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magi code  作者: ロジカル和菓子
5章 封印の心臓編
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心臓の在処②

5章終了の130話まで予約投稿が完了しました。

とりあえず毎日18:00更新です。

 俺はサラの心臓が入った立方体を持って、彼女が座り込む場所まで急いだ。


「ようやく、私の一番大切な部分を取り戻すことができた。ありがとう。アキヤマくん」

 サラは微笑んで、俺から立方体を受け取った。


「でも、どうやってそれを元の場所に戻すんだ?」


「簡単なことさ」

 サラが右手の人差し指をパチンと鳴らすと、半透明の障壁が消えた。その瞬間、心臓から紅色の血液が流れ出る。


「おい! 大丈夫なのか?」


「慌てない慌てない」

 サラは大きく顎を開くと、自分の心臓を、剥き出しの心臓を丸呑みにした。ごっくん、と飲み込むと、彼女の体は神々しく光り出した。


「グロっ……」


「戻った! 戻ったよ! アキヤマくん!」

 サラは満面の笑みで、俺の胸元に飛び込んで来た。身長が低いので、姪っ子がいたらこんな感じなのだろうか、と思う。


「これで、ようやく本来の目的が果たせるね」


 そうだ。サラの心臓を取り戻したのは、あくまで、目的のための目的のひとつ。サラの体調の問題も解決できて、一石二鳥でもあるのだけれど。


「ああ」俺は深く頷いた。「シンシアを取り戻しに行こう」


「向かうは神都、アポロスフィア。だな」

 サラはにっこりと笑った。


「あ、そうだ。ちょっと待ってくれ。力を取り戻したサラにひとつ、頼みがあるんだ。さっき、サラが入っていなかったほうの宝箱と話をしていたんだけど」


 サラは幼児のように可愛らしく首を傾げた。


「来てくれ。見た方がはやい!」


 そうして俺はサラの手を引き、先の宝物殿へと急いだ。


「どうした? 嘲笑いにでも帰ってきたのか?」入って早々、宝箱はいった。


「これは驚いたな……」サラは口に手を当てている。


「こいつ、どうにか救ってあげられないか?」


「え? この魔物を救うのか? なんでそんなことを? 何かの実験か?」


「いや、違うよ。可哀想だろ。こんなとこにひとり残していったら」


 サラは疑惑の目で俺を睨んだ。

「君は不思議な奴だな。また魔物に情を抱くなんて」


「そうだ」と宝箱はいった。「さっさと出ていっちまえ。ここはもう時期崩れる。役目を終えたダンジョンをマドルカが維持する理由はないからな」


「なるほど。ならさっさと、アイラくんと合流して脱出しよう」


「できるの? できないの?」

 俺が口にした途端、サラの動きが止まった。


 宝箱の言う通り、地面が揺れ始め、ダンジョンの崩壊が始まったようだった。


「できない、だと?」


「サラには難しいならいいよ。できれば、リブロにこいつを移せないかと思ったんだけど。マドルカにはできてもサラにはできないか」


 カチン、と音が聞こえたような気がした。


「暴食の魔女、サラ様を舐めるんじゃない。禁術だぞ? 魔法協会が定めた規定に従う私ではないけれど、禁術指定された魔法陣を使うんだからな! 使えるけど!」

 サラはぷっくりと頬を膨らませ、ポケットにぐしゃぐしゃになって入っている紙束の中から、赤色の紙に白い線で書かれた魔法陣を取り出し、左手に持った。そして、右手を俺の太ももに当てた。


「サラさん?」


「勘違いするんじゃない。動脈血の近くには魔力が漏れ出しやすいから、それを吸い取って利用するんだ! 私は病み上がりなんだからな! アキヤマくんの願いを叶えるのに、私ばかり魔力を使うのはおかしいだろ!」


 正論だった。


「ラン!」とサラが唱えると、赤い魔法陣が光を放つ。それを持つ左手が宝箱に触れ、次に俺のリブロに触れた。

 サラに触れられている太ももが焼けるように熱くなる。局部に触れないかヒヤヒヤする俺の心中とは裏腹だった。


「うぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!???」

 宝箱から断末魔が聞こえた。


「おい、サラ! 本当に大丈夫なのか?」


「魂をひっぺがすんだ! 痛くないわけないだろ! でも、大丈夫だ! 腐っても魔物だろ」

 サラは叫んだ。


 俺は祈りを込めて、目を瞑った。

 数秒後、太ももに感じていた熱さは後を引いていた。


「どうなった?」

 俺はリブロに視線をやる。表紙には、宝箱についていた悪戯好きそうな目と口がついていた。


「成功だ」


「やった!」


「だが、安心している場合でもないらしい」

 サラは天井を眺めた。揺れは激しくなり、天井は崩れかかっている。


「急ごう!」

 俺は元来た方向に駆け出そうとしたが、サラは宙に手をかざし、一言。


「クリエイト」

 サラの手元に、木と枝で作られた箒が姿を現す。

「随分と乗っていないが問題ないだろ! 後ろに乗れ! アキヤマくん!」


 サラは箒に跨り、俺はその後ろに跨った。瞬間、箒は浮き、超速で前身を始めた。


「うっひゃああああああ」


 風が顔を掠めていく。俺は必死に彼女の体に抱きついた。


「ちょっと、抱きつきすぎじゃないか?」


「え? なんだってぇ!?」


「だから、抱きつきすぎ、って、コラ! どこ触ってるッ……んッ! 脇腹は弱いからやめ……ッ!」

 サラの操作する箒は右往左往しながら、ギリギリのところで壁に激突せずに全速力で洞窟を潜り抜けていく。


「早いし動きすぎだ! 大丈夫なのか!?」


「それは君が変なところ触るからだろッ! ひゃんッ!」


「風の音で聞こえねぇよ!!」

 俺は必死に彼女の細い体躯にしがみつく。振り落とされれば命はない。かといって壁に激突しても命はない。命運は目の前の幼女(姿の魔女)に託されている。


「頼むから、スピード落としてくれぇぇぇぇ」

 俺の悲しい叫びは、崩れていく洞窟の音にかき消された。

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