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magi code  作者: ロジカル和菓子
5章 封印の心臓編
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サラ先生の魔法講座・最終編③

「無抵抗な相手に攻撃するのは気がひけるが、本気でいかせてもらうぜ」

 俺は魔法陣の書いた紙を構えて言う。


 球の中からサラの声が返ってくる。

「誰がいつ無抵抗だと言った?」


「は?」

 俺は耳を疑った。だって、そういう試練のはずだろ?

「さっき、そう言ってただろ?」


「あれ? そんなこと言ったっけ? やっぱりやめ! それじゃつまならないからな!」


「はああああ!?」

 相変わらず、むちゃくちゃな奴め。


「来ないならこちらから行くぞ。アキヤマくん。ラン!」

 サラの籠もった声。サラの魔法が実行され、球体からとげのようなものが飛び出してくる。それは俺めがけて高速で飛翔した。


「くそ! 結局命懸けなのかよ!」

 俺は逃げ惑いながら魔法陣を構える。今回は短期決戦だ。

 この魔法は位置の見極めが肝心だ。球の位置までの距離を目算で出すと俺は魔法陣を発動させる。

「ラン!」


 発動した魔法は、まず基準となる座標を決定するところから始まる。サラの位置を中心にすることは成功。

 そこから十字に魔法陣が4つ外に勢いよく飛んで行き10メートルほどのところで止まった。次にそれらの魔法陣が同時に発動し、風魔法が螺旋状に舞い上がっていく。螺旋の風の流れはどんどん早くなって行き、サラの入った球体を包み込んだ。

 悩みに悩んで絞り出した答えは、『parallel』。

 魔法文の最後に『end』ではなく『,to circle 2 and 3 and 4 and 5 in prallel』とすることで魔法陣の並列処理を可能にした。並列処理によって一つの魔法陣に割かれる魔力は減り、風魔法の螺旋は効率的に力を増して行った。


「なんだこの魔法は!? うわぁぁぁぁぁ!?」

 サラを包みこんでいた土の球体は割れ、中から鎧に身を包んだサラと盾が露出する。風の刃の勢いはどんどんと増していき、サラの盾は縦横無人に切り刻まれ、とうとうサラ本体の鎧にまで傷をつけ始めた。


 ようやく勢いが止まると、目の前には、鎧を打ち砕かれ、ほぼ裸で横たわるサラの姿があった。しかし肌には傷一つない綺麗さだった。それは暗に、最後の防御壁は、俺の最大魔力を注ぎ込んだ魔法でさえ、傷一つつけられない要塞的防御力であることを示している。


 生傷がないことを確認して、俺はホッとした。


「おい、大丈夫か」

 俺はサラに駆け寄り、彼女を起こそうと背中に手を回す。


 ――問題はそれからすぐに起こった。


「今の音は何なのです!? 敵襲なのですか!?」

 アイラはサラの家から出てきて、すぐにその惨状を目にした。サラは全裸で地面に横になり、俺はそれに覆いかぶさるような体勢。


「ぴゃーーーーーー!? お師匠さま!?」

 アイラは狼狽しながら叫ぶ。そして混乱しながら俺を睨む。声も出さず、口パクだけで、

「オ、マ、エ、ヲ、コ、ロ、ス」


「いや、あの。誤解だから。本当に、誤解だから。修行の一環で」

 俺はじりじりと後ろに下がりながら言い訳を探す。しかし、いい言葉が見つかる前にアイラの怒りが爆発する。


「修行の一環でお師匠様を裸にひん剥いて襲いかかるのですか!? 問答無用、なのです! エクスボア!」

 アイラは俺に向かって右手を突き出し、インクルードした魔法を放つ。右腕の光り具合からして、彼女の魔法は以前見たときより、明らかに力を増している。


 ――死。

 思わず頭に浮かんだのは、その一文字だった。


 刹那。


 俺はポケットから一冊の本を取り出した。それは、本であり、魔法陣の集合体でもあった。

「ランーチャプター0、ゼロの章。食え。リブロ」


 本が光り、アイラの魔法が俺に近づいた瞬間、彼女の魔法を包み込んだ。


 そして次の瞬間。

 まるで風ひとつ吹いていなかったかのように爆発は消え去った。


「出来たら、隠しておきたかったんだけどな」

 俺が言うと、アイラはぽかんとした顔で放心した。目の前で起きたことを処理仕切れなかったのだろう。自分が俺を殺すほどの威力で魔法を放ってしまったことも、俺がその魔法を目の前で消し去ったことも。


「な、なんだね今の魔法はぁ!?」

 文字通り丸腰のサラが起き上がり駆け寄ってくる。

 服を着ろ、服を。


「てか、起きてたのかよ!!!」


「あぁ。面白そうだから寝たふりしてた」

 俺の渾身のツッコミを真顔で返すサラ。フザケンナ。


「そうです! 今の魔法は何なのです?」

 アイラもにじり寄ってくる。


「いや、まずは落ち着け、な?」


「教え給え!」


「教えるのです!」


 すぐ目の前にはサラとアイラの顔。

 俺は爽やかな青が広がる空を見上げる。

 これは、散々な一日になりそうだ。

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