラだった。なんだかんだすぐに3人集合するな。クラスで活動するときにはほとんど会う機会がないだけになんか懐かしい気がする。
「ああ、ルシエラさんでしたか。結果発表を見に来たのですが……人が多すぎて見えないのです……」
「鈍臭いわねぇ。ほら。ついて来なさいよ」
ルシエラはそう言うと俺とアイラの手を繋いで人をかき分けかき分け、強引にみんなが群がっていた掲示板の前まで連れて行ってくれた。
「ほら。簡単でしょう?」
俺とアイラは人ごみに押しつぶされながら引っ張られてクタクタだったが、ルシエラはケロっとそう言った。
「いやいやいや……あのさぁ……」
「それよりほら! これ見て! これ!」
ルシエラが指した先には生徒の名前とクラス名が書かれてあった。
「ん?」
「察しが悪いわね! 昨日の模擬戦での評価がもう出たのよ! まぁ目立った功績とか失態がなければほとんどがそのままのクラスなんだけど……とにかくこれ!!」
ルシエラはピンポイントで掲示板の一点を指した。見てみるとそこにはルシエラの名前が。そしてクラス名をみると……S、と書いてあった。
「おお! Sクラス昇級!? すごいじゃないかルシエラ!?」
「ま、まぁ当然なんだけどね!?」
ルシエラは明らかに嬉しそうなのを隠しきれていないが、何のプライドがそうさせるのか高慢に振舞っていた。
「すごいのです……ところで私はどうなのでしょう……?」
アイラも心配そうにしていた。探すと意外と早く見つかった。アイラ……Sクラス。そこにはルシエラと同じく飛び級で昇級した結果が記されていた。
「やったのです! これでこのアキヤマさんより劣っていないことが証明されたのです!」
いや喜んでいるのはいいんだけど、何気に俺をどう思っているんだこの子らは。
「そうね! 私たちがこいつより下のクラスなんて入学試験の方がおかしかったのよね!」
二人ともひどいことを言いながら喜んでいたが……そもそも俺の結果の方が重要なんじゃないだろうか。追加課題とか言うものの正体も探らないといけないって言うのに。
「んじゃ俺の名前を探すか〜」
「ふん。そうね。まぁ降級していなければいいけどね!?」
「そうなのです。まぁそれでも調査は私たち二人で何とかするのですっ」
なんか当たりきつくない? そう思いながらSクラスの名前が記してあるところに移動し、自分の名前を探した。
「あ!あったわよ! 結果は……えっ……?」
「ルシエラさん?どうしたのですっ……? えっ?」
ふたりとも俺の結果を見つけたらしいが黙りこくってしまった。そんなにショックな結果だったのか?
ふたりの視線の先を見ると確かに自分の名前があった。アキヤマ……S+クラス。詳しい話があるので職員室まで来るようにとの追記もあった。
「よしっ!!」
俺は静かにガッツポーズを決めた。早くこの学園から出たいから調査を早く進めたいという後ろ向きな前向きさを持ってして俺は一ヶ月でこの学園の頂点のクラスにたどり着くことができた。いや授業は死なないようにとしか思っていなかった気もするが。
「「何で……」」
アイラもルシエラも絶望した表情をしていた。いやそんなに俺が上にいることがショックなの!?
「まぁまぁいいじゃん。早くここを出れそうだしさっ」
「「……」」
二人は無言で俺にプレッシャーを放ってきた。何だよ。入学試験の時と同じ目でこっちを見るんじゃあないよ。
「とにかく! 俺は職員室に行かないとダメみたいだから行くわ! んじゃなっ」
恨みがましい目でこちらを見る二人を残して俺は学園の職員室へと足を進めた。職員室のドアをノックすると中から入ってきていいとの声がしたので遠慮なく扉を開け、中へと入らしてもらう。そこは俺が昔学んだ母校の職員室とそんなに作りは変わらなかった。職員の机の上に乗っているものは色々と違っていたが。
「ああ。アキヤマくんでしたか。少し待っていてください。S+ランクと言うのは少々特殊なため、校長先生から直々にお話があるそうです。今時間が大丈夫か確かめてきますから」
出迎えてくれたのはラストールで、いつもと同じ真面目な口調で俺を対応してくれた。いい終わると魔法道具である通信機器で校長先生とやらに話をしだした。しばらく待っていると、話終わったようで、通信機器を切ると俺の方を向いた。
「校長先生、時間大丈夫なみたいですから、行きましょうか」
ラストールにしたがって職員室を出てついて行くと、廊下を突き当たりまで行って止まった。何事かと思って見ているとラストールは魔法陣が描かれた高級そうな紙を取り出し、実行した。
「ラン」
魔法陣が発動すると突き当たりだと思っていた壁が突然開き、目の前に階段が現れた。
「この先です。どうぞお一人で」
多少訝しんだが、校長に会えると言うのは願ったり叶ったりだ。指示通り一人で階段を降りて行くと、階段はらせん状になっていたようで、だいぶ地下まで降りたところで大きな扉に行き当たった。
「これか……?」
迷わず扉を開けると、中は高級そうな家具が並んでいる部屋だった。大きな机には高級紙、本棚には高級そうな背の分厚い本達。そして大きな机の向こうにはこれまた高級そうな椅子に一人の老人が座っていた。
こいつが校長か、と警戒しながら俺は前に歩み出た。




