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magi code  作者: ロジカル和菓子
5章 封印の心臓編
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サラ先生の魔法講座・最終編①

 サラは意気揚々と本棚に歩いていくと、一冊の本を手に取り、テーブルのところまで戻ってきた。バンと勢いよくテーブルにその本を置く。

 見ると、古く分厚い表紙だがタイトルは書かれていない。


「これは?」


「これが魔導書。世界に七つしかないものだ。丁重に扱いたまえよ?レディに接するときのようにな!」


 サラの言葉を無視してその本のページを捲った。


 中身は、章のタイトルを除いてすべてのページに魔法陣が書かれていた。ペラペラとめくっていくと、そのどれもが連鎖するように魔法陣から魔法陣へと力が伝わる仕組みになっているようだった。魔法陣1の文末のendがto circle2となり、魔法陣2の発動へとつながっている。

 魔法陣一つで抱えきれない命令を複数の魔法陣を用いることでクリアしているようだ。しかし、そのどれもが直列、つまりは魔法陣1から魔法陣2、魔法陣2から魔法陣3へとつながるもので、力の伝達が遅そうなことに気づいた。


「これ、並列に出来たりしないのかな」

 俺が聞くと、サラは「へいれつ?」と聞き返してきた。


 あ、そうか。俺とシンシアぐらいしか魔法文読めないんだっけ。


「しかし、言語が明らかじゃないから、どう表現すればちゃんと発動するのかはわからないな……」

 俺がぶつぶつとしゃべり続けていると、サラが頬を膨らましていることに気づいた。


「え?」


「せっかく大きな顔をしていろいろ教えてやろうと思ったのに……」

 子供みたいに背筋を丸めてしゅんとするサラ。


見た目で見たら年相応の反応なんだけど……。実際は300何歳だからな。


「すまん、続けてくれ」

 俺が言うとサラは再び目に輝きを取り戻した。


「うむ。魔導書とは、魔法陣の重なりだ。一枚目の魔法陣から、二枚目の魔法陣へとつながり、通常よりも多くの魔力を必要とするが、強力な魔法を使うことが出来る。ロザリオとかいうのが使ったのはおそらくそれだろう。私とマドルカ以外の誰かのだろうな。一体どこで手に入れたんだか……」こほんと咳をしてサラは続ける。「今の君なら、作れるのではないか?たくさんの魔法を目にし、学んできた君なら」


 サラの問いに俺は静かに頷いた。


「ああ。でも、多分作るだけじゃだめだ。俺には、魔力がそんなにないんだろ?例えば、五枚の魔法陣を使う魔法なら、直列につなげば五枚分発動しきるまで魔力を使い続けなければならない」


「そうか、君はケツの穴が……」サラは同情の目を俺に向けた。


 キッとサラを睨むとサラは咳払いでごまかした。


「とにかく!直列じゃだめだ。並列に出来れば……。例えば、1枚目の後に、2,3,4,5枚目の魔法陣を並列につなぐことが出来れば、後に続く魔法の規模が小さくても、二枚分の魔法消費で済んで魔法の多様性も高められる」


 俺が言うとサラは神妙な顔つきで答える。


「そういうことか。しかし、そんな魔法陣聞いたこともないぞ。アキヤマ君とは言え知らないものは書きようがないだろう」


「確かにな……」


 どうしたもんかね。


 分ける……。


 separate,split,share,divideとかいろいろ考えられるが……。そもそも正しい用法も覚えているか怪しい。


「最終編は、実践だな。アキヤマ君。実験して試してみたらいい。とにかく実行あるのみだ!」


「確かに……頭を捻ったところでどうなるわけでもないしな。ありがとう、サラ」


 俺が言うと、サラは紙とペンを持ってきてニコッと笑って応える。


「但し外でやってくれたまえよ」


 俺は目の周りの筋肉を硬直させながら「わかったよ!」と返事をしてペンと紙をひったくり、家の外に出た。


 うしろから「アイラ君の看病は任せてくれよ。私のチェックの期限は二日だからな」と無茶な期限を告げられたが、俺は気にせずにそのまま外に出ていった。


 そして、それから、試行錯誤の時間が始まった。片っ端から覚えている英単語でコードを作っては失敗し、魔法陣は発動しなかったり、暴発したり。散々な目にもあった。


 魔法陣の並列処理。


 それを完成させることができれば、魔法に新たな革命を起こすことが出来る気がする。

 それから、期限ぎりぎりまで考えを凝らし、結論にたどり着くのにそう時間は掛からなかった。しらみつぶしに試していくと、その当たりは最後に引き当てることになってしまったが。

codeの肝となったのは、パラレルという言葉だ。プログラミングにおいても並列化というものは重要視されていたため、なんとか頭の端に残っていた。


そして、並列処理化された魔法陣、俺の新たな武器を手に、サラ相手に試験を行うことになった。自分のことに夢中でアイラを気にかける暇がなかったが、あいつはあいつで頑張っているだろう。


 期限の日。俺とアイラはサラの家でどちらが先に試験を行うかを話し合った。


「というわけで、今日が約束の日だ。準備はいいだろうね?どちらから試験を行う?場所はこの前の森でやろうと思うが」サラは腕を組んでまじめな表情で言った。


 その目の前に立つ俺とアイラはいつにいなく緊張してサラと向かい合っていた。


「ど、どうしますか。わ、私は起きてからまだ時間も経っていないのでできれば後の方がいいのですが……」


 アイラ、弱気発言。


 それを見抜き目を光らしたサラの一言。


「じゃ、アイラが先だな。アキヤマはここで待っているように」

 サラはずびしと俺を指さすと、しり込みするアイラの尻尾を引っ張って、家の外へと連れて行った。そこからのことは、見ていないのでわからない。


 が、しばらくして、一際大きな爆発音が起きたかと思うと、煤まみれのサラと申し訳なさそうなアイラが帰ってきて、事情を大体察知した。


 けほけほと咳き込みながら、「次、アキヤマ、外に出て」とサラは言う。


 アイコンタクトでアイラにどうだったか聞くと、アイラは無言で頷いた。


 どうやらうまくいったらしい。


 やる前の自信のなさとはすごい違いだ。


 サラが家の扉を再び開き、俺はさらに続いて外に出た。


 そして、サラの魔法講座(もはや講座ではないが)……最終編が始まった。 

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