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magi code  作者: ロジカル和菓子
1章 始まりの街、ルクス編
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幕間 〜夢の世界〜

 トントントン


 何かの音が聞こえる。そして足音が近づいてくる。


「ご飯、できたよ」


 それは包丁の音だった。リズムよくなっていたのは何かを刻む音。


 なんだろう。……ああ、これは記憶か……いや、あったかもしれない未来でもあった。


「アキヤマくん、早く起きて」


 起こしに来たのは長い髪の女性。エプロン姿で、逆光で顔は見えない。


「あと五分〜」

 気がつくと甘えた声で答えている。


「ご飯冷めちゃうよ。それに、仕事でしょ」


 その女性に怒られ、仕方なくベッドから起き上がり、会社に行く準備をする。そう、俺は働いているんだ。起きて会社に行かなければ。


「早く行かないと遅刻するよー。私ももう出るからね。しゃんとしなよ」


 女性は支度を済ませたようで、先に出て行ってしまう。


「いってらっしゃーい」


 俺がそういい終わる前にドアがバタンと閉まる。早く仕事に行かなければ。急いで彼女が用意してくれた朝食を口に詰め込み、スーツに着替えて家を出る。


 しんどくても彼女と結婚を考えているならちゃんと働いて稼がないとな……自然とそんなふうに思っていた。











 ふと目の前が真っ暗になる。そして次の瞬間、目の前には再び自分の家。同じ部屋、同じベッドの上。しかし、先ほどとは違い、女性はいない。目覚まし時計だけがやかましく鳴り響いている。


「飯、食わなきゃ……」


 ひとりでに声が出る。体は勝手に会社に行く準備をしている。朝食はもちろん用意されていない。用意する人がいないのだから。当たり前だ。部屋には飲み終わったビールの缶が片付けられずに積まれている。ああ、行かなきゃ。







 ふとまた目の前が真っ暗になり場面が変わる。また家だ。代わり映えのしない自分の部屋だ。


 声が聞こえる。


「……だろ!!!!」


「……そんなことないよ!!」

 

「お前だって、……だろ!!!」


「違うよ……??? ……!!!!」


「……!!! ……!!! もういい……終わりにしよう」




 激しく言い合う声が聞こえる。


 片方は、自分の声だ。勝手に口から声が出ている。終わりってなんだ……


 終わり……


 また目の前が真っ暗になり場面が変わる。







 

 今度は駅のホームだ。……俺は線路を見つめている。


「こんなのってないよな。いっそここに歩いていってしまったら……ダメだ。人様に迷惑をかけるなって親に散々言われたっけ」


 また勝手に声が出た。駅のホームから線路を見つめていたが、電車が来たので乗り込んで行く。ぎゅうぎゅうづめになって運ばれる体。


 ああ、いてえ、いてえって。


 おっさん足踏むなよ。


 おばさん香水がくせえよ。


 ああ、なんでこんなにしんどいんだ。


 そこで目の前が真っ暗になる。











 また場面が変わった。……暗い。今度は場面が変わっても暗いままだ。


 ここは、どこだ。


 体は前に進んでいる。鳥たちの声が聞こえる。……ああ、ここは、あそこか。……スタート地点。


 物語の始まり。富士の樹海。……終われば始まるんだから、早く終わってしまおう。


 穴はどこだ。あの穴は。


 異世界へと続く穴を探し歩く。


 そこで今度は目の前が真っ白になる。









「アキヤマくん……!!! なんで・・・!! なんで? ……謝りたかったのに……やり直せると信じてたのに……ああああぁぁぁ!!!」


 誰かの泣き声だ。声の方を見ればそれは言い合っていた女性だった。


 なんで、そんなに泣いているんだ。その黒い箱はなんだ?


「親不孝者が……ばかもんが……」


 これは……親。泣いている。この箱は……棺か。自分の死体を宙から見つめている。


 違う。


 俺は死んでなんかない。


 死のうとはしたけど、死ななかったんだ。


 なんだこれは。


 女性と親と、同僚と。泣いている人と、無表情の人。


 それは……自分の葬式。


「なんで何も言わずに死んじゃったの……うわぁぁぁぁん!!」


 女性は俺の顔を見て泣き続ける。


 ……違う。こんな光景知らない。見たくない。


 やめてくれ!!!


 やめてくれ!!!


 やめてくれ!!!


 そう叫び続け、目と耳をふさぐ。








「君はなんで全部投げ出してしまったんだい?」


 それは自分の声だった。


 耳を塞いでいるはずなのに。なんで聞こえるの。


「なのになんで今そんなに頑張っているんだい?」


 うるさい。消えろ。


「どうせまた、諦めるだけだよ。そっちの世界でも」


 何も言うな。お前は誰なんだ一体。


「僕はお前さ」


 目を開けるとそこには自分がいた。しかし瞬きをした瞬間にいなくなる。

なんだ、これは?


くそ。


くそ……!


くそ……








 しばらくすると再び声が聞こえて来た。


「……マさん!! ……キヤマさん!!」


 なんだろう。うるさいなぁ。


「……アキヤマさん!! アキヤマさん!!」


 そこでバッと目を覚ます。その声はアイラのものだった。


「アキヤマさん! 大丈夫ですか? 随分うなされていたようなのですけど」


「あ、ああ。大丈夫だ。悪い夢を見てたみたいだ。すまないな」

 大丈夫と言っては見たものの、朝なのに疲れきったような感じがする。


「しっかりしてください。今日から魔法協会アマネ支部の調査に行かなくてはならないんですからね!! あ、でも無理は禁物なのですよ」


 アイラは心配してくれているのが目に見えてわかったし、言葉からも伝わって来た。


「ああ。ありがとう」


「何か飲み物持ってくるのです」


 そう言うとアイラはトテトテと部屋の外に出ていった。揺れる栗色の髪が愛らしい。


 一体あの夢はなんだったのか。ただの悪夢だったのか? 単に新たな土地で慣れないことをする不安から来たものなのか。そうならいいのだが。


 アイラがあたたかいお茶を持って来てくれたので、落ち着いてそれを飲む。ずずずずと音を立てて飲む。心がおちつく味だ。


「それでは、今日の作戦ですが。いいですか?」


「ああ。大丈夫だ、続けてくれ」


「今日はとりあえず街の様子を調べてくるのです。魔法協会の内部の情報はそう簡単には手に入らないので、まずは情報収集といくのです」


「ああ、わかった」


 正直すぐに動く元気などなかったが、やることがあったほうが気がまぎれてよいかもしれない。そうして俺とアイラは街の様子を調べる、という一つ目のミッションを各々開始することになった。


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