消える記憶、消えた想い
ある日、ヤンデルヒロイン主人公を書きたい!と思いついて書きはじめました。
1話目は少ないですがよろしくお願いします。
6話まで予約投稿しています。
『……だからさようならサクラちゃん』
赤い髪の少年は顔にノイズで覆われているけど、きっとサクラと同じく目を赤くして涙を流しているのは分かる。少年の声も涙混じりで、きっとその言葉を言うのは辛かった筈だよね。
『さよならなんて言わないでよ”………”君!』
『さようなら…サクラちゃん』
「待って……待ってよ……サクラ頑張るから!あなたを忘れないように一緒に居られるように頑張るから!だから……だから……ってあれ?……今、サクラは何を頑張ろうとしたの?」
自分の声で目が覚めて、目蓋を開けると長い桃色の前髪の隙間から、部屋の真っ白い天井が見えた。
名残惜しく暖かいベッドから降りて、何時ものようにお風呂に向かいシャワーを浴びながら……悲しくて目から涙が溢れれてお風呂の床に零れ落ちる。
何時からだろう……サクラの中から”赤い色のあの人への想い、記憶”が消え始めたのは……?
洗面台の鏡の中のサクラは、昨日のサクラと同じなのかな?今日は何が消えたのかな……?
記憶や想いが消えるたびに違うサクラに変わるみたいで、こうやって鏡のサクラを見て確認しないと不安になる。
色白の手で癖になっている、唇に手を当てる。
この癖も何時、どこで、サクラが行おうと思ったのか思い出せないけど……その記憶が思い出せないのに、手がこうして覚えているみたい……。
”あの日”から月日が経ち、会えない愛しいあの人…を想うたびに……サクラの中の”あの人”との思い出が霧で覆われるように思い出せなくなって苦しいのに……誰も分かってはくれない。
お母さんに相談しても……サクラを抱き締めて『良かったわねサクラ。あなたの病気が治っている証拠よ』と嬉しそうにこの”想い”が病気と言われてしまう。
お医者様にも『忘れなさい』と言われて、まるで病人のように扱われて変な薬を飲まされて……頭の中であの人への想いがゴリゴリと削られるのが、分かる、分かってしまうのが嫌なのに狂ってしまうと思うのに……何時の間にか薬を飲むのに抵抗が無くなった。
この想いは病気じゃない!サクラがあの人を愛した証なの!とお母さんにもお医者様にもずっと言い続けたかった、でも……本当にサクラはあの人を愛していたの?あの人を愛した記憶を思い出そうとしても……ただの知り合いとして、一緒に過ごした記憶しか残っていない……。
サクラの中にはただあの人を愛した想いだけが……ぽっかりと空いた穴の中で消えたくないと頑張って残ってるけど、何時かあの人を愛した記憶と同じくその想いも消えるの?
あの人を愛した記憶も想いも消えたサクラは、本当に今のサクラと同じ”サクラ”なの?
ここまで読んでくれて、ありがとうございます。