fighting in the rain③
真上に魔法陣を向け、叫ぶ。
「ラン!!!」
それは一筋の光のようだった。魔法陣から真上に向かって雷の筋が伸びていき、雷の魔法は化け物鳥に当たった。
しかし。
「ギャゥゥゥ!!!」
奴は何かしたのか? とでも言いたそうに、鳴き声を出した。
……違う。俺はお前に雷を放ったんじゃ無い。後ろを見てみろ。心の中でそう告げる。
雷は奴を貫通し雲へと伸びていく。その雷の魔法の威力自体は大したことないだろう。なんせ細く伸ばしただけだからな。でもお前の後ろには大量の雷雲。電気をよく通すどころか雷そのものがその内部へ入って来たらどうなると思う?
瞬間、ゴロゴロと不機嫌そうだった雲は、その怒りを放つ。雲から放たれた雷は俺の魔法によって作られた雷の筋をなぞるように落ちて来る。
……それは一瞬だった。
目に光が入って来た瞬間に魔法陣を手放し、真横に逃げる。雷は俺をあざ笑っていた化け物鳥を貫通し、魔法陣に向かってほとばしる。魔法陣は焼け焦げ、地面に雷は吸収される。しかしそれだけでは済まない。ぬかるんだ地面、泥は電気をよく通すと言ったのは自分だ。雷は地面に吸収されきれず、周りへとその足を伸ばしていく。
あ、終わった……自分の魔法で死ぬって間抜けすぎんだろ。そう思った瞬間、「アースドーム!!」と聞き慣れた誰かの声が聞こえた。
直後、訪れたのは暗闇。何が起こったのかわからず、しかし考えるほどの体力も残っていない。俺はそっと目を閉じた。目を閉じるとベタベタの服もぬかるんだ地面も気にならずに自然と気を失った。
「……さん!!! ……マさん……!! ……キヤマさん! アキヤマさん!!」
目をさますとアイラの顔がすぐ近くに見える。猫耳がしょんぼりとうなだれ、心配そうに覗き込んでいる。そう。俺はアイラに膝枕をされていたみたいだ。
「お前……届けに行けって言ったろ……」
うまく動かない体に鞭を打ち、そう意地をはる。
「ごめんなさいなのです……でもやっぱりアキヤマさんをおいて逃げるなんて私にはできなかったのです」
アイラはシュンとして言った。猫耳は相変わらずぺたんとうなだれている。
「ま、アイラは優しいからな。しょうがないか。ありがとう。助けに来てくれて。でも何をしたんだ? あの状況から」
「私が戻って来た直後、アキヤマさんは魔法陣を天に向けたのです何をしているのか最初はわかりませんでした。でもそのすぐ後に雷が落ちたのです。アキヤマさんが危ない! と思ったらとっさに魔法を放っていたのです。私が使ったのはアースドーム。対象者を土の壁でおおう魔法です。この前RMIで買った魔法なのです。それにしてもアキヤマさんがなんとか無事でよかったのです」
いつの間にインクルードしてたのか。土で俺を覆ったために雷は土のドームを覆うようにして流れていったから俺は無事だったようだ。危うく自分の魔法で死んでしまうところだった。ただ威力があればいいってもんではないということを強く実感した。
「よく間に合ったな」
「とっさの判断なのです」
この子俺なんかよりよっぽど優秀じゃね?
「は! それよく早くクフイカ草を街に届けなきゃ……」
俺は痛む体に鞭打って体を起こす。
「無理はダメなのです!!」
見れば肩には包帯が巻いてある。アイラが巻いてくれたのか。用意がいいなぁ。意識が朦朧とする。これはどうやら普通に動けるような傷じゃないらしい。
「無理してでもいかなきゃダメだろ。手遅れになったらそれこそなんのためにここまでしたのかわかんねぇよ」
俺はそういうと、今度こそ歯を食いしばり体を起こす。
「アキヤマさんは全くしょうがない人なのです」
アイラはため息をつきながら言うと、俺の怪我をしていない方の腕を首にかけた。
「行くのですよ」
アイラは俺を支えながら、俺は支えられながら必死に歩き出した。雨のせいではなかったのか、帰り道はちょくちょく魔物が出てくるようになり、その度にアイラは俺を下ろして応戦した。
俺一人だったら本当に死んでいたとアイラに心の中で感謝を捧げる。魔物がいなかったのはあの化け物鳥の影響かもしれない。だからあいつがいなくなったことで魔物が戻って来たのか。そんなことを考えつつ、雨の中魔物が現れるとアイラが応戦、倒すと俺を支えながら歩く、という動作を繰り返した結果。とうとう山を降りることができた。アイラのリュックにはクフイカ草がどっさり。これでリゼを助けられる。
アマネに着くと俺とアイラはまっすぐに貧民街へと向かった。気づけば雨も上がっていた。さっきまで立ち込めていた暗雲は晴れ、虹がさしていた。
ああ、これでリゼを助けられる。
俺の怪我は命に関わるほどじゃない。アイラもそう判断したからこそ、直接貧民街へ向かうことを許してくれた。泥だらけの俺たちは街の人に怪訝な目で見られながらも足は止めない。
貧民街へたどり着くと、少年二人が俺たちを待っていてくれていた。少年たちは俺の怪我を心配してくれたが、それよりもリゼが先だと言って家に案内してもらう。少年たちに連れられ、リゼのいるという家に向かう。先に子供達が話を伝えに走って行くと、中からリゼの母親らしき人物が出て来た。リゼの母親は身なりこそ貧相だったが、上品な雰囲気を纏っていた。
ああこれでリゼを助けることができる。そう安心してアイラのカバンからクフイカ草を1ふさ取り出し、リゼの母親に駆け寄ってそれを渡そうとした。……その時。
「待てよ。そのクフイカ草、どうしようってんだ?」
男の声が響いた。




