royal battle royal⑨終
水の中は、音もなく静かだった。身動きは取れず、息も出来ない。そんな状況で俺は、笑っていた。
これまで俺が陥ってきた困難に比べれば、こんなの屁でもない。……それに。
多少不利に陥ってはいるが、大筋読み通り。
俺はコントローラーを操作して再びゴーレムを動かした。
ロザリオは完全に勝った気でいて、余裕の表情。
ロザリオのゴーレムは締めだとも言わんばかりに俺のゴーレムに襲いかかっていた。俺は自分のゴーレムをス○ブラ、あるいはストリート○ァイターよろしく動かして攻撃をかわす。
ロザリオが何かまた嘲笑しながら言っていたが俺の耳には物理的に入ってこない。
ロザリオの10体のゴーレムは次々と俺のゴーレムを狙って攻撃するが、俺のゴーレムはひらりひらりとかわしていく。
……しかし、それにも限界がある。
とうとう俺のゴーレムはロザリオの10体のゴーレムに取り囲まれ、ロザリオはとうとうこらえきれずに大きく口を開けて笑い出した。
俺のか細いゴーレムはとうとう逃げ場もなく、ロザリオのゴーレムの同時攻撃によって砕かれた。
ロザリオが俺の方を見て何かを言っているのがわかった。どうせ勝利宣言でもしているんだろうが、それはまだ早い。俺はにやりと笑って逆に余裕に事態を見守った。
俺のゴーレムがロザリオのゴーレムの攻撃によって砕かれた瞬間。
――爆発四散したのである。
それは多少予想外だったようで、ロザリオはその様子を二度見した。
しかし、その爆発によってロザリオのゴーレムが損傷を受けるようなことはなかった。
ロザリオは再び笑い出す。
が。
爆発と同時に、小さな粒が辺りに飛んでいたのに奴は気づかなかったらしい。その粒は水の竜にも飛んできて、当たった瞬間に成長を始め、根が水の竜に張り巡らされる。俺はその一枝を掴み、必死に体を竜の外へと乗り出した。
地面に落ちると俺は大きくせき込んだ。そしてそれと同時に周りの様子を見た。
ロザリオは何が起こったのか分からず目を大きく開いている。それに、ロザリオのゴーレムたちは攻撃を終えたところで動きを止めている。
「い、一体何が!?」
ロザリオは動揺しながら俺の方を見た。そんなロザリオを無視して俺は動かないゴーレムを横目に見ながら一気にロザリオとの距離を詰める。
「何が起こったか説明してやろうか?」
俺はにやけながら聞く。
「何を!」
「ま、お前を殴ってからだけどな!」
俺は拳を握りしめ、叫んだ。
「近付いただけで偉そうに! シールドエリア!」
ロザリオが叫んだ。最後の言葉はショートカット魔法だろう。名前から察するに緊急時の防御用ってとこだろうか。
でも、関係ないね。
「ラン」
俺は冷静に呟いて、握りしめたままの拳をロザリオの顔面めがけて振り下ろした。ロザリオの魔法は発動せず、俺の拳は無事にロザリオの顎にクリーンヒットした。ロザリオのメガネが床に落ちて割れ、パリンと音が鳴る。
使ったのは、魔導学園のときに使った魔法をキャンセルする魔法だった。
魔力の消費が激しいこと、効果範囲が狭い事が難点だが、近付いてしまえば生身での攻撃が当てられるという大きすぎるメリットがある。
ロザリオはそのまま床に伏して、気を失った。こう何度も人の顔面を力の限り殴りつけるというのは、あまりほめられたものではないかもしれないけど。
俺の拳はじんじんと痛みを感じていた。
人を殴れば、拳は痛む。
「俺はさっきロザリオのゴーレムに水を放った。でも、それはただの水じゃない。粘度が高く、一旦体につけばなかなか取れるもんじゃない。そして俺のゴーレムに仕込んであったのは、ある植物の種だ。
これはある奴に教えてもらったことなんだが……急速な成長をする種類らしい。そしてその大きな特徴は、魔力と水を栄養分にして育つということ。幸い水の竜にはその両方があり、一瞬で成長して俺は脱出できたというわけさ。
ゴーレムのほうは俺の放った水があったから成長し、ゴーレムの内部まで植物は根を張り、ゴーレムは動けなくなったという訳だ。ああ、ねらい通りに動いてくれて本当に助かったよ。って、もう聞いていないか」
俺は気を失ったロザリオに説明したが、ロザリオは既に気絶している。
「アキヤマさん!」
アイラは花嫁衣装のまま、泣いて化粧をくずしながら俺の胸に飛び込んできた。
「だから大丈夫って言ったろ」
「本当に、アキヤマさんは、予想外のことしか、しでかさないのです」
アイラは俺の胸に顔を押しつけて泣く。
「でも、ありがとうなのです……」
「いいんだよ」
「それで、私の伴侶になる男っていうのは……?」
アイラは赤らんだ顔で俺を見た。
「い、いや。それは単にあそこで啖呵を切っただけって言うかなんていうか」
俺が必死にいいわけをするとアイラは笑って俺の胸をたたいた。
「本当に、バカ……なのです」
そうして、魔法教会の目論見は阻止され、独りよがりな結婚式は中止という形で幕を下ろした。 目論見は、阻止された。
……はずだった。
「あーあ。だめじゃん。ロザリオ。負けちゃってるし。ダサ☆」
声の方向を見ると、階段から上ってきたのは、ジャックでもシンシアでもなく、アリスだった。 アリスは気を失ったシンシアを抱えている。
「アリス……お前!」
「きゃはは☆ そんなにビビられたら笑っちゃうよ。安心して。別に今からアキヤマをどうこうしようって訳じゃないから」
アリスは動揺する俺を見て笑った。
「ビビってねぇ!」
「あっそ。ま、いいよ……当初の目的は果たした訳だし」
アリスは抱えたシンシアに視線を移して言った。
「なんだと?」
「ごめんね、仲良くお話している時間はないみたいなんだ☆」
アリスは一瞬で跳躍すると、ロザリオの元まで移動し、ロザリオの服のポケットをまさぐった。アリスはロザリオが使っていた本を取り出すとほっと一息。
「ああ、よかった。コレは無事だったか」
「うう……」
ロザリオが目を覚ましたようで、アリスに気づくとロザリオはおびえた目でアリスを見た。
「お前は!! 人形! なぜここに!」
ロザリオは相当動揺した様子で叫んだ。
「なぜってそりゃ、お前が情けなく負けたからに決まってるじゃない☆」
「待ってくれ。まだ俺は負けてない。魔法教会だって俺を必要としているだろう。その本を使えるのは俺ぐらいのものじゃな……」
ロザリオがそこまで言った途端、アリスはロザリオの顔面を再び殴打した。そのあまりの激しさにロザリオの歯は何本か折れてしまっている。
「ま、まっへ」
「残念☆ 待たない」
「ぷぎゃっ」
アリスは驚異の速度でけりを放ち、ロザリオの首は180度回った。
「まー、結婚はうまく行かなかったみたいだけど、この本とこいつがいれば大収穫。それじゃあ、負け犬の処理も済んだし、帰ることとしますかね」
アリスは俺ににこっと微笑むと、恐るべき高さまでジャンプした、
かと思えば、いつの間にか飛んできていたドラゴンにうまい具合に着地し、アリスは颯爽と飛んでいく。
「シンシアちゃんは、ちゃんと使ってあげるから安心してね☆」
「待て!」
俺は叫んだが、アリスはソレを聞いてにやりと笑う。
「待たない。どうしてもこいつを取り戻したいのなら、神都へ来たら? ま、まず来れないと思うけどね」
アリスはそれを最後の言葉に遠くへと飛び去ってしまった。残された俺とアイラは言葉もなく立ち尽くすことしかできなかった。
祝、100話達成!
感想コメント等くれたら泣いて喜びます。
まだmagicodeは続きますので、どうぞよろしくお願いします!




