いざ潜入⑥終
店に帰りとりあえず看板を閉店にして誰にも聞こえないように会話を始めた。
「成功だ、やったさね。これで私も無事商売を続けられるし、あんたらも情報をつかむことができた」
ルシエラは満足そうに頷いた。
「ああ、なんとかな」
「それで? アキヤマさん、何か掴みましたか?」
アイラは期待を込めて訊いた。表情からしてアイラの方もうまくいったのだろう。
「ああ。もちろん。アイラこそ何か掴んだか?」
「もちろんなのです」
アイラはない胸を張って満足そうに言った。
「それは私は聞いていてもいいのかい?」
ルシエラは気を使ってくれてそう言ってくれたが、もうここまで協力してくれているのだ。
「ああ。聞きたいなら聞いてくれて構わない」
信用に足ると判断して良いだろうと思いそう言った。
「そうかい」
ルシエラはそれ以上何も言わなかった。
「それじゃ何を聞いたのかお互い話そうか」
「そうですね。それじゃ、アキヤマさんからどうぞ」
「ああ。まずはこの前店に来ていた二人組の魔道士がいたろ? あいつらの名前と階級がわかった」
「あの金髪と縮れ毛の男女なのです?」
アイラは猫耳をピクピクさせて言った。付き合いが長くなって来てわかったが、こういう反応は興味を示している時の反応みたいだ。
「そうだ。あいつらは男の方がアレス、女がジュリオンと言って魔法教会の幹部クラスらしい。そんでもって今度、魔法教会の偉いさんがたが逃したっていうバケモンを捕獲しに行く任務に配属されているらしい」
「……」
アイラはこちらの話に聞き入っている。
「この話はその任務に配属されたっていう下っ端の魔道士から聞いた話だから確かだと思う」
「なるほど。何やら雲行きがあやしい計画が進んでいるのですね」
アイラは猫耳をぴーんと伸ばして言った。これは気を張っている時のしぐさらしい。
「ああ。その目的も聞き出したかったんだが、下っ端魔道士には話されていないらしい。下っ端魔道士は戦争に使うんじゃないかとかいっていたが……」
「戦争……ですか?」
「ああ。俺はその辺については詳しくないんだが、ルシエラは戦争って聞いたら何かわかるか?」
この街に長くいるルシエラなら何か知っているのではないかと質問を投げかける。するとルシエラは神妙な顔をして言った。
「戦争か……少し耳にしたことがあるさね。私たちが住むアマネがあるイタリカは最近隣国のグリシアと敵対関係にあるらしいさね。そんで最近その関係が悪化して戦争が起こるんじゃないかって噂されてるんさね」
「隣国か」
「アキヤマさんはまずここがイタリカってことも知らなそうなのです」
俺がせっかく真面目なトーンで話していたのに、アイラは茶々を入れてきた。
「うぐっ、まぁそれはそうなんだけどさ」
それはしょうがないだろう。知らないもんは知らん。
「なんと! あんた本当にものを知らないんだね。もはやバカというレベルの話じゃないさね」
ルシエラまでにもバカにされるが、決して俺はずっと住んでる自分の国の名前わかりませーんというようなバカなわけではない。本当に来たばかりで知らないだけなのだ。しかしそんな話信じてもらえそうにもないので、気にくわないがそういうことにして話を進めることにする。
「まぁとにかくだな。話を戻すと、その戦争が起こるとして、それに備えて魔法教会は生物兵器の開発を進めてるってわけだ」
「ルクスでの実験もそのためだったのかもしれないのです」
アイラは今度は真面目なトーンで、腕を組みながら頷いて言った。ルシエラは自分が知らない情報に突っ込まずに黙って話を聞いていてくれている。
「ああ。俺が掴んだ情報はそんなところかな。アイラはどうだった?」
「私は通り魔事件についての情報を聞いたのです。通り魔は闇夜に紛れ魔道士を刺し、必ず武器はナイフ。一命をとりとめた人の話によると魔法で対処しようとしても、なぜか魔法が効かなかったそうなのです」
「魔法が効かない?」
「ええ。まぁでもその話も眉唾ですが。全て噂話でしかないそうなのです」
……あとでサラに聞いてみよう。
「そか」
「結局魔法教会支部がきな臭いことしかわからなかったのです」
「そうだな……」
話が暗礁に乗り上げたところで、ルシエラが話に割り込んで来た。
「そんであんたら、まだしばらくこの街にいるのかい?」
「ん? ああ、まだ調査する必要がありそうだからな」
「なら倉庫、引き続き使ってくれていいよ」
ありがたい申し出だったが意図がわからない。
「いいのか?」
「ああ。ただし、面白い話があれば私にも教えて欲しいさね」
「この話に興味があるのか?」
「ああ。面白いことはなんだって知りたいもんじゃないか」
怖いもん見たさみたいなやつか。老婆に見えて中身は若いから、若さゆえのってやつなんだろう。
「わかった。ありがたく使わせてもらうよ」
「片付けの方はもういいのです?」
「それぐらいは私がやるさね」
そして、アマネでの調査は続行するということでその話は終わりになった。その日はそれ以上できることもなかったので、アイラを置いてまた、貧民街に行くことにした。




