ずっと一緒だよ♪
4話目ですよろしくお願いします。
R15注意です。
『えーとね、まず目を瞑ってユウト君。そうしたら、教えてあげる♪』
『ええっ……この高さで目を瞑るのはさすがに怖いよサクラちゃん……』
『大丈夫だよ、サクラがこうやって……しっかりとユウト君を支えるから。だからお願いユウト君。少しの間だけで良いから……目を瞑って欲しいの。サクラから一生のお願いなの……』
『わ、わかったよ。僕も男なんだ!目を瞑るくらい平気さ……約束だからねサクラちゃん、目を瞑ったら教えてよ。ぜ、絶対だからね……はぁ、はぁ……望月家の悠斗なんだぞ僕。このくらいの試練は、サクラちゃんと一緒になれない事を知った日に比べればなんて事ない……!目を瞑るんだ僕!』
ユウト君は高い所がかなり苦手なのか、若干青い顔してるけど……過去の私のお願いに少し勇気を出したのか、必死な表情で額に汗を掻きながらゆっくりと目蓋を閉じ始めた。身体が震えているのが私の腕に、伝わってきます。
過去の私はユウト君が完全に目を瞑った事を確認すると……ユウト君のこわばった顔に近づけます。
『なんか、息が顔に当たってくすぐったいよ。サクラちゃんまだかな?目を開けて良いかな?』
『まだダーメ!んふふっ。それっ、ふぅーっ、ふぅーっ♪サクラの息がそんなにもくすぐったいのユウト君?』
『やめっ!くすぐったいってサクラちゃん!もうそろそろ、良いでしょ?目を瞑ったし教えてよ』
『えへへ♪もうすこしだけ……ユウト君の困ったお顔見てみたいな♪もう一回しても良い?』
『だ、ダメに決まってるでしょ!』
『んふふ、そうだよね。それじゃあ、ユウト君にだけ秘密に教えて上げるから静かにしてね?』
顔が強張っていたユウト君の顔がさっきよりも力が抜けて、少し緊張が取れたみたいです。
そんなユウト君に頬を僅かに緩ませて、過去の私はゆっくりと顔を近づけて……。
『んんっ!?』
『ちゅっ…んっ…』
ユウト君のまだ幼さが残る唇を、過去の私の緊張で震えている唇で塞ぎました。その感触は今回想中の私にも伝わってきて、ただ触れ合っているだけなのに頭の中がふわっとした気持ち良さを感じてしまいます。心の中までもが満たされているような、そんな幸せが全身を包みこみました。
未熟なキスの感触をもっと味わおうとユウト君の唇に唇を押し付ける過去の私は、顔が熱くて心臓が張り裂けそうなほどドクンドクンと鼓動する。
『サクっ……んぷっ……ん!?』
『んちゅっ♡……んんっ…ちゅぷ……はぁはぁ』
ユウト君の唇に触れ続けているだけで、甘く蕩ける痺れが背筋に流れて幼い私と今の私両方に未知の快感を感じさせています……。もっと…もっと……と腰に回していた手でぎゅっとユウト君を私に寄せて、身体全体をユウト君のお稽古でがっちりしてながら幼いゆえの柔らかさが残った身体に押し付けました。
『んっ……ユウト君、大好き…だから……』
『あ、ああっ!?き、きき!』
過去の私は名残惜しいそうしながら、ユウト君の唇から透明な橋を作りながら濡れた唇を離しました。
ユウト君と触れ合っていたのは、短い間だったかもしれませんが……私には長い時間触れ合っていたようなそんな錯覚がしています。
恐らくですがこれが私のファーストキスの筈です……この後の、私は異性とキスなんて出来ない状態でした。顔が認識できないし何をしても心が冷めてしまって、異性と遊ぶ気にもなれませんでしたから……恋して異性とキスするなんて縁の無い話です。
そしていきなりの事に、目を瞑っていられなかったユウト君は目を開けて私の事を赤く染めた照れた顔で言葉にならない言葉を発しました。その突然の事に慌てているユウト君をがっちりと腰に回した手で逃げないように掴んで、風の音が強く鳴る中……耳たぶまで赤く染めたユウト君の耳元に唇を寄せて過去の私はこう甘く囁いた。
『初めて会った時から好き……こんなサクラでも一緒に居てくれるユウト君が好き……これからずっとずーっと一緒にいてくれるユウト君が大好きだよ♡……だから……一緒にし…で、サクラとユウト君で一緒に天国で暮らそう……?これなら……ずーっと誰にも邪魔されないで一緒に居られるよね……えへへ♪』
『一緒にてん……ごく?……どう…してサクラちゃん?』
過去の私はニコニコと表情が笑っていて、心の底からユウト君とココから飛び降りて天国で幸せになれると信じているみたいなのが私には分かります……今の私でも分かるほど過去の私は狂っていますね。
ユウト君は私の言葉に身体を強張って、信じられないような目を私に向けます。その信じていたのにと言うような目を向けられても過去の私は、すでにココから飛んで誰にも邪魔されない世界で二人で幸せになる事ばかり考えているので気がつきませんでした。
『どうしてって……天国ならユウト君のお家の人に邪魔をされないでしょ?あそこならサクラと大好きなユウト君はずっと一緒に居られるよ……。ねっ?だからその手を離そうよユウト君……サクラにはユウト君に力じゃ勝てないから、一生懸命飛ぼうとしてもユウト君の手が邪魔して飛べないよ?……幸せになろうよ』
ココから過去の私の意識が興奮でふわふわして、何をしても怖くないような……そんあ状態になっていてユウト君がジャングルジムから手を離せば、二人で一緒に飛んでしまい。最悪……二人とも死んでいた筈です。今私が生きているのは、あの時頑張って耐えてくれたユウト君のお陰なのかもしれません。
『嫌だ……この手を放すものか!僕がこの手を放したら、細い身体のサクラちゃんが死んでしまうよ!それに死んだら天国でずっと一緒になれるなんて……僕は信じない!そんなデタラメ信じない!だからサクラちゃん、今の僕にはお父さんに刃向かう力が無くて弱い僕だけど……何時か……何時か僕に望月家で自由に力を振るえる立場になったら!その時、サクラちゃんを迎いに行くから待っていて欲しい!』
ユウト君は必死に愛に狂っている過去の私を説得しようとしていますが……過去の私の心の中は……。
どうして邪魔するのユウト君……?早く一緒に幸せになろうよ。このまま一緒になれないなら、飛んで天国で一緒になった方が良いよ……。もし、ここで止めたら……サクラと離れ離れになって許婚の子と結婚しちゃうんでしょ?なら、ここで飛んで天国に行って……悲しいけどもし一緒になれなくても。ユウト君が……その子と結婚が出来なくなるから、一緒に死んでくれないかな。そして……これからもずっと他の子の匂いがしない、永遠にサクラだけのユウト君でいてほしいの。
『んふふ、そんなに待てないよユウト君……。だって……だって……サクラは待っている間にその許婚の子と、ユウト君が嘘でも仲良くしてる所なんて見たくないの。それに……サクラは大好きなユウト君と一時も離れなくないから……ごめんね、我侭なサクラで。だから手を離して欲しいな……サクラの頭の中はユウト君の話を聞いた後でも、ココを飛んだ後の事でいっぱいなんだよ?ああぁ楽しみ……楽しみだねユウト君?天国でまずサクラ達が暮らすお家を探そうね!えへへ♪二人のお家だって……まるで新婚さんみたいだねユウト君?』
『僕はサクラちゃんを愛してる!だから僕を信じてよ!』
『サクラは何時でもユウト君の事を、信じてるの。だから天国に行っても、サクラの事を好きでいてくれるって信じてる♪きっと……天国にもユウト君を狙う人が居ると思うの。だからサクラが頑張らないと……ユウト君を取られちゃうよね?うん、頑張れサクラ!……なんて今から、気合入れてもしょうがないよね?』
うっとりとした表情をしていであろう過去の私を、未だにユウト君は諦めず説得しようとしているが……全然話を聞いてない過去の私。そして……その私を見てユウト君は突如何かを決断したみたいに、真面目な顔に変わるとすぅっと息を吸い込み腹を膨らませています。
良い考えだと思います。過去のこの公園のどこかに誰かが居る筈ですから、大声だせば助かる確立が上がりますね。だけど……そんな事を、今の私が許すとは思えません。
『すぅ……誰かぁ……いっ!?』
『んふふ、だぁへか、よんひゃ……んっ……だめひゃよ?』
『くっ、しまった!まってサクラちゃん!』
『んぷっ♡……えへへ、だぁーめ♪……じゃあね、天国でまた会おうねユウト君』
ユウト君の筋肉質な首筋に過去の私が強く噛みついています。そして……その唐突の痛みに油断したユウト君は、ジャングルジムを掴んでいた手から力を抜いてしまったみたいです。
過去の私は細い身体に痛みを感じながらも、ユウト君を道連れにジャングルジムから飛び降りました。
『わぁああああああ!』
『あはははははははっ♪』
周りの景色がコマ送りのようにゆっくり流れています……これはなんでしょう?まあ、このままだと落ちて良くて重傷……悪くて即死でしょうね。今頃過去の私はユウト君との思い出を回想でもして入るのでしょうか?走馬灯みたいに。
『……っ!?…………!!』
その時ふと、視界の隅から凄まじい速度でこちらに向かってくる今の私と同じくらいの年齢の普段は几帳面で真面目そうな顔の緑色の髪の青年が見えました。
その青年は夜叉のように何か怒っているみたいですが……こんなの見たらそんな表情になりますよね……過去の私に変わりごめんなさいと謝る事が出来ればいいのにとそんな事を思っていると景色の時間が元の時間の流れに戻ってきます。
さあ、過去の私。走馬灯は終わりましたか?なんて、冗談を言ってる場合じゃありませんが。
『ふざけるな!ふざけるなよおまえら!!俺の目の前、死んだら明日俺の目覚めが悪いじゃないか!良いか死ぬなよ。絶対死ぬんじゃねえぇえええええええええええ!ま・に・あ・えええぇぇえええええええ!』
大鬼とは顔真っ赤にして完全に怒っている緑の髪のあの人の事を言うのでしょう……あの速度で走る人間にこの速度で落ちる私達を助けてもどっちも怪我するような気がします……。
そんな事を思っていると……回想中の私にも凄まじい衝撃が身体に走り、そしてひさしぶりに泣いてしまいそうな痛みが私を襲い視界にノイズが見え始めました。これは記憶の回想が終わる前兆なのでしょうか?
ここまで読んでくれてありがとうございます。