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動揺、あの日の記憶の回想

3話目ですよろしくお願いします。

「転校生を、早速困らせているのか可憐?」


「わたくしと姫ノ宮さんは、今日から友達になったのですわよ?困らせてなんていませんわ!」

「ふぅん?無自覚傲慢な可憐にも、ようやく友達ができたんだな。良かったじゃないか」

「わ、わたくしが本気出せば友達の一人や二人簡単にできますわよっ!今までは……その……ほ、本気を出して無かっただけですわ!悠斗こそいつも一人で居ないで、友達を作ったらどうですの?」


 赤い髪の彼と今日友達になった水無瀬さんが仲が良さそうに話をしているだけで、私の胸の中がギュッと掴まれたように痛みを感じます。本当にどうしてしまったのでしょう私は……?


「俺は良いんだよ……俺は……で、君が可憐が言う友達か?まあ、こいつも傲慢な態度を自覚してないだけでこれでも根は良いやつなんだよ。多少の事は友達として目を瞑ってほしい……っ!?」

「突然言葉を詰まらせてどうしましたの悠斗?」


 目の前の悠斗と呼ばれる男子は私の方を向くと急に言葉を詰まらせたので、私もどうしたのだろうと戸惑ってしまいます。そんな悠斗と呼ばれる彼の雰囲気はどこか懐かしく、愛おしくてそして憎く…憎く…憎く…憎く…憎く…憎く…憎く…憎く…憎く…憎く…憎く…憎い…何故か彼を見ているとそう思えてきます……。


 その時……頭がズキンっと痛みが走ったかと思うと、今まで異性の顔が認識できなかった私の瞳には深い霧がぱぁっと晴れたように悠斗と呼ばれる男子の顔を認識しました。


「………!」


 ユウト君……ユウト君だ……あれっ?私はこの人を知っているみたいです……。でも確か小さい頃にどこかで一緒に遊んだから、見覚えがあるのでしょうか?それにしても、前あった時より成長していても分かるものですね。……って、どうして私は異性の顔が見えるのでしょうか?


「君は……」

「どうしてしまいましたの悠斗?そんな目で、姫ノ宮さんをジロジロ見たら失礼ですわよ?」

「………」

「悠斗?はぁ……またですの。これだから考え事始めた悠斗は、わたくしの話を聞いてくださらないから困りますわ。……姫ノ宮さん、わたくしから謝らせてもらいますね。この男が姫ノ宮さんをジロジロ見てしまって、ごめんなさい」


 水瀬さんは私に申し訳なさそうに謝ってくれましたけど、私は言葉を返すと事が出来ずに目の前の彼の顔から視線を外せませんでした。

 私がひさしぶりに見た異性の顔は、小さい頃よりずっと男らしく成長した彼が私の事をその鋭い眼つきで凝視していた顔でした。吸い込まれるように懐かしい彼の瞳を見た瞬間に、ぐわんぐわんと頭を揺さぶられるような感覚が私を襲います。


 何これ……頭の中を掻き混ぜられるように気持ち悪い……です。それと同時に何かが私の中からずるずると這い出てくるような……そんな感じもします。あああっ……彼を見ていると、胸が締めつけられて苦しい。今すぐに彼を”サクラ”だけのユウト君にしたい……!”前”みたいにサクラから逃げられないように、今度はちゃんと誰も居ない所で……。

 ううっ……私じゃない私が私の中に居るみたいで、意識をしっかりとしてないと私じゃなくなりそう……です。


「……っ」


 さらに追い討ちとばかりに私の頭の中には忘れていたあの日の記憶がフラッシュバックしてきて、さっきの水無瀬さんの揺らし程度ではないほど気持ち悪くなってきました。私じゃないワタシが私を操作しているような……そんな感覚が支配します。

 頭の奥から何かの光景が思い浮かびあがり、それはあの日から段々と思い出せなくなったあの日の光景でした。私の心の中の私は、その記憶に歓喜しているような気がしました……。



『どうして、ユウト君……!サクラがこんなにもユウト君の事が好きなのに、どうしてダメなの!?』


『ごめん、サクラちゃんの気持ちには応えられない……。お父さん達が決めた許婚が居るみたいなんだ僕。だからサクラちゃん……僕達はもう、会わないでいよう。そうした方が、僕やサクラちゃんも幸せだよ』


 夕焼けに照らされている公園で水無瀬さんに悠斗と呼ばれた彼を幼くしたような少年が、私の前に居ます。……これはあの日の記憶の回想でしょうか?今では思い出せない私の記憶なので、少し気分が悪いですが大人しく見てみましょう。


『ぐすっ……それは違うよユウト君……。サクラはユウト君と一緒になれないと幸せになれないの。それにずっとユウト君を見ていたサクラに、他の人と一緒になって幸せになれると思う?』

『それは……でも僕は……僕はサクラちゃんとは一緒になれない。僕は……望月家の将来を背負わないといけない僕には、そうする事しかできない……だからさようならサクラちゃん』


 涙で滲んだ視界で目の前の少年も、過去の私と同じく目を真っ赤にして涙を流しています。

 段々と思い出してきました……あの日、私はいつも二人で遊んでいた公園で仲が良かった男の子に告白をした筈です。でも確か、私は赤い髪の男の子……ユウト君に振られた筈でした?

 私の身体がユウト君の手を掴み、嫌々と頭を左右に揺らします。


『さよならなんて言わないでよユウト君!……じゃあ、サクラとどこか遠くに逃げちゃおうよ?そうすれば、ユウト君のお家の事情なんて関係ないでしょ?そうしよう!サクラはこう見えても、お家のお手伝いも出来るんだから!お母さんにも良く出来ましたって褒めてもらえるからお仕事も任せてよ!だからね?今からユウト君とサクラでどこか誰にも見つからない所に逃げて二人で暮らすの♪良いよね?』


 それは無理じゃないかなと過去の私に今の私が言いたいですが、目の前のユウト君が私が言いたい事を言ってもらいました。ユウト君は私に掴まれていない方の手で目に溜まった涙を拭うと私の目を見てはっきりと否定します。


『サクラちゃんそれは無理だよ……。だって僕達は、まだ子供なんだ。今からどこか遠くへ逃げても誰とも知らない子供を大人達は雇ってくれないし、そんな子供を大人達は放って置かないよ。たちまち、僕達は親の元へと帰されてしまうのはサクラちゃんも分かっているよね』

『……無理じゃないもん。ユウト君と二人でずっと一緒にいるもん』


 ギュッとユウト君を掴んでいる手を握り、駄々をこねる過去の私……昔の私はこんなにも感情が豊かな子供だったんですね。

 駄々をこねる私を見て、ユウト君は苦しそうにまだ幼さが残る可愛い顔を歪めてしまいます。過去の回想なので目をそらせない状態の私はユウト君の顔を見て、駄々をこねて申し訳ない気持ちでいっぱいです……。駄々をこねないでよ過去の私……。


『一緒に居られないんだ……サクラちゃんごめん……。でも僕だって本当は……』

『あっ!あるよ一緒に居られる方法!』


 過去の私はさっきまでの悲しく歪ませた顔を、突然嬉しそうに頬を緩ませてユウト君の手を引いてどこかに連れていこうとしています。さすがに過去の私の変わりようにユウト君も怪訝な顔をしています。

 一瞬過去の私の気持ちが流れてきて、ある絵本が思い浮びましたけどまさか……。今の私もあの本の内容を覚えてますが……過去の私でもさすがにやりませんよね?


『そんな方法は……ある筈ないよ。だって一生懸命、サクラちゃんと一緒に居られる方法を考えたんだから!僕もサクラちゃんとずっと一緒に居たい!でも、しょうがないじゃないか……誰に聞いても調べてもそんな方法がなかったんだから……僕だって……僕だって!サクラちゃんの事が大好きなんだから、一緒にいたいに決まってるだろ!それでも、この方法しか僕にはなかったんだ……だから、僕に見つけられなかった一緒に居られる方法があるなら……教えてよサクラちゃん』


 声を荒げたユウト君は一生懸命に本当に調べていたみたいで、目の下にうっすらと隈ができています。寝不足になるまで、調べてくれていたなんて……本当に過去の私はユウト君に想われていたんだなと知りました。その過去の私もユウト君の事を、すごく愛していたみたいです。……なのに今の私は何故、ユウト君の事を好きだった記憶も想いも忘れているのでしょう?


『えへへ、サクラより頭の良いユウト君にも分からない事があるんだ♪初めてユウト君に一つ勝っちゃった♪それじゃあ、えーっと……あそこの大きなジャングルジムの上で教えて上げる!ちょうど夕焼けがあの上で綺麗に見えるから、一緒に見ようよユウト君!』

『そうか……僕にも分からない方法があるんだ。分かったよサクラちゃん……あの上に行けば教えてくれるんだね』


 ジャングルジムと聞いて少し顔色が悪くなったユウト君、どうしたのでしょう?


『うん!あっ、ジャングルジムがつるつるしてるから、足元に気をつけてねユウト君』

『大丈夫だよサクラちゃん、僕はサクラちゃんより運動ができるんだから』

『もう、今はユウト君の方が運動できるかもしれないけど。何時かユウト君より運動できるようになるんだからね!』


 過去の私とユウト君は、夕焼けが町を照らす様子が眺められる見晴らしの良いジャングルジムの天辺に登りました。私の目には夕焼けに照らされるユウト君の横顔が見えます。その顔を見えていると過去の私の鼓動の音が激しく成っていくのを今の私には感じられました。


『もうすぐ……もうすぐ……ずっと……ず~っと一緒に居られるね。ユウト君……えへへ』


 ユウト君に聞こえるか聞こえないくらいに小さな声で過去の私は、そう呟きました。

 過去の私の心臓の鼓動がドクンドクンと煩い……きっと、これからする事に緊張しているのでしょうね。

 過去の私は隣に居るユウト君に身を寄せてから、腰に手を回して離れないようにします。今私達が居るジャングルジムは子供には結構な高さなので、もし頂上から脚を滑らして落ちたら……子供だと重大事故になりかねません。


『何か言ったサクラちゃん?風の音で聞こえなかったから、もう一度言ってくれる?』

『なーんでもないよユウト君!』

『気のせいかなぁ……?それでサクラちゃん、一緒に居られる方法って何かな?』


 さっきより少し表情が良くなったユウト君。きっと過去の私と一緒に居られる方法があると聞いて、希望が沸いてしまったみたいです……。この先待っているのは、その希望を裏切る行為なのに。


ここまで読んでくれた、ありがとうございます。

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