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magi code  作者: ロジカル和菓子
2章 魔法教会支部が仕切る街、アマネ編
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幕間 〜少女の想い〜

 翌日、俺は気持ちよく目を覚ました。アイラを見るとまだ眠っているようだった。


「はは、本当の猫みたい」


 そんな感想が口から出ていた。猫のように丸くなって気持ち良さそうに眠っているので起こさないように出発の準備をしようとする。……しかし。物音を立てて起こしてしまったのかアイラはゴソゴソと身を起こした。


「あ、起こしちゃったか? すまん」


 謝るがアイラの反応は鈍い。


「ふぁい? 何がです……?」


 まだ寝ぼけ眼なアイラは何のことをいっているのかわからなかったようだ。


「いや、だから俺のせいで起こしてしまったかなって」


「ああ。大丈夫なのです。どうせ起きなければならない時間でしたし」


 さっきまで寝ぼけていたのに、パッチリと目を覚ましたアイラはテキパキと出発の支度をし始めた。本当にしっかりした子だと改めて感心する。そして支度を終えた俺たちは、別れの挨拶をしに貧民街へと向かった。


 子供達は朝から元気に遊んでいた。そこにはリゼの姿もあった。リゼが元気になったことがわかり、俺もアイラも安心した。それにしてもクフイカ草の効力、強すぎはしないか。もちろんいいことではあるんだが。その効力に驚きつつも、子供達に声をかける。


「おーい、フィン、マット、リゼ!!」


 子供達の名を呼ぶと皆喜んでこっちに寄ってきてくれた。


「どうしたの?」

 フィンがそう尋ねてきた。


「ちょっと挨拶にな」


 軽く返すと今度はマットが声をかけて来る。


「挨拶ってもういっちゃうの?」


「ああ。ちょっと早いけどな」


 フィンもマットも積極的に話してくるが、リゼは何やら黙っている。


「俺たちへの挨拶はいいから、リゼが話したいことがあるんだってー。な!フィン」


 マットはフィンに同意を求めた。


「うん。ほら、リゼ、恥ずかしがってないで」


 二人の少年はそう言うと少女の背中を押した。


「アイラねぇちゃんもほらこっちにきて」


 少年たちはアイラも少し離れたところに連れて行き、俺はリゼと二人きりで話すことになった。


「どうした? リゼ?」


「あの……この前のお礼……言いたくて」

 リゼはもじもじしながら言った。


「ああ。そんなことか。別に大したことじゃないよ」


「でも!! アキヤマ死にかけてまで薬草取ってきてくれたって……フィンとマットが言ってたよ!」


「はは……かっこつかんなぁ。ま、感謝されるならありがたくその言葉、受け取っておくよ」


「うん……それでね?」


「まだなんかあるのか?」

 何やらリゼはまたもじもじとし始めている。


「あのね……? アキヤマこれから遠くに言っちゃうんでしょ?」


「ああ。ま、そうだな」


「帰ってくるのはいつかわからないんでしょ?」


「そうだなぁ」


「時間が経って私が成長して……アキヤマがおじさんになってアキヤマが嫁の貰い手もない哀れな大人になってたらね。その時は……私がお嫁さんになってあげる!」

 リゼはもじもじして言うのをためらいながらも、最後の言葉は思い切ったのか勢いよく言葉を発した。


「哀れな大人って……でも嬉しいよ。ありがとうな」


 俺はニコッと笑ってそう返す。大人な対応? かはわからないが、これぐらいの礼儀はあってもいいだろう。相手は幼いとはいえ女の子なのだから。ロリコンだからじゃないぞ。児ポ法? 違う! 嫁にもらうなんて言ってない!


「じゃあ! 約束だよ!」


 リゼはあからさまに喜んでそう言う。まぁ子供の頃の約束なんてものはすぐに忘れてしまうものだろう。しかし、児ポ法に引っかからないように条件付きにしておこうと思う。


「ただし、条件がある!」


「条件?」


「ああ」


「どんな?」


「もし俺よりもカッコイイ人や頼れる人ができたらその約束はなかったことにすること!」


「?」

 リゼはぽかんと理解できない顔をしている。わからないか。まぁ、どうせ忘れるだろうしいいや。


「ま、そっちから忘れる分には気にするなってことだよ」


「忘れないもん!」

 リゼはそう怒るが、大人になったらわかるさと頭をなでてやる。


「そっか。わかったよ。それじゃ、もう俺たちは行かないと」


 隠れて見ていたアイラと少年達を呼び出し、俺とアイラはその場を離れる。


 去り際、リゼはアイラに向かって、

「負けないんだから! アキヤマが帰ってきたらいい女になって待ってるんだから!」

 とタンカを切った。


 アイラは俺のこと好きにならんだろうと笑って立ち去る。後ろでアイラがリゼに向かって舌を出していることなど知らずに。


 貧民街を後にした俺たちは、RMIへと向かった。ルシエラに挨拶をしたら酒場に向かい、この街とはおさらばだ。RMIにつき、中に入るとカウンターにはいつもと変わらぬ老婆の姿があった。


「よ。ルシエラ」

 いつものようにルシエラに声をかける。


「ん? お主誰さね? それに私はルシオラさね?」


「はい?」


「ルシエラは私の孫さね」


「えーっと……?」


 アイラは全く理解できずにきょとんとしている。これはおそらくこういうことだろう。ルシエラが化けていたのはおばあさんの姿であり、今はルシエラはここにはいない……?


「ルシオラさん。孫のルシエラちゃんはどこにいますか?」


 正真正銘の初対面のおばあさんにはさすがに敬語を使う。しかしアイラはアイラでルシエラだと思っていたルシオラおばあさんに敬語を使う俺に困惑し……ってこれ自分でもよくわかんなくなりそうだな。とにかくアイラは戸惑っていた。


「ルシエラは何やら出かける準備をしてたさね。今呼んできてやるさね。おーーーーい!! ルシエラ!! お客さんさねーーー!」

 ルシオラさんが店の奥にそう呼びかけると、


「はーい! わかってるわかってるーー! 今降りるからちょっと待ってもらっててーーー!」

 と元気な返事が返ってきた。


「すまんね。今聞こえた通りさね。ああ、あんたら、もしかしてクフイカ草を仕入れてくれた人たちさね?」


「あ、ああ。そうですけど……」


「ありがとうね。最近クフイカ草が慢性的に品不足だったようだから助かったさね」


 手に入れたクフイカ草のいくつかはRMIに引き取ってもらったのだ。こちらとしては無駄にたくさん薬草を抱えて旅をせずに済むし、品不足で値上がりしていた影響で、買取価格は破格で、当面のお金の心配もしなくていいし、いいことづくめだった。


「いえ。と言うかルシオラさん、もしかして最近ここに帰ってきました?」

 ルシオラさんの喋り方を聞いていて、少し気になったことを尋ねてみた。


「ん? よくわかったさね? ここら辺の薬草の研究でちょいと郊外を巡るために孫に店をしばらく任せてたんだけどねぇ。最近急に帰ってこいってうるさくてねぇ」


「やっぱり」


 それでルシエラはルシオラの格好に化けて店番をしていた……と。とすれば何でルシエラは旅の準備なんかしていたのだろうか……。


 一人で考え込んでいると、どうやら何も理解できていないらしいアイラが服を引っ張って事情を教えてとアピールしてくる。それに対し俺は「後でな」と口パクでアピールする。そうこうしていると店の奥からルシエラが現れた。昨日までの老婆の姿ではなく、若い姿。長い茶髪に緑色の目。その目はルシオラおばあさんとお揃いだった。まぁ俺は一度見ているんだが。一方アイラの方はぽかんと口を大きく開け、わかりやすく驚いている。


「あれが、ルシエラさんなのです……?」


「そーだよー! 私がルッシエラちゃんなのです!」

 アイラの方を向き頬の前でピースを元気に決め、ルシエラは決め台詞のように言った。


「……ひゃい?」


 アイラ、驚きすぎて滑舌までこんなになって……不憫な子。憐憫の目でアイラを眺める。


「察しが悪いな。だから! 昨日まで、おばあちゃんに化けていたのが私!……今そこにいるのが本当の私のおばあちゃんなわけ。おわかり? 猫耳ちゃん?」


 アイラに挑戦的な言葉を投げかけるルシエラ。それにしても姿変わってキャラ変わりすぎだろ……。


「で? その荷物は何だよ?」


 話が脱線していきそうだったので、無理やり話を戻す。


「あ、これ? 私、あんたたちについていくことにしたから。その準備」


 それは唐突な宣告だった。というか俺でさえ何も聞かされてないのに、いきなりついて行くってなんだよ。


「はぁぁぁぁぁ?」


「ふぁぇ……?」


 俺は驚愕、アイラはもはやついていけず。二人して情けない声を出した。


「何よ。いいわよね?」


「いいも何も……てか何でそう言うことになるんだよ!?」


 どういう思考回路で一緒に旅することになるのか本当に聞きたいわ!


「んー。あんたたち面白そうだなーって見てたんだけど。面白いことになるわ、その上儲かる事案まで持ってくるわでピンときたのよね。あんたたちからは儲かる匂いがするのよ!!」

 ルシエラはビシッと人差し指をさして言ったが、全然かっこついていないから。それクズな感じしかでてないから。


「あ、アイラはどう思う……?」

 テンパってアイラに行く末を委ねてしまう。アイラなら断ってくれるだろうと踏んでのことでもあった。しかし、それが裏目に出てしまった。


「はい……いいと思うのです……?」


 アイラは完全に混乱した思考でなんとなく肯定してしまったようである。


「んじゃ決定ね! はい! いきましょー。おばあちゃん、お店よろしくねー!」


 元気に告げると、ルシエラは俺とアイラの腕を無理やり組んで、店の外に連れ出して行った。

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