目覚め
目が覚めたのはとある日の昼前だった。体の節々が痛くて起き上がるとなんだか自分の体が自分のものじゃないみたいだった。
「腹減った……」
食堂にでも行こうと思い腹をさすりながら立ち上がると、想像以上に自分の体が重い。いったい俺はどれくらい寝ていたのだろうか。おぼつかない足取りではあるが、食堂に向かうと、少し早いからかほとんど食堂には人がいなかった。
注文し、一人席に座り、久しぶりの食事をとる。いろんな具材が煮込まれた料理を一口、口に運ぶと、昇天するようなうまさを感じた。まるで全身に栄養が染み渡るかのように体が吸収しているような気がする。ゆっくりと食べ進めていると、時期に授業が終わったのかちらほらと人が入って来るようになって来た。それからまたしばらくすると食堂は満員になってしまった。
「あ! アキヤマさん!? 大丈夫なのです?」
後ろから聞こえて来たのは懐かしいような安心する声だった。声の方を振り返ってみるとそこにはやはり、アイラがいた。ついでにルシエラも。
「ん? アイラ! 久しぶり!? でもないか」
体感的には昨日会ったような感じがする。
「久しぶりなのです……アキヤマさんが倒れたと聞いて私たち心配して何度も見舞いに行ったのですよ?」
「そうよ! 私も行ったんだから! てか私には一言ないわけ?」
懐かしい二人だ。久々の登場なんじゃないか? あまりの登場の少なさにモブキャラと化すんじゃないかと心配されていることだろう。
「ちょっと! いま失礼なこと考えてたでしょ!!」
いつの間にルシエラまで俺の心の中を読むようになったのか。
「考えてないって。お見舞いありがとうな。アイラ、ルシエラ」
「いえ。礼には及ばないのです」
「ちょっとそれじゃ私が悪者みたいじゃない! やめてよ。私も礼なんていいわよ」
ルシエラはバツが悪そうにそう言った。
「まぁ見舞いって言っても一、二回だったらまぁ礼はいいか」
「「え??」」
俺の言動が何かおかしかったのか二人とも妙な声をあげた。
「一、二回どころじゃないわよ。あんた自分がどれくらい寝てたのか知らないの?」
「え?聞いてないけど……1日、2日じゃないのか?」
ちょっと傷を負って寝てたぐらいだから1日、長くて2日ぐらいのもんじゃないのか。起きた時に周りに誰もいなかったため確かめようがなかったってのはあるが。この反応は相当長く寝ていたのか?
「アキヤマさんは一ヶ月近く眠っていたのですよ?」
「そうよ!」
「はぁ!? それじゃ試験は? もう終わったとかか?」
まずい。次の試験で昇格してさっさと追加課題とやらを受けて調査を進めたかったっていうのに。最悪また一ヶ月以上はこの学園生活を続けないといけないことになってしまう。
「いえ。それはまだなのです」
「よかった……そんで?いつなんだ?試験は」
「それが……明日なのです」
「はぁ!?」
なんてことだよ。それもう試験が終わってるより悪いじゃないのか? 病み上がりで実戦試験? 嫌でも昇格しなけりゃ調査は進められないわけで……。
「棄権したら? しょうがないじゃない。あんだけの怪我したんだから。あんたんとこの狂った先生が起こした事故のせいでけが人は半数以上に及んだらしいわよ。それで棄権しても現状維持になるように取り計らってくれたみたいだから。無理しなくても……あんたに怪我されたら調査も進まないしね」
ルシエラは珍しく心配してくれているようだった。久しぶりに出て来たと思ったら。いいやつになって帰って来たってどこのジャ○アンだよ。
「ああ。心配ありがとう。でも俺、出るよ」
明日の一回の実戦試験と、一ヶ月以上の毎日の命がけの授業どちらが危険かと言われれば、後者だろう。明日頑張ってさっさと終わらせる。それが最短で安全な道だ。その時は本当にそう思っていた。
「はぁ!? あんた相手知らないからそんなこと言えるんでしょ?」
「相手って……アランなんだろ?」
「はぁ? 知っててその感じなの? 相手は! あの! アラン・ギルバートなのよ? 名門ギルバート家の後継筆頭候補なのよ!?」
「そうなのです。病み上がりのアキヤマさんには荷が重すぎるのです。素直に休んでください」
こうまで否定されると意地でも反抗してやろうと言うのが男というもの。自分で見たままのアランであれば、今の俺の魔法でなんとかできない相手ではないはずだ。たとえ相手が名門の坊ちゃんだろうと。
「大丈夫だって! 俺なりに頑張るから。それに調査の方も進めないといけないし……さ」
「おっ!! みんなして何喋ってるの〜!?」
大事な話の途中で後ろからハルトが声をかけて来たせいで、話を進められなくなってしまった。
「アキヤマさんが病み上がりで試験に挑むっていうのです」
「はぁ!? お前相手知って言ってんのか?」
ああもういいから。その流れはさっきやったから。適当にハルトをいなしてご飯を食べ終わると、もういい時間になっていた。
「んじゃ、最後の授業行ってくるか」
「そうですね」
「そうね」
「おい俺の話はまだ終わってn」
ハルトの言葉を最後まで聞かずに俺は立ち上がる。そして次の授業が試験の前の最後の授業になることだろうと意を決し教室へと向かった。
「だいたいなんでアイラさんとルシエラさんとそんなに仲よさそうに喋ってたのかまだ聞いてn」
……向かった。




