続・lesson crisis② 〜風の魔法編〜
さっき作戦会議をしていたアランを先頭に集団が形成され、正面から突撃。右と左にも同じぐらいの人数の集団が周りこんでいた。リサの話に気を取られ、すっかり作戦会議に参加していなかった俺は左の集団に紛れ込んだ。カマイタチ改と呼ばれた使い魔はアランを先頭とする集団に向かって9つの尻尾から目も眩むような連撃を放っていた。最初は勢いよくカマイタチ改に向かって進んでいた集団もその攻撃を防ぐので精一杯になり、前に進めなくなっていた。
攻撃を食い止めている大きな要因はアランだった。一人で防御魔法を展開し後ろのメンバーをかばっている。攻撃を防いでいるのは巨大な……分度器だった。
「なんだあれ!?」
おもわず声に出ていた俺の驚嘆に同じく左の集団に紛れていたリサが答える。
「あれは巨大化と硬化の魔法。アランはあれが得意でね。五大要素に分類されない魔法だからどの授業でも使えることになってるの。もちろん、他の魔法も一流なんだけどね?とっさに使うのはあの魔法みたい」
「それにしてもなんで分度器?? 優等生だから??」
「ふふ。そうね。優等生だから……かな? あの魔法はより親しんだモノに対して大きな効果を発揮するみたいなの。座学も一番を目指して勉強時間の長いアランなら文房具が一番ってな具合にね?」
リサは丁寧に俺に魔法の説明をしてくれた。巨大化と硬化……。
「あ!話してる場合じゃなくなって来たかも……。私も余裕はないから自分の身は自分で守ってね!!」
リサはそういうと俺の近くから離れて言った。それもそのはず。カマイタチ改はアランの集団に使う尻尾の数を3つに減らし、右と左の集団にもそれぞれ3本の尻尾を使って攻撃を仕掛けて来ていた。ていうかちょっと待って。防御魔法とかさっきのしか知らないんですけどぉ!?
「ラン!!」
必死にさっきの防御魔法を実行するが、魔力の放出量が少ないため、防御が間に合わず、回転量の少なかった最初の攻撃が防御の膜の中に入ってきて、いくつか傷ができてしまった。
「いてっ」
自分から流れ出る血を見て、これが授業でも死の危険のあるものだと改めて実感する。魔力を絶やすことなく防御魔法を展開し続ける。しかしそのことに夢中になっていたためか、集団の流れに取り残され、孤立してしまった。急いで集団の中に戻ろうとするが、そもそもこの防御魔法、自分の周りを完全に覆っているため、集団の中に入ろうと思っても入ることができない。初めて魔法陣の内容を見てみる。
この魔法はまず1、魔力を貯め、2、風の魔素に変換し、3、その流れを乱方向に体の周り1Mで留めるというものだった。これでは周りが見えにくい上に誰とも近づくことができない。そこで、新たな紙を取り出し、改良した魔法を書き込む。
まず1、魔力を貯め、2、風の魔素に変換し、3、その流れを右手の前で半径1Mの円上で回転させて留めるという魔法に変え、実行する。
「ラン!!」
魔法陣が光ると俺の右手の前に半径1Mの大きな円上に風の防御壁が発生した。右手を動かすことでその防御壁も動き、魔法を防いでくれる便利な盾が出来上がった。半径が1M、というのも俺の魔力の放出量に見合っているのか、しっかりと魔法を防いでくれた。集団の中に戻ると皆は各々の魔法で風の刃を防いでいたが、俺の魔法を見ると驚いた顔をしていた。
「アキヤマくん!? なにその魔法!? 水の授業の時も知らない魔法だったけど!?」
リサが珍しいものを見るような目つきでこちらを見ていた。
「説明は後で! そんな余裕ないだろ!?」
「確かに、そうね!!」
皆必死に攻撃を防ぐが、三本の尻尾から止むことなく強力な攻撃が繰り出されて来て、全く攻撃する余地を与えさせない。アランの集団はアランが攻撃を一人で防ぎ、後ろからクラスメイトが遠距離攻撃という攻撃陣形を取っていたが、カマイタチ改の方も2本の尻尾で攻撃、1本の尻尾で防御と役割分担して完璧に攻撃をしのいでいた。
……それは一瞬の出来事だった。カマイタチ改は通らない攻撃に苛立ち、アランの陣営に突進した。9本の尻尾を全てアラン陣営に向け、全力の攻撃を叩き込んだ。アラン陣営を守っていた巨大硬化した分度器が壊れ、陣営を風の刃が襲った。9本の尻尾から放たれた風の刃は容易に陣営のあらゆる生徒を切り裂き、一瞬にして集団は壊滅した。アランを一人残して。
アランは巨大硬化が破られた瞬間、風の防御魔法を展開し、自分の身を守ることには成功したようだ。多少の傷はおっているようだが。そのせいですぐには動けないようだった。アランを見逃してすぐさまカマイタチ改は右の集団に攻撃先を切り替えた。アランの集団と同じように攻撃に全ての力を込めた威力は恐ろしく、一瞬で集団は壊滅した。
そしてもちろん次にカマイタチ改が狙ってくるのは俺のいる集団だった。統率の取れていない集団がアランの集団でさえ破れたこの攻撃に耐えうるはずもなく。カマイタチ改の9本の尻尾から繰り出された風の刃によって、集団はほぼ壊滅した。ほとんどが体のいくつもの箇所に傷を負い、倒れた。
俺の防御魔法は範囲を限定したのと、風が通るコースを限定したためか、回転量は徐々に増していき、風の刃を見事に防いでくれていた。それに加え、リサもなんとか立っているという感じだった。
「おやおや、もう終わりかのう? S+の二人の投入早めたほうがいいかのぉ?」
ラムザールがバカにしたようにそう言って来た。悔しいがその提案に従ったほうがいい……と思い返事をしようとした瞬間、大きな声が響いた。
「ンなのイラネェ! 俺だけでも十分なくらいだオラ!!」
もちろんそれはアランの声だった。彼なりの精一杯の虚勢。いや虚勢なのか本当にそう思っているのかはわからなかったが。いや、力借りようよ!! などと言えるはずもなく……。
まだ立つことのできている3人で、授業は再開することとなった。
あけおめです。
年末年始ぐうたらしてたので今日から再開します!




