表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
描け、わたしの地平線  作者: まるそーだ
第2章 エリフ大陸編
45/219

第41話:破られた、禁忌魔術

「さて、と。

 ここからどうなるかしらね」



部屋に6つある、

ベッドのうちの1つに座りながら、

レナは腕組みをする。



「まあ、この部屋で様子を見るしかないな。

 下手にここから動いて犯人にバレると厄介だろうし」



窓の外に広がる真っ暗な空に浮かぶ月を見上げながら、

プログは言う。



「あ~あ、牢屋の次は徹夜だなんて、

 BBAのお肌には辛いわぁ~……」


「論点、そこなんだ……」


「うるさいぞ、静かにしろ」


「だってぇ、

 BBAはレナちゃんみたいに若くないのよ?

 少しでも睡眠をとらないと肌が荒れちゃ


「ンなことは知らん」


「ガーン、BBA、

 ショックぅ……」


「ま、まあまあ2人とも……」



残りの3人も同じ部屋にて、

話に花を咲かせて(?)いる。


レナ達5人は夕食を済ませ、

トーテンの宿屋の一室にいた。

プログとフェイティが酒場から出た後、

ひとまず宿屋に行こう、という結論になった。

その過程でレナやアルトから慎重論も飛び出したのだが、

やはり宿泊して部屋の内部から、

状況を見極めるのが最良の手段だという、

プログ、フェイティの大人の意見を採用した格好だ。


そして、いつもなら男性用と女性用、

2部屋を取っているのだが、

今回は動きが取れやすいようにと、

あえて1部屋に全員が集まるようにしたのだった。


また、部屋にいるだけでなく、

交代制で外の見張りもするべきでは、

という意見も出たのだが、

犯人に感づかれる可能性が大きくなってしまうと判断し、

結局全員、部屋にいる。



「それにしても、

 あの子は大丈夫なのかしらね……」



ふう、と息をつきながらレナは呟くと、

入口のドアへと視線を送る。



「あの子、1人だよね?

 何にもなければいいけど……」



レナの言葉にアルトも少しばかり、

不安げな表情を浮かべながら、

同じドアへと目を向ける。





今から10分ほど前である。


それはちょうど、レナ達が宿屋の主人に、

事件について聞いている時だった。



「すいませーん、シングルの部屋1つ、

 空いてます~?」



宿屋の入口のドアが開く音と同時に、

声が飛んできた。



「あれ、この声って……」



聞き覚えのある声が耳に届き、

レナが後ろに振り返ると、

そこにはあの、列車に乗り遅れそうになった女の子の姿が。



「あれ、奇遇ですねッ。

 みなさんも泊まるんですか?」


「ええ、ちょっとね。

 あんた、ここに泊まるつもり?」


「? はい、今日はもう休もうと思って」



浮かない表情のレナにやや疑問を持ちながらも、

女の子は元気よくうなずいている。



「ってか、お嬢ちゃんはここに住んでいるんじゃないのか?」



てっきり家路につく途中だと決め込んでいたプログ。

だが、女の子はゆっくり首を横に振り、



「ううん、違いますよ。

 ちょっと人を探してて、

 それでこの町に来たんですけど、

 なかなか見つからなくて……。

 っと、それでおじさん、部屋空いてます?」



ツインテールの根元を軽く手で搔きながら、

女の子はそう言うと宿屋の主人へと振り返る。



「部屋なら空いているけど……、

 ホントに泊まるのかい?」



だが、事情を知る宿屋の主人も当然ながら、

その表情が冴えることはない。



「悪いことは言わないから、

 止めといたほうがいいと思いますよ?」


「え、どうしてです?」



部屋の鍵を渡しながらも、

本来なら宿泊客を喜ぶであろう主人が、

宿泊客を憂うという真逆のことを勧めてくることに、

女の子もさすがに違和感を覚える。



「最近ここら辺に変なヤツがいるらしくて、

 そいつが宿泊客を狙っているらしいのよ。

 だから、もしこの町に知り合いとかいるなら、

 そこにお世話になったほうがいいわよ」



肩をすくめながら、

主人の代わりにレナは言う。


事件の詳細を話してもよかったのだが、

レイから機密事項と言われている以上、

あまり深くは話さない方がいい、

そう判断したのだ。


女の子はその話を聞き、

しばらくキョトンとした表情を浮かべていたが、



「だーいじょうぶですって!

 もし変な人が来たら、ブッ飛ばしてやりますんで!

 色々とありがとうございました、それじゃッ!!」



そう言うと、女の子は部屋の鍵を握りしめると、

ツインテールを揺らしながら、

宿屋の奥の方へと足早に去ってしまった。



「あ、ちょっとッ!!」



レナが呼び止めようとしたが、もう遅かった。

遠くからガチャッ、というドアの音が聞こえ、

女の子は部屋の中へと姿を消したのだった。





「結局、今日泊まっているのはあたし達と、

 あの子だけなのよね……」



時は進み、再びレナ達のいる部屋。

今度は大きなため息をレナはつく。



「でも、ってことは狙われるのは、

 僕達か、あの子ってことになるんだよね?」



徐々に不安の波が襲ってきたのだろう、

やや緊張した面持ちで、

アルトはベッドの上で体育座りを始める。



「それか両方、だな」


「そうね、その可能性もあるわね。

 ま、部屋が向かいだから、

 もし何か変なことがあったら、

 すぐにわかるってのは不幸中の幸いね」



窓から自分のベッドへと移動するプログと入れ替わるように、

レナはスクッと立ち上がり、

部屋のドアへと歩いていく。


女の子が部屋の中へと消えた後、

5人は宿屋の主人に頼み、

もし何かあった場合はすぐにわかるようにと、

宿泊部屋をあの子の向かい側の部屋にしてもらったのだ。


レナはドアの扉の覗き穴に、目を近づける。

特段変わった様子はない。


ま、そんなすぐに変なことは起こらないか、

レナは再び、ベッドへと戻っていく。



「とりあえずは静かに待機だな。

 あんまりデカい音はたてないようにな」


「相手さんがわからない以上、しょうがないわね」



プログとフェイティはベッドに横になる。

相手がどう出てくるかわからない以上、

こちらも待ちの態勢しか取れない。


ここでむやみやたらに動くのは、

先の見えない真っ暗闇のダンジョンの中に、

丸腰無策で飛び込んでいくようなものだ。


5人はただ静かに、その時が来るのを待つ。





「フフッ、それじゃぁ今宵も、

 楽しい楽しい実験開始ィ♪」



ファルターはその宿屋の一室の風景を、

トーテンで一番高い木の、

さらに一番高い枝の部分に座りながら見届け、

事件を愉しむ愉快犯のように、

また人を蔑む歪んだ絶対支配者のように、

ニヤリと薄ら笑いを浮かべる。





「……」


「…………」


「………………」



レナ達の空間から会話が消え、

すでに3時間は経過している。


時間が経つにつれ、各々の緊張感は高まっていく。

緊張感が高まれば、余裕がなくなっていく。

余裕がなくなれば、自然と会話は消えていく。


ピリピリとした、それでいて重い、

目に見えない緊張感が、

空間内を右往左往している。


だが、向かいの部屋を含め、

特に怪しい物音は一切聞こえてこない。



(そろそろ、怪しくなってくる時間帯ね)



レナは、ふと部屋の時計に目をやる。

時計の針はちょうど12時を指している。

朝早くから働く人が多いトーテンの町では、

ほとんどの家庭が、眠りについている時間だ。


そしてそれはつまり、

犯人が何かアクションを起こすには、

恰好の時間に入ってきたということだ。


そして、そのように考えていたのは、

どうやらレナだけではなかったらしい。



「そろそろ怪しくなってくる時間帯か?」



約3時間の沈黙を打ち破ると、

プログはベッドから起き上がり、

部屋の入口ドアへと向かっていく。



「え、プログ?」


「心配すんなよ、ちょっと覗くだけだって」



アルトの心配そうな表情を制し、

プログは、覗き穴から部屋の外の様子を窺う。



「んー……」



さすがに、まだおかしな様子は見受けら



「ん?」



れんわな、と覗き穴を離れ戻ろうとしたプログの眉間に、

くっきりとシワが寄る。


そして、まるで覗き穴に引き寄せられたかのように、

再びプログは覗き穴に目を向ける。


確かに、目の前に見える、

向かいの部屋のドアには、

特におかしな部分は見当たらない。


だが、見える視界の左側の様子が違う。

灰色のカーペットを敷いた廊下が、

途中で色が変わっている。

いや、色と変わると言うより、

カーペットではなくなっている。


どこかこう、木製の床のような……



「あん?」



自分の中で少しずつ大きくなっていく疑念と戦いながら、

プログはもう一度、

目を凝らしてその部分を見てみる。

だが、やはり床が途中でカーペットから、

木製へと変わっている。



「プログ? どうしたの?」



様子がおかしいことに気付いた、

アルトは後ろから声をかけるが、

プログは振り返らない。


間違いない。何かがおかしい。


ガチャ。


プログはそのまま、

ゆっくりとドアノブに手をかけ、

ドアをゆっくり開けると、

その隙間から顔を出す。



「ちょ、何してんの――


「え、ちょッ、何だよこれ!?」



むやみやたらに動くべきではない、

その考えにのっとり、

慌てて止めようとドアに近づくレナだったが、


ほぼ同時に、プログは焦りに満ちた叫び声を残し、

慌てて部屋の外へと飛び出していく。



「ちょッ、待ちなさいよ……ッ!?」



プログを止めるべく、

続いて部屋から出たレナだったが、

次の瞬間、大きく目を見開き、

目の前の状況に言葉を失う。



「ちょっと、プログにレナも!

 一体どうした……え、え!?」



急いで駆け付けたアルト、

そしてフェイティ、スカルドも、

その光景に思わず息を飲む。


そこに、宿屋の風景は一切ない。


レナ達の目の前に広がっていたのは、

列車の車両内にそっくりの光景だった。

ただ、ふだんの列車とは違い、

乗客が座る用の座席はない。

いわば、立ち乗り専用のような列車の形だ。

加えて、列車の幅がいつもに比べてかなり広い。

その幅、軽く10数メートルはあるだろう。

そして、5人の視線の先には、

次の車両に向かうためのドアが2つ。

当たり前のことではあるが、

通常なら、次の車両に行くためのドアは1つしかない。


だが、このように形は違う部分はいくつかあれども

造りは間違いなく、列車そのものだった。

宿屋に泊まっていたハズなのに、

ドアを開けたら、いつの間にかそこは列車の車両内。

窓の外には真っ暗闇が広がり、

何も目視することができない。

故に、走っているのか、停車しているのかもわからない。



「どういう、ことよ……?」



さすがのレナも、意味がわからない。


夢でも見ているのだろうか?

寝ないで待機しているハズだったのだが、

いつの間にか寝てしまっていたのだろうか?


レナは隣にいる、

プログの頬をつまんでみる。



「イテテテテテッ!

 おま、何すんだよッ!!」



プログからは、

もしこれが現実ならば当然の反応が返ってくる。

どうやら夢ではない。


でも、だとしたら、これは何?

レナの知りうる過去の記憶を引っ張り出しても、

該当するような答えは見つからない。



「そうだ、通信機ッ!!」



レナは懐にしまっていた、

通信機を慌てて取り出して起動を試みる。

レイなら何か知っているかもしれない。

とにかく、どんな小さな情報でもいいから欲



……ザ……ザザザ……



しかし、本来ならば、

セカルタ執政代理であるレイに繋がるハズの通信機は、

わずかな砂嵐音を発しただけで、

ここでは何の役にも立たず、

レナの問いへの答えを導いてはくれない。


そして、それは他の人も同様だ。

全員、目の前の現実を見据えることができていない。

そしてそこから過去に照らし合わせてみようとしたが、

明確な解を見出すことはできず、

頭が真っ白になっていた。




ただ1人を除いては。




「まさか……ギルティートレイン……なのか?」



そのたった1人、スカルドは小さく、

いつもの彼からは想像もつかない、

自信なさげな声で呟く。



「スカルド! 知っているの!?」



藁にもすがる勢いで、

レナがスカルドに詰め寄る。

なにせ手がかりがゼロなのだ、

どんな些細な情報でも欲しい。



「父上の残した文献に書かれていた魔術の1つで、

 乗る者を死へといざなう、魔術列車だ。

 おそらく、誰かしらが外からこの部屋自体に、

 魔術を使っているんだろう。

 だが、父上はこの魔術を禁忌の魔術として、

 実働させる前に封印していたハズ……。

 一体誰が……」


「乗ったものを……」


「死へといざなう!?

 ど、ど、ど、どうしてそんな魔術にッ!?」



突然の真実に、フェイティとアルトは思わず大きな声をあげる。

特にアルトは、今にも泣き出しそうな、

半ベソ状態で動揺を隠せない。



「もしこれが本当にギルティートレインなら、

 終点の駅までに降りないとヤバいぞ」


「終点の駅? どういうことよ?」


「コイツは今いる始点の“死刑駅”から、

 終点である“執行駅”も含めて合計7つの降車駅がある。

 その降車駅で降りることができれば元の場所に戻れるが、

 降りることができずに、もし終点の駅を越えてしまったら……」


「そのまま天国行き、ってワケね、

 誰がこんな魔術使ったのか知らないけど、冗談キツイわッ」



レナは思わず舌打ちをする。

が、それと同時に、



(ってことは今回の事件がシャック、

というよりクライドの仕業って可能性が高くなったわね)



という、1つの仮説に辿り着く。


もし仮に、今の現象がスカルドの言う通りなら、

少なくとも犯人は、スカルドの父が編み出した、

この魔術を知っている人物になるハズだ。

そして、その可能性があるのは、

スカルド本人、生前勤めていたセカルタ城内の人物、

そして学長レアングスによって連れ去られた先である、

ファースター城内の人物の、3パターンだけだ。

そしてこの3つならば、

どう考えても、最後の選択肢を疑うのが妥当、

というのがレナの仮説だ。


だが、その仮説を今、

結論に変えようとする思考する時間を待ってくれるほど、

状況は呑気なものではない。


もしスカルドの言うことが本当ならば、

ここで時間を潰していることは、

自分たちから死に近づいていくようなものだ。


考えるのは進みながらでもできる。

ならば、取るべき行動は一つ。



「んで、この列車を降りるにはどうしたらいいのよ?」


「ギルティートレインは4両構成のハズだ。

 この車両と、次の2階構成の車両、

 出口の車両、そして運転車両だ。

 列車を降りるには、出口の車両まで行くしかない」


「んじゃ、サッサと一番前の車両まで行くぞッ!」


「待て、焦るな」



だが、いつもの雰囲気を取り戻したスカルドは冷静に、

話を一気にまとめようとしたプログを制する。



「出口から降りるには、2階構成車両の両方で、

 ロックを解除しないと降りられない仕組みになっているハズだ」


「つまり2つのロックを解除しないと出られないのね、

 面倒な仕組みを作ってくれたモンね。

 時間もないし、二手に分かれて行った方がいいかしら」


「ああ。だが簡単にはいかないだろう。

 父上の残した文献には上の階は“知”を有すると、

 下の階には“力”を有すると書いてあったからな」


「“知”と“力”ねえ。

 なんとなく何が必要か、予想はつくわね。

 とりあえずサッサとメンバーを決めて――」



レナは腕組みをしながら、

2つのルートの振り分けを考え始めた、

その時だった。



「えーーーーーーッ! 何コレ!?」



後方より甲高い、だがもはや聞き慣れた声が、

焦燥漂うレナ達を直撃する。



「え、まさか……」



悪いことをする前に呼び止められた子どものように、

レナは恐る恐る、ゆっくりと後ろを振り返る。



そこには……



「あ! ねえちょっとッ!! 

 これってどういうことですか!?」



やっぱりか、

レナは思わず天を仰ぐ。

知っている顔を見つけ駆け寄ってきたのは、

向かいの部屋に泊まっていた、

あのツインテールの子だった。

どうやら、この子も魔術の餌食になってしまったらしい。



「あんたも巻き込まれちゃったのね……」


「ちょっと、これって何なんですか!? 夢!?

 いやでも夢だとしたらみんなはいないワケで……ッ!!」



女の子はワケがわからず、

やや混乱気味に必死に辺りを見渡している。

無理もない、少し外の空気を吸おうと思って部屋の外に出たら、

いきなり列車に乗っているのである。

一番初めにすがる選択肢は、誰もが夢であろう。


だが、これは夢ではない。

悪夢のような、現実である。



「いや、実は――」



さすがにここまで来たら事情を話さないわけにはいかない、

そう思ったレナが口を開くが、同時に、



『ギルティートレイン、死刑駅を発車します。

 次は牢獄駅、次は牢獄駅』



抑揚のない、低い男のアナウンスに引き続き、

音もなく、ギルティートレインは静かに走り始める。


窓の外に風景などなく、

ただ暗闇だけの空間の中、

徐々にそのスピードをあげている……かのようだ。



「もし父上の魔術通りなら、

 死刑駅を発車してから執行駅を発車するまで30分しかない。

 それまでに、2つのロックを解除して、

 出口から駅に降りないとあの世行きだぞ」



つまり、女の子を含めた6人が生き延びるための、

タイムリミットが30分。

悠長に話をしている暇はない。



「悪いが事情を話している暇はないっぽいな。

 まずはここから脱出するのが先だッ。

 レナ、振り分けはどうする!?」



プログは強引に話を終わらせると、

先へ進む2つの扉へと、目をむける。



「え……、レナ?」



その瞬間、女の子の眉がピクッと動く。


先ほどまで混乱していた様子がウソのように、

表情が静かに、そして冷静に変化していく。

その姿は先ほどまでとはまるで別人だ。


「そうね。

 力と知っていうくらいだから、

 戦闘チームと、頭脳チームに分かれて


「アンタ……、

 もしかして、レナ・フアンネ?」


「そうよ、今さら何を……って、え?」



今さら何を当たり前なことを、

と言おうとしたレナの言葉が止まる。

そしてその言葉を止めた原因である、

女の子へ目を向ける。


よくよく考えてみたら、

レナはこの女の子と出会ってから今に至るまで、

まだ名前を名乗っていない。

レナという単語こそ、

プログがついさっき口にしたが、

フアンネという名は、この場に登場していない。


なのにこの子は、なぜかレナのフルネームを知っている。

それに、女の子のレナを見る視線が心なしか、

冷たくなっている気がする。



「レナ、どうしたの?」



途中で話が途切れ、アルトがレナの顔を覗き込むが、

レナの視線は動かない。

一瞬にして、緊張の糸がレナ達の周りを張りつめていく。


「あんた、何であたしの名前を知っているのよ?」


「……」


「あんた、何者よ?」



どことなく嫌な雰囲気を感じ取ったレナの問いに、

女の子はゆっくりと、両目を閉じる。



「……私の名はナナズキ」



静かにナナズキは答えると、

再びゆっくりと、両目を開く。

そして意を決するかのように、

強い口調でその言葉を列車内に響かせた。



「ファースター王国騎士隊4番隊隊長のナナズキよ」

次回投稿予定→6/28 15:00頃

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ