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描け、わたしの地平線  作者: まるそーだ
第2章 エリフ大陸編
47/219

第43話:死の列車を行く

「うわ……何これ……」



目の前に映し出された問題に目を通し終える前に、

アルトは思わず、顔をしかめる。


死刑を言い渡す裁判という、

書かれている内容もさることながら、

見た感じどう考えても、

すぐに答えが出そうな問題ではない。



「ボタンを押せ、って書いてあるけど、

 どこにボタンなんてあるのかしら?」


「おそらく、この図形の交点のことだろう。

 よく見てみろ、すべての交点が小さく黒丸になっている」


「あら、そうなの?

 どれどれ……」



フェイティはスカルドの言う通り、

画面にある網目図形に、顔を近づけてみる。


縦線と横線が交わる交点の部分をよく見ると、

確かにすべて小さく丸く、

塗りつぶしてある。

画面の他の部分、そして部屋を見渡しても、

他にボタンのようなものは見当たらない。



「あらホント。

 どうやら、この図形の交点の中から、

 正解のボタンを押さないといけないみたいね」


「え……。

 こんな……いっぱいあるのに?」



まるでつい先ほど強く決意した思いが、

木端微塵に粉砕されたかのように、

図形を見つめるアルトの顏が、

一気に青ざめていく。


10×10に区切られている、大きな正方形。

ということは、

合計で121個の交点があるということになる。

それはつまり、

121もの選択肢があるということを意味している。

いくらなんでも、多すぎる。


とはいっても、障害がそれだけなら、

すべてのボタンを押して正解を導き出せばいいだけの、

とてつもなく簡単な作業だろう。

謎解きでもなんでもない。


だが、そうではない。

もう1つの障害、

それは画面に映る、どこか引っかかる言葉。



『※ただし、この裁判は1度で終わり、

 2度目の裁判はなかった。

 よって、貴殿らにも2度目はないことを心得よ』



スカルドはもちろんのこと、

アルト、そしてフェイティにも、

何となく理解できた。


この問題、おそらく2回までしか解答できない。

1回の間違いは許されても、

2回目の間違えは許されない。


アルトは今一度、目の前の問題に目を向けた。


非情ささえ感じられる、121個のボタン。

とてもじゃないが、勘で答えられるようなものではない。


そして、2回間違えたら、おそらくは……。



「要らんことを考えるより、

 今やるべきことを考えろ」


「!!」



まるでアルトの心を看破するかのように、

スカルドは静かに言う。

アルトは思わず、スカルドへ視線を向ける。


一定のリズムを刻むようにガムを噛む、

その少年の鋭い目はただ1点、

目の前に立ちはだかる問題へと向けられている。


要らんことを考えるより、

今やるべきことを考えろ。

アルトの視線は自然と、そして必死に、

問題画面へ向けられていた。



一方、先に問題を読み終えたフェイティは、

頬に手を当て、首をかしげながら呟く。



「平仮名とかが混じっていて読みづらいけど……、

 話を要約すると、

 王族を殺した2人の裁判で、

 3人目の証言が決定的な証拠になって、

 死刑になったってトコかしら?」


「前の男が2人、後ろの男が3人、

 計5人殺したってことも書いてあるぞ。

 おそらくこの辺の数字が、

 正解を導き出す鍵だろうな」


「死刑になった2人が、

 前と後ろって表現ってのも、

 BBAは気になるわね。

 この辺もヒントになるのかも」


「前と後ろ、か……」



ガムを噛んでいた口元が、ピタリと止まる。


そしてスカルドは、得た情報をもとに、

答えに辿り着く道筋を作り上げていく。


中央の黒点は、他の交点のボタンよりも、

明らかに大きな黒点を現している。

おそらくボタンとは、

別の意味を示そうとしていると考えられる。


そして、そこから広がる、多くのマス目。



(前と後ろ……前が2人で後ろが3人……)



文章の中で、明らかに違和感を覚える、

前と後ろという、妙に遠回しな表現法。



「……ッ、そういうことか」



スカルドが1つの答えに達するのに、

それほど時間はかからなかった。



「え、スカルド君、

 答えが解ったの!?」


「ああ。

 おそらくだが、これは座標だ」


「座標?

 座標って確か、xとyとかってヤツだよね?」


「そうだ。

 前が2人、後ろが3人というのは、

 それぞれx座標が2、y座標が3を示していて、

 中心部からちょうど、

 (2,3)座標のボタンが正解、ってとこだろ」


「あ、なるほど~!

 だから、前と後ろって表現にしてあったのねッ!

 いやぁ~、さすが天才スカルド君ッ!!」


「……」



フェイティの嬉々とした様子を、

まるで思春期を迎えた息子のように、

スカルドは呆れ、冷ややかな視線を一瞬だけ送る。


いつもならば、

ここで切れ味鋭いセリフを突き刺してやるところだが、

今はそんな余裕はない。


スカルドはすぐに画面へと目を移し、

図形の中心部にある大きな黒点から右に2マス、

上に3マスの所にある交点を、ピッと軽く押した。



(これで1問目は突破。さて、2問目はどう



『証拠不十分。もう一度、入力せよ』



瞬間、画面にデカデカと、

不正解を告げる、無情な文字が並ぶ。



「……なんだと?」



次の問題に向け、

頭脳が切り替わろうとしていた、

スカルドの表情が固まる。


座標(2,3)の交点という答えは、不正解だった。


スカルドの後ろから様子を見守っていたアルト、

そしてつい先ほどまで、

歓喜の声をあげていたフェイティでさえも、

想定外の出来事に、

途端に表情が強張り、言葉を失う。


3人に大いなる動揺と焦燥を与えた、

画面の不正解文字は、約2~3秒ほどで、

静かに画面から姿を消した。



「不正解……。

 ってことはこれで、答えられるのは、あと1回……」


「もう、これで、間違えられないわね……」



腹の底から懸命に絞り出すように、

アルトとフェイティは、しかし力なく呟く。



(くそッ! そんなバカなッ!!

なんだ、何を間違ったッ!!)



放心状態の2人を尻目に、

スカルドは悔しさを必死に押し殺している。


(待て、焦るな……。

ここで焦れば思うツボだ。

時間はある、まずは考えろ……)



だがすぐに、一度離れた仕掛けへの思考を、

頭の中に呼び戻す。


犯人が殺した人数は、2人と3人、

つまり2と3という数字が重要なカギ。

加えて前と後ろという表現。

真ん中に黒丸を有した、

まるでグラフのような図形。


決して考え方は間違っていないハズ。

当然ながら、押し間違いもない。


だが、だとしたら何が違う?

答えに辿り着いた道筋の中で、

どこを間違えた?



(あるハズだ、

答えの前に見落としたカギが、必ずッ)



セカルタが生んだ天才少年は、

自らに言い聞かせながら、

必死に目と頭を動かす。


何か、何かおかしな点は――。



「それにしても、

 この文章、読みづらいのよねえ。

 漢字と平仮名がごっちゃになって……。

 漢字が解らなかったのかしら?

 それとも難しい感じを読みやすいように、

 わざと平仮名にしているのかしら?」



放心状態から立ち直り、

ようやく問題文と再び向き合ったBBAの言葉が、

ふう、というため息と共に聞こえてくる。



(バカ言え、ンなワケある……か?)



何を今さら、

と言いたげな表情をしようとしたスカルドだったが、

直後に何かが自らの思考回路を突き抜け、

その表情が固まる。



(待て……言われてみれば、

確かになぜ、同じ単語で漢字と平仮名が混じっている?)



もしかしたら何かを掴めるかもしれない、

スカルドは改めて、問題文へと目を通す。


ほんじつ、王族を殺した、

2人の男の裁判がおこなわれた。

1人目、2人目と、もくげきしゃが話をしたが、

第3のしょうげんに立った目撃者から、

ふたりが犯人という、決定的な証拠が出た。

その話をもとに裁判長が言う。

「前の者が2人、うしろの者が3人、

 王族をころしたことに偽り無し。

 よってしけい」と。



よく見ると、

本文の3行目は“もくげきしゃ”表記だったのが、

次の行では“目撃者”表記となっている。


それだけではない。

“2人”と言う表記は、

2行目、3行目では漢字表記、5行目では平仮名、

そして7行目では再び、漢字表記となっていて、

変換に統一性がない。


これはただの偶然なのだろうか?


他にも“ほんじつ”や“おこなわれた”、

“しょうげん”といった漢字が変換されず、

平仮名表記とな



(……ッ! まさか……ッ!!)



突然、まるで思考回路のど真ん中に雷が落ちたかのように、

スカルドの中に新たな1つの答えが姿を現す。


だが、まだ他にも可能性があるかもしれない。

スカルドは、続けて本文を見返していく。


“もと”、“うしろ”、“ころした”、“しけい”――。


そして、本文を最後まで読み終えた少年は、

フッと小さく、笑みをこぼす。


他の可能性は、ない。



「……? スカルド君?

 どうしたの?」


「そういうことかよ。

 クソッ、手間かけさせやがって」


「あら? もしかして答えわかったの!?」


「ああ、間違いない」


「で、でも、

 本当に大丈夫なの!?

 もし次に間違ったら……」


「間違えねえよ。

 2度も失敗してたまるか、

 ……ここだッ!!」



不正解への心配を拭えないアルトの、

への字に曲がった眉毛顔を横目に、

スカルドは中央の黒点から、

今度は左に2マス、下に3マスの所にある交点に、

右手の人差し指を一切の迷いなく、勢いよく押し付けた。



ガチャ。



緊張の一瞬を待つ時間すら与えることなく、

その音は鳴った。


極度の緊張のあまりアルトは思わず、

その小さな音にビクッと体を震わせるが、

次の瞬間、目の前の扉の鍵が開く。


3人が待ち望んでいた鍵の音が鳴ると、

鉄の扉は静かに、

次のフロアへと誘う道を案内した。



「ふぅぅぅぅぅぅぅ~……」



アルトは力なく、その場にペタリと座り込む。

極度の緊張は、予想以上にアルトの精神を削っていたらしい。


2回目の解答、座標(-2、-3)の交点が、

この仕掛けの正解だった。


スカルドはふう、と静かに息をつく。

さすがの天才少年にも、

ほんの少しばかり焦りと緊張があったようだ。



「スカルド君すごいわッ!

 BBA、感動しちゃったッ!!

 もう、ホントに感謝感激雨あら


「そういうことは、

 次を解いてから言うんだな」


「あ、それもそうね。

 でもすごいわ~。

 なんで答え、解ったの?」


「お前が色々とギャーギャー言っていたおかげでな。

 ……おいアルト、時間がない、行くぞ」



へたり込んでいるアルトを強引に立ち上がらせながら、

スカルドは言う。



「確かに、座標としてはxが2、yが3で、

 考え方自体は間違いなかった。

 ……ただし、第3象限の方にな」


「第3象限?

 どういうことかしら?」


「関数のグラフが4つの区分に分かれるのは知っているな?

 それぞれx値とy値が共に+である第1象限、

 x値が+、y値がマイナスである第2象限、

 x値とy値が共に-である第3象限、

 そしてx値が-、y値が+である第4象限」


「そのうちの第3象限……あらッ??」


「そういうことだ。

 本文に書いてあった“第3のしょうげん”というのは、

 “第3の証言”ではなく、“第3の象限”だったってことだ。

 それで、第3象限で2と3という数字が該当する座標は……」


「(-2,-3)だったってことね。

 すごすぎるわ……BBA、まったく気づかなかったわ」


「俺もお前が騒がなかったら、

 もしかしたら気付かなかったかもしれない。

 ……感謝するぞ」


「いーえ、それほどでも。

 ……ってあら? 私、褒められたのかしら?」


「たぶんだけど、褒められてないと思うよ……」



腰砕けからようやく復活したアルトを引きつれ、

次のフロアへと急ぐ3人。


人間の脳はとても賢くできている。

文章中にもし、複数の意味を持つ単語があったとしても、

前後の文意を汲み取り、

大体の意味を予測変換することができる。


今回の“第3のしょうげん”も、また然りだ。


“しょうげん”という単語は、

前後の文章と照らし合わせれば、

自然と“証言”という漢字であると、

誰もが脳内変換するだろう。

だが、この仕掛けは、

その脳内変換を逆手に取ったのだ。


もし今回、スカルドが座標という、

答えの核心部分にいち早く着目していなかったら、

この言葉の罠に、気付くことすらなかっただろう。


そして所々の単語が漢字ではなく、

わざわざ平仮名にしてあるというのには、

ちゃんとした意味があり、

“第3の象限”というキーワードを隠すための、

カモフラージュだったのだ。


仮に“しょうげん”という単語だけ、

平仮名だったならば、

誰でもこの単語が怪しいと感じるだろう。

そこであえて平仮名にするのに、

不規則性を持たせることにして、

目立たないようにしていた、というワケだ。



(ちょっとばっかし時間を喰ったが、

まだ絶望駅には到着してない。

ってことは、それほど時間はかかっていないハズだ)



第1のフロアと第2のフロアを繋ぐ通路にある、

窓にチラッと目線を送りながら、

スカルドは黙々と先へ足を進めていく。

しばらくして、と言っても1分もしないうちに、

通路は終わりを迎え、

3人の目の前には、再び扉が。


勝負の、そして3人の、

いや、6人の運命を決める、

2つ目の仕掛けの前へとたどり着いた。



「……気付いたことがあったら、

 どんなつまらんことでもくだらねえことでもいい、

 とにかく言え、いいな?」


「う、うん、わかったよ」


「オッケー、BBAに任せてッ!」



扉に手をかけながらスカルドは一言、

特に2人の方へ振り返ることもなく言う。


先ほどの仕掛けは、はっきり言って、

98%までは自力で辿り着いていた。

だが、残りの2%はすぐ後ろで微笑を浮かべる、

フェイティの言葉で補完した。


正直言って、自力で100%解けなかったのが悔しい。


今まで天才少年という称号を欲しいままにしてきた頭脳で、

完璧に解けなかったことが、この上なく悔しい。

きっと偉大なる父ならこの程度の問題、

1人であっという間に解けただろう。


だから、自分の力で、完璧に解きたかった。

父上と母上、両方がこの世を去ってから、

すべて自分の力でここまでやってきたように、

自分の力で、完璧に。


だが、今はそんなことを言っている場合ではない。

時間さえあれば、自力で解ける自信はあるが、

今はその時間がない。


ここで意地を張っていたら、

自分の命が危うくなる。


ならば、使えるものは最大限、使うべきだ。


どんなに小さいことであっても、

たとえこの、気の弱い優男と、

能天気そうなBBAにとっては、

大したことない気付きだと思っていたとしても、

自分にとっては、

とてつもないヒントになるかもしれない。

だから――。



「よし、行くぞッ!」



ギルティートレインが死刑駅を発車して、8分が経過。

最後の降車駅、執行駅到着まで、残りは22分。

スカルドは2つ目の仕掛けの待つ、扉を勢いよく開けた。





「チッ、次から次へとッ!

 どんだけ湧いて出てくんだよッ!!」



目の前の魔物に斬りかかりながら、

溜まりに溜まったイライラを、

舌打ちと共にプログが吐き出せば、



「上等じゃないッ!

 このくらいじゃないと歯ごたえ無さすぎよッ!

 ……喰らえ、炎牙ッ!!」



レナはどこか楽しげに、

敵を貫通する炎技、

炎牙をこれ見よがしと連発している。



「ったくコイツら、報告以上の力じゃないの、

 イグノのヤツ、適当なこと言って……ッ!」



ナナズキはプログの隙を見計らって襲い掛かろうとした、

スカルソルジャーの脳天を、

右手に持つ杖で殴打する。


杖の先端で淡く光る宝玉の力と、

ナナズキによる物理的な力によって、

スカルソルジャーの頭部は粉々に砕け散り、

頭部を失った体はガラガラと音を立て、

その場に崩れ落ちた。



「わりい、助かるッ!」


「ナナズキ、伏せてッ!

 ……疾風炎ッ!!」



素早く伏せたナナズキのわずか頭上を、

小さな光が勢いよく飛んでいき、

スカルソルジャーの大群の中を一直線に進んでいく。


バゥンバゥンバゥンバゥン……!!


そして光が消えた瞬間、耳を突き抜ける爆音と、

強烈な連続爆発が巻き起こる。

数十体のスカルソルジャーが爆発の餌食となり、

骨の体が四方八方へと飛び散っていく。



「便利ね、その技」


「何言ってんのよ、

 あんただって似たようなの、

 使ってんじゃないの」


「まあ、そうだけどね。

 ……走れ、フランメ・シュトラーセッ!!」


レナに触発されるかのように、

そして先ほどのレナの動きを完全コピーするかのように、

ナナズキは杖を下から上へと勢いよく振り上げる。


ボンッ!!という軽い爆発音を響かせ、

小さな紅焔が杖の宝玉から放たれると、

やはりレナの疾風炎同様、

敵の中を真っすぐに進んでいき、

しばらく進んだところで、やがてフッと消える。


だが、レナの疾風炎と違うのは、

ナナズキの場合、進んだ道筋に炎が残っている。

そのため、まるでこの空間に、

太い赤線を引いたような、不思議な現象が起こっている。



「チュース(じゃぁね)♪」



年相応の女の子らしい、

いたずらっぽく右目でウインクを決めると、

少女は手に持つ杖の杖先を、

地面に勢いよく打ち付けた。



ガアアアァァァァゥゥンッ!!



今まで聞いたことのない、

耳の奥の鼓膜がビリビリするくらいの、

とてつもない爆音が1発、空間内を突き抜ける。



「くッ……!!」



その大きさは、思わずレナとプログが、

両耳を手でふさいでしまう程の凄まじさである。


そして、その目の前では、

先ほどナナズキが描いた“炎の道”に沿って、

その爆音に見合う、

床から高さ3メートル程度ある、

天井まで軽く到達する大爆発が、

スカルソルジャーの大群の中で巻き起こる。


複数の中爆発が連続して起こる疾風炎とは違い、

ナナズキの放った1発の大爆発は一瞬で消えたが、

同時に爆発の周辺にいた敵、数十体も、

跡形もなく消え去っていた。



「……まったく、どっちの方が便利なんだか」



あまりの破壊力に、さすがのレナも、

もはや苦笑いをするのがやっとだ。

そして、苦笑いと共に、レナは思う。



(今はいいけど、

ゆくゆくはこの子とも戦うことになるのかもって……。

かなりキツイわね)



そう、今でこそ休戦状態で共に戦う仲間ではあるが、

彼女はファースター騎士隊4番隊隊長だ。

無事にこの魔物の山、

そしてギルティートレインを脱出したら、

この少女とは再び敵同士となる。


それはつまり、今の爆発を、

今度は自分が受けなければいけない、

といった状況を意味する。



「ほら、サッサと他のヤツらも片付けて、

 ここを脱出するわよッ」



そんなレナの心情を知ってか知らずか、

ナナズキはその一言を残し、

プログと共に、

いまだ多くいる魔物の群れの中へと身を投じていく。


先のことを考えている余裕は、ない。


今やるべきことは、

目の前にいる魔物を、

すべて全滅させることだ。



(……ったく、厄介ねッ!!)



ブンブンと頭を2回ほど強く振るレナ。

自慢の金色の長髪が左右へと揺れ動く。

ひとまず考えることを止めた二刀流少女は、

そして魔物達のもとへ飛び込んでいった。

次回投稿予定→7/12 15:00頃

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