封印の洞窟③終
長らく留守にしておりましたが、ようやく再開のめどが立ちました。最低でも毎週末に一回ぐらいは更新していきたいと思います!
「さて……と。一旦戻っていいぞ。」
サラがイカバネに告げると、イカバネはこくりと頷いた。イカバネの体がぼろぼろと崩れて土に還っていった。
俺が目を見開いてそれを見ていたからなのか、サラはフォローを入れる。
「なぁに、また召喚すれば湧いて出てくるさ。それよりも、今はこの扉の先だろう?」
確かにサラの言う通り、現状急ぐべきはこの洞窟を進むことだ。俺は意を決して扉に向かい合った。
扉を開くと、その先には紅蓮に輝く鱗を持つ竜――ドラゴンと呼ばれる存在、の姿があった。軽く息をするだけで鼻先から黒い炎が噴出される。鱗は金属のような光沢があり見るからに堅そうだ。
俺は一瞬でサラの手を止めた。そして一旦扉を閉めた。
口パクで声を出さずに伝える。
何?あれ。
「何って、ドラゴンだが?」
サラは平気そうに言う。
アイラの方を見ると、アイラも驚いて猫耳をぴんと張り、重心を低くして警戒の姿勢を取っている。どうやら驚いているのは俺だけではなかったらしい。
良かった……。いや、良くはないが……。
「あ、あれか?前に説明してくれたゲカの強化したやつか?」
「いや、違うな。あれは正真正銘本物のドラゴンだ。それも、古今東西どこを探してもあれほど立派なドラゴンは見つかるまいと証言できるほどのな」
サラは苦笑する。
「えっと……俺たちは今からあれと戦う訳か?」
「戦う以外に作戦があれば聞くが?」
サラは何か作戦があるのか?とばかりに首を傾げてくる。
ないよ!
「でも、お師匠様。さすがに今の私達でも古の存在であるドラゴンと戦うには力が足りないと思うのです」
アイラが俺と同意見を出してくれた。そうだよな。
「なら、帰るか?」
サラの眼は一切の冗談を含んでいなかった。
「覚悟がないなら帰るべきだ。ここからは、こういう戦いになる。命がけだ」
「いや、覚悟がないってわけじゃない。ただ、準備は必要だろってことだよ」
俺は言い訳がましく言った。
「ま、そう言われるとそうだ。ここからは君達の応用力でなんとかしないといけない領域だから、何も言わずに戦ってもらおうと思っていたが、私でさえ敗北必須のモンスターに対してそれは厳しすぎるか」
サラは一人で納得すると、俺とアイラの肩を持った。
「あのドラゴンの特徴は何といっても膨大な魔力から繰り出される黒い炎だ。通常の炎魔法と違い、水では消えないし、黒い炎でできた火傷は魔法で治すことが出来ない」
「なんとも凶悪な攻撃だな」
俺は胃が痛くなった。
「ああ。これまではある程度私の魔法でなんとかできるレベルだったが、この先は攻略方法が私にもわかっていない領域だ。油断すれば死ぬ」
サラの言葉は脅しではなく忠告だった。肩を握る手に力が入っている。
「死なねーよ」
俺は自分の肩を握るサラの手に自分の手を重ねた。
「俺には必殺の『リブロ』もあることだしな」
「そうです。さっきは怯んでしまいましたが、私も強くなったのです!今度は私がお師匠様を助ける番なのです!」
アイラの猫耳が勇敢にぴょんと跳ねる。
「私はいい仲間に恵まれたものだな。死んで……くれるなよ」
サラは俺達の肩から手を外し、再び扉に手をかけた。
覚悟を決めて踏み出しても、やはり扉の先にいたのは恐ろしいドラゴンでしかなかった。
しかも、今度は瞑っていた目を開け、俺達に視線を向けた。確実に俺達を認識している。地響きのような低い声が固い鱗で覆われた口から発せられる。
「貴様ら、何者だ?」
「私は知っているだろう?何回も戦ったじゃないか」
サラは余裕をもって話しかける。
「サラだよ。サラ・アイバーンだ」
「ふん、何回もケツを焦がされて泣いて逃げ帰った小娘か。わらわにまた泣かされに来たのかの?」
「泣いてなどいない!!」
サラは両手を上げて大声で否定した。
そう必死になると逆に怪しい。
「それに、今度は負けないさ。今回はお前を攻略しに来たんだからな」
サラは胸を張って言う。
「私は前よりも弱くなっているが、今日はこの二人がいるからな」
「そうかの。仲間を連れて来たのか。弱きものが考えそうなことじゃな。まったく無駄で、愚かなこと。いくら弱きを束ねたとて、強きに勝ることはできない。それを今から証明してやるとするかの。冥途の土産に……な。会って数分じゃが、息絶えてもらうことにするかの」
真紅のドラゴンは岩のような巨体を起こした。
「来るぞ!」
サラの一声で俺達の硬直は解け、戦闘が開始された。




