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お兄ちゃん依存症  作者: 南瓜
高坂未見の世界
12/54

まだまだこれからだよね。


 「……………んん…。」

 「お?起きた?」

 「………。」

 

 一味先にお昼ごはんを食べて、それらの片づけを済ませてから間もなくして、お兄ちゃんが目を覚ましました。 

 うっすらと目を開けて、凄く眠そうです。 

 もうちょっと寝させた方がいいでしょうか。


 「…眠い?大丈夫?」

 「………。」

 「お昼ごはんできてるよ?」

 「………。」

 「…ん?」


 目を覚ましてすぐ。

 なぜかお兄ちゃんが、天井をキョロキョロと見回し始めました。

 どうしたのでしょう。

 なんだか、不自然な様子です。


 「…お兄ちゃんどしたの?」

 「………。」

 「何か虫飛んでる?」

 「………ここ、って……。」

 「ん?」

 「………。」

 「ここ?…ここは私の部屋だよ?」

 「………。」

 「もしかして……記憶がない…とか…?」

 「………ううん………そう、だった…。」

 「ふふっ、思い出した?昨日から私と一緒に此処に住んでるんだよ?」

 「………うん…。」

 

 どうやら起きてばかりなので、ほんの少し混乱していたようです。

 でも、その気持ちは何となくわかります。

 旅行とかに言って、朝起きて「ここはどこ?」ってなる時は私にもあります。

 それと同じ感じだったんでしょうか。


 「お腹空いてる?お昼ご飯できてるよ?」 

 「………。」

 「まだいらない?」

 「………うん。」

 「うんっ、じゃあもうちょっと後にしよっか!」

 「………うん…。」

 

 私の呼びかけにも素直に反応してくれます。

 嬉しいです。もっといっぱいお話したいな。


 私はゆっくりお兄ちゃんの体を抱いて起こしてあげて、しばらく安静にさせてあげました。

 

 寝ぼけてボーっとしているお兄ちゃんが、なんだか可愛かったです。



 * * * * *



 「ねぇお兄ちゃん?」

 「………。」

 「お兄ちゃんは、何か欲しい物とかってある?」

 「………。」

 「ほら、ゲームとか…パソコンとか漫画とか?」

 「………。」

 「もし欲しい物があるなら、私が買ってくるよ?どう?」

 「……………何も………いら、ない…。」

 「え……あ~……いらないか~。」

 「………。」

 「え、遠慮とかしなくていいよ!お金はあるからさ!足りなかったらいくらでも準備するし!」

 「……………いら、ない…。」

 「……そっか~。」

 「………。」

 「う~ん…。」


 お兄ちゃんの眠気が覚めるまで、そんな話を持ちかけていました。

 私は、お兄ちゃんが何か欲しい物があればどんな物でも買うつもりです。

 それの一部として、ゲームなどを提案してみたのですが…。


 いらないと言われてしまいました。


 どうしましょう。遠慮されているのでしょうか。

 別に「ゲーム」や「パソコン」がどんな物か解らないという訳ではないはずなのですが。

 実際、お兄ちゃんは昔ゲームを持っていました。本人も結構楽しんでいたはずです。

 でも、私がそのゲームを(意図的に)壊してしまって…。

 なので、それの代償としてお兄ちゃんには好きなだけゲームを買ってあげるつもりです。

 

 でもいらないと言われると…。

 いえ。まだきっとここに来たばかりで、あまり欲を感じないのでしょう。

 しばらく時間をおいて、改めて聞くことにします。

 その時には、何か欲しい物を言ってくれるかも知れません。



 「う~ん。…あ、じゃあお兄ちゃん!」

 「………。」

 「お兄ちゃんはさ、好きな食べ物とかある?」

 「………。」

 「そうだなぁ、例えば~ハンバーグとかパスタとかお寿司とか…こういうの食べてみたいな~って思う物はないかな?」

 「………。」

 「何でもいいよ!言ってくれたら食べさせてあげるよ!」

 「………。」


 あまり塩分高めな物は食べさせてあげれないかもしれませんが、でも何とか工夫して食べさせてます。

 何か要望は無いでしょうか。

 あると嬉しいのですが…。


 でも、何か答えてくれそうな気配がありません。

 どうしましょう。

 好きな食べ物くらいは把握しておきたいのですが…。


 「ん~、何かないかな?遠慮せずに言ってくれていいよ?」

 「………。」

 「う~ん、何かない?。」

 「………。」


 あまり過剰に質問しても、嫌がられるだけでしょうか。

 もしストレスになるなら、もう控えた方がいいかもしれません。


 「…何か食べたいものとか出てきたら教えてね?」 

 「………。」

 「あ、勿論強制じゃないよ?何か思いついたらでいいからね?」

 「………。」


 お兄ちゃんは、必死に考えてくれているようでした。

 何か答えようと口をもごもごしているのは解ったのですが。

 何処か戸惑っているような。

 口にするのを怯えているような。


 そんな感じでした。



 「そろそろ、お昼ごはん食べる?」

 「………うん…。」 

 「うんっ!じゃあ用意するね!」


 どうやら、お昼ごはんを食べる気になってくれたようです。

 

 よし、急いで準備しましょう。



 * * * * *



 「はい、あ~ん。」

 「………あ…。」


 用意していたお昼ごはんを机の上に並べ、お兄ちゃんに食べさせてあげています。

 とても美味しそうに食べてくれています。ほんと感激です。

 夜はもうちょっと豪華な物にしましょう。きっと今以上に喜んでくれるはずです。


 「はい次、あ~ん。」

 「………ねぇ…。」

 「ん?なぁに?」

 「………一度………自分で食べて…みたい……。」

 「あ、うん!いいよ!やってみよう!」


 お兄ちゃんが、自分で食べてみたいと要求してきました。

 でも、できるでしょうか。

 お兄ちゃんの今の握力で、ちゃんと食べれるか心配です。


 「………。」


 お兄ちゃんがゆっくりと蓮華でポトフを掬って。

 口に運ぼうとしています。

 でも、手がぷるぷると震えて、今にも落としそうです。

 私はバッと手を伸ばして、お兄ちゃんの手を支えてあげました。


 「あ!…無理しないでね!」

 「………。」

 「ゆっくりでいいんだよ…。ね?」

 「………うん………ごめ、ん…。」

 「ううん!はい、あ~んして?」

 

 やはり、今のお兄ちゃんでは一人で食べるのは難しそうです。

 日頃の「リハビリ」で、何とか握力を回復してもらうしかありません。


 でも、どのようにして「リハビリ」すればいいんでしょう。

 何もそれらしい知識がないため、どうすればいいか解りません。

 病院に連れていけば簡単なのですが…きっと病院に行くのはお兄ちゃんがこの間のように拒絶するでしょう。

 何とか、自宅でもできる方法を試すしかありません。


 ちょうど私には、介護士の資格を持つ知り合いがいます。

 あまり人を頼るのは私としては気が引けますが、致し方ないです。その友人に今度お願いしてみましょう。

 お兄ちゃんのためです。


 「お兄ちゃん美味しい?」

 「………うん…。」

 「ふふっ!まだおかわりあるからね!」

 「………うん…。」


 だんだんと、お兄ちゃんと距離が縮まって来た気がします。


 このままいっぱい関わって、もっと仲良くなりたいです。


 もっともっと。


 兄妹らしく。

 

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