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描け、わたしの地平線  作者: まるそーだ
第2章 エリフ大陸編
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第40話:嵐の予感

セカルタ駅からトーテン駅までの約1時間半、

レナの心配とは裏腹に大きなトラブルもなく、

列車は順調に走っていった。

念のためと思い、

レナはずっと起きていたが、

プログ、フェイティは仮眠を取り、

アルトは武器である銃の手入れ、

そしてスカルドはどこに持っていたのか、

なにやら難しそうな魔術の本を読む等々、

それぞれ列車の時を過ごしていた。

都会の街並みだった車窓は、

徐々に大自然あふれる風景へと変わっていく。



『ご乗車ありがとうございました、

 次はトーテン、トーテン駅に到着です。

 お降りの際は、お忘れ物……』


「ん? そろそろ着くか?」



車内アナウンスの言葉に続き、

仮眠を取っていたプログが体を起こす。


列車の走る速度が、ゆっくりと落ちていく。


そうみたいね、

と言いながらフェイティも起き上がると、

窓から外を覗き込む。


延々と続くレールの先に、

小さな駅のプラットホームが確認できる。

規模は大体、ルイン駅と同じくらい、

といったところだろうか。



「さてさて、

 どんなお楽しみが待ち受けているのやら」



列車を降りる準備をしながら、

レナは一人、小さく呟く。





トーテン駅で降りる乗客は、

それほど多くはなかった。

例の行方不明事件の影響か、

はたまた単純に利用客が少ないのかは不明だが、

ざっと見た感じ、レナ達以外に10数人、

といったところだ。


そして、降りた乗客を迎えるのは、

見事なまでの山間風景と、

時折吹く、冷たい風。

駅の時計は午後3時半を越えているが、

すでに若干肌寒く感じられる。

レナ達が降りたトーテン駅から村までは、

少しばかり距離があり、30分弱程度歩く必要がある。


すでに村へと歩き始めた利用客に続き、

レナ達も駅から一歩踏み出す。



「すいませ~ん!!」



と、ここで背後から声が聞こえてくる。


レナが振り返ると、そこにはあの、

青髪ツインテールの女の子が。

身長はレナよりも小さく、

おそらく年齢も下だろう、

かなり幼い顔つきだ。



「さっきはありがとうございましたッ!」



女の子はそう言うと、

ペコリと頭を下げる。



「あぁ、あんたは確か、

 セカルタ駅の……」


「そうですッ!

 あなたが列車を止めてくれたんですよねッ!?

 おかげで乗れましたッ!!」


「あー、いや、その……。

 あんまり大きな声で言わないでもらっていい?」



はきはきと元気よく話す声とは対照的に、

レナはバツが悪そうにシーッ、

と口に指をあてている。


当然のことながら、

動く列車を急停止させたことは、

なるべく秘密にしておきたい。

というより、むしろ絶対に知られてはいけない。

面倒なことになるのが目に見えているからである。


炎を放つ時にわざわざ反対側の窓で撃ったのも、

そのためだ。



「あ、そうですよね……。

 でも、本当に助かりました」


「そう、ならよかったわ」


「それじゃ、私はこれでッ!」



女の子は再びお辞儀をすると、

トーテンの町方向へ、

元気よく走り出していった。



「元気なヤツだな」


「元気でいいわねえ。

 お家にでも帰るのかしら?」



元気な後ろ姿を見ながら、

プログ、フェイティの年長者2人は、ポツリと呟く。

その姿はさながら、

はしゃぐ子どもをほほえましく見守る、

母親と父親である。



「くだらんこと言っていないで、サッサと行くぞ」



そんな年長者を見かねたスカルドは、

2人の横をスッと通り過ぎ、

スタスタと歩を進めていく。



「……やれやれ、

 同じ歳くらいだろうに、

 こっちは可愛げがないねえ」


「あら、私はスカルド君みたいな子も嫌いじゃないわよ?

 あーいう子ほど、意外と可愛げがあったりするものよ」


「いや、ないと思いますけど」


「フフッ、私にはわかるのよ、プログちゃん。

 あの冷たい反応の奥に秘める本当の


「あーハイハイ、

 その話は今度聞きますんで」


「あら、聞いてくれないの~?

 BBA、大ショックぅ……」



見兼ねられた2人は肩をすくめながら、

そして凡人にはよく理解できないやり取りをしつつ、

その後を追う。


残されたレナとアルトは、

お互い目を見合わせる。

そして互いに共通の見解を感じるかのように、

小さくため息をつきながら、町を目指す。




トーテンの町は、

レナ達が思っている以上に静かだった。


現在、午後4時。


空に浮かぶ太陽は、

この地を照らす役目を月に譲ろうと、

西の地へと沈む準備を始めている。


時間としては、これから急激に気温が下がってくる頃だ。

そして、セカルタより西部に位置するこの街は、

エリフ大陸に4つある街の中で唯一、山間部にあり、

寒暖差の激しいエリフ大陸の中でも、

夕方から朝までの冷え込みが尋常ではないというのは事実だ。


だが、その環境を差し引いても、

町中は明らかに閑散としていた。



「人……少なすぎじゃない?」



町に入り開口一番、レナは言う。


先ほど一緒の列車で降りた客を除けば、

建物の外を歩く人は見渡す限り数人しかいない。

1秒に1回は人とすれっていたセカルタとは、

天と地の差である。


レナやアルトはもちろんだが、

プログ、スカルド、そしてフェイティでさえも、

実はこのトーテンの町に来るのは初めてだ。


そのため、この閑散とした雰囲気がこの町の日常なのか、

はたまた何かしらの要因があるからなのか、

判断に苦慮している。


もっとも、何かしらの要因があるとすれば、

1つしか考えられないのだが。



「さてと、とりあえず、

 まずは情報を集めないと、だな」


「そしたら、宿屋に行ってみる?」


「いや、いきなり宿屋は危険だ。

 レイは宿屋の主人じゃないと言っていたが、

 万が一のこともあるからな」



町入口のすぐ近くに構える宿屋に、

視線を送るアルトをプログは言葉で制する。



「じゃあどうすんのよ?

 聞き込みするにしても外歩いている人が、

 ほとんどいないじゃない。

 まさか、家回りでもするつもり?

 そんなことしていたら

 あたし達が絶賛怪しい人になるわよ」



レナはやや口を尖らせながら言う。


確かにレナ達は、

エリフ大陸の最高責任者でもあるレイから、

調査の依頼を受けている。


だが、いきなり見ず知らずの他人が家に押しかけ、

国から依頼を受けているから事件の話を聞かせてと言われ、

素直に話をしてくれるような奇特な人は、

そうそういないだろう。

むしろ、大半の家庭なら、

怪しまれるのが普通だ。


警察が家に来て話を聞いていったあとに、

警察の依頼で来ましたなどと言う赤の他人を、

はたして誰が信じるだろうか。


というよりそもそも、その程度の情報収集なら、

おそらくレイがすでに実行済みなハズである。

それでも解決していないのだから、

今、レナ達がここにいるのである。



「……酒場だ」



不意に、そして静かに、

スカルドが口を開く。


え?とばかりに、

レナとアルトはスカルドへと振り向く。



「お、さすがだな。

 ま、スカルドの言う通りさ、

 情報を集めるなら酒場に行け、ってね。

 酒場には色んなヤツ等がいるからな、

 情報も最新のものが入ってくるのさ」



プログは嬉々としてそう言うと、

町の奥へと歩き出す。


とりあえず行ってみましょ、

とフェイティ、

そしてスカルドもすぐに歩き始める。


一方、頭の中に酒場という選択肢がなかった、

レナとアルトの2人は慌ててそのあとを追う。



「レイ執政代理がいつ調査に来たのか知らねえが、

 それから新しい情報が、あるかもしれないだろ?」


「どうかしら?

 レイのことだから、新しい情報くらい、

 すぐに仕入れてそうな気がするけどね」



通信機に始まり、列車の切符手配、

さらにはレナ達が遅れるのを見越しての座席手配まで、

まったく抜け目のなかった、

あのレイのことである。

それくらいの芸当ができていても不思議ではない。



「ふっふっふ、甘いなレナちゃん。

 大人の世界には色々とあんのよ、い・ろ・い・ろ・と」



だが、プログはそんなレナの言葉を、

ベタベタな指振り、

そして満面のドヤ顔をしながら返す。



「ほう、よっぽどあの世の世界を見たいようね」


「大変申し訳ありませんでした。

 って、そうじゃなくてだな」



淀みのない、すがすがしい笑顔で、

短剣を引き抜くレナに、

プログは瞬時に謝罪の意を示す。


もちろん、冗談なのだろうが、

この女ならマジでやりかねない。

咄嗟の防衛本能だった。


そして軽く咳払いをして仕切り直しとばかりに、

再び口を開く。



「酒場ってのは依頼の窓口でもあるから、

 多くのハンターがいる場所でもある。

 んでもって、ハンターにはハンター内独自の、

 情報共有の仕組みがあるのさ。

 お役人には決して知られない、

 “裏の情報網”ってのがな」


「そんなものがあるのね。

 ま、お役人には知られたくない情報もあるでしょうしね。

 つまり、もしかしたらその裏情報の中に、

 今回の事件のマル秘情報も、ってことかしら?」


「そういうことよ。

 ま、直接な情報があるかどうかはわからんが、

 少なくともそこら辺の人に聞くより、

 よっぽど当たりクジは多いぜ」


「よし、じゃあさっそく聞いてみようよッ!」



プログが説明しているうちに、

目の前には木製のドア、

そしてその上に大きく書かれた、

“BAR”の3文字と、ジョッキに注がれるビールのロゴが。

いつの間にか、5人は酒場の前に到着していた。


意気揚々と入口のドアに手をかけるアルト。



「あー、ちょっと待った」



そのアルトを、プログが引き止める。



「ここは俺と先生に任せてくんねえか?」


「え、どうして?」


「別にアルト君が、ってワケじゃないのよ?

 ほら、酒場ってどうしても、

 血の気が多い人がいたりするじゃない?

 もし未成年のみんなを見て、

 面倒なことになっちゃったらイヤでしょ?

 だから、ここはプログちゃんとBBAに任せて、

 みんなは待っててもらいたいのよ」


プログの意図を察したか、

フェイティがすかさずフォローに入る。

そして同様の考えだったのだろう、

プログは特に何も発することなく、

静かにうなずいている。


「そう、なんだ。

 血の気の多い……。

 じゃあ、ここで待ってよっかな……」


「ずいぶんと器のちっさいヤツがいるのね。

 ま、あたしは別に構わないけど」


「……好きにしろ」



血の気の多い人にビビる者、呆れる者、興味ゼロの者、

反応は様々だったが未成年の3人は、

軽く手で合図を送ると、

酒場から少し距離を取る。



「すぐ戻ってくるから、待っててね」



ゴメン、とばかりに両手を合わせると、

フェイティとプログは扉に手をかけ、

酒場へと消えていった。





質素な造りのL字カウンターと、

5つほど置かれた丸テーブルで、

部屋がいっぱいになってしまう、

お世辞にも大きいとは言えない酒場の中は、

人で溢れかえっていた。

酒を飲む者や、話に花を咲かせる者。

外の雰囲気とは対照的に酒場の人々は、

活気に満ちている。



「さて、と。

 先生、酒は大丈夫ですか?」


「それほど強くはないけど、大丈夫よ」



了解です、とプログは小さくうなずくと、

何やらこじゃれたカクテルを作っている、

店のマスターと思しき、

人物の目の前のカウンター席に腰かける。



「いらっしゃい。

 常連がうるさくてすまんね」


「なに、活気があって何よりだよ。

 ちょっと強いヤツ、2つ貰えるかい?」


「あいよ、ちょっと待っててくれな。

 ハイお待ち、お嬢さん」



鼻と口の間のチョビ髭と、

首に付けた蝶ネクタイが特徴的なマスターは、

たった今作っていた、

透き通るようなアクアブルー色をしたカクテルを、

カウンターの端で1人飲む、

茶色のフードを深々と被った女性の前へと差し出す。



「最近、どうよ?」



戻ってきたマスターに向かって、プログは言う。

マスターは苦笑いを浮かべ、

別の酒へと手を伸ばしながら、



「いや~このご時世、なかなかねえ。

 それに加えて最近の良くない噂ときたもんだ……」



頭をポリポリと搔くマスターの言葉の語尾は、

明らかに歯切れが悪い。



「それって、例の宿屋の行方不明事件のことか?」


「なんだ、お客さんも知っていたのかい」


「まあ、ちょっとな。

 んで、どういう状況なんだ?」


「どうもこうもないさ、

 宿屋に泊まる客が忽然と消えてしまう、

 ただそれだけさ。

 詳しいことはわからないよ」



ハイお待ち、と出来上がった、

お酒の入ったショットグラスを2つ、

差し出しながらマスターは小さく肩をすくめる。

プログはそのショットグラスに入ったお酒を手に取ると、

グイッと一気に飲み干す。

続いてフェイティ。



「おっ、いい飲みっぷりだねえ。

 もう一杯行くかい?」



そこそこ強いアルコール度数だったのだろう、

2人の飲みっぷりの良さに、

マスターは嬉々としながら、

空になったショットグラスを片付けている。


そうだな、

プログはそこまで言うと、

急激に声のトーンを下げる。



「“とっておき”のヤツを頼むわ」



その瞬間、今までにこやかだったマスターの表情が、

まるで人が変わったかのように鋭い目つきになる。



「あんた、ハンターか?」



目つきを崩すことなく言う、

マスターの声量も、ガクンと落ちる。



「さあな。神様から自由をもらった、

 ただの旅人じゃねえかな?」


「……ちょっと待ってな、

 とっておきの酒を持ってきてやる」


マスターは2つのグラスを手に持つと、

おもむろに店の奥へと姿を消していく。



「あら、いいわね。

 せっかくだし、わたしもそれを……って、あら?」



マイペースなBBAが話しかけようとした時には、

マスターの姿はどこにもなかった。


しかし、マスターの姿が消えたにもかかわらず、

周りの客は気にすることもない。

相変わらず話し、食い、そして飲んでいる。


まるで、それが特に変わったことでもないかのように。



「プログちゃん、これってどういうこと?」


「まあまあ、待っていればわかりますよ」



何のことかよくわかっていないフェイティを、

プログが窘めていると、

程なくしてマスターが再び姿を現す。


その手には、ほんの少しばかり茶色く濁る、

ブランデーらしき酒の入った、

2つのグラスが持たれている。



「ほい、お待たせ」



マスターはその2つのグラスを置き、

そしてそのチョビ髭顔をゆっくりと2人に近づけると、

再び声を小さくして言う。



「例の行方不明事件だが、

 どうやら宿泊客が行方不明になる時が、

 決まっているらしい」


「!?」



その一言で、ようやくフェイティの表情も変わる。

それは紛れもなく、事件に関する新しい情報だった。



「時間が決まっている、だと?」


「正式に言えば日にち、だな。

 どうやらちょうど1週間の間隔で、

 その日の夜に泊まっていた客が、

 行方不明になるらしいんだ」


「あら、毎日というわけではないのね。

 その日に泊まったお客さんは、

 全員いなくなっちゃうのかしら?」


「いや、全員じゃない。

 行方不明になるのは数名だけみたいだな」


「なんだそりゃ?

 ワケわかんねえな。

 いなくなるヤツに共通する部分はないのか?

 例えば毎回行方不明になるのは同じ部屋の客とか、

 男とか女とか」


「それがないらしいんだ。

 聞くところによると、

 毎回行方不明になる客の部屋もバラバラだし、

 老若男女、まったく関係がないらしい」


「犯人さんが人を選んでいるのかしら?

 でも、それにしても変ね……」



ここまで一通り話し終えると、

プログとフェイティ、

そしてマスターは黙ってしまう。


どうやら、ここまでがマスターの知りうる、

“とっておき”のすべてのようだ。


プログは顎に手を当て、

ほんの少しばかりアルコールの入った頭を回転させる。


プログの目論み通り、

新たな情報を得ることはできた。


だが、その新情報によって、

ますますワケがわからなくなってしまった。

必ず1週間間隔と言う計画性がありながら、

行方不明になる人の特徴には、

まったく計画性を感じないし、

目的がさっぱりわからない。


唯一わかったのは、

もし今回の事件をシャックが引き起こしているものだと仮定すれば、

目的が不明確と言う部分だけは納得できる、という点だけだ。

だが、これもあくまでも仮定の話、であって、

100%確実なものではない。



「マスター、次に行方不明が起きる日ってのはいつだ?」


「お前さん達、もしかして宿屋に泊まるのかい?

 止めといたほうがいいよ、今日だから」



“とっておき”が終わったのだろう、

今まで近かったチョビ髭顔を引き、

再び仕事に戻ったマスターは、

プログの言葉に表情を曇らせる。



「そうか、今日か……」



(むしろちょうどいいじゃねえか)



困ったことでも、避けるべきことでもない。

それは、願ったり叶ったりだった。


プログはスクッと立ち上がり、

懐から金貨を取り出すと、

マスターに向けてピッ、と指で弾く。



「サンキューな、釣りはいらねえよ」



その一言を残して、

プログは酒場の出口へと歩いていく。

あらあら、もう少しいたかったのに、

フェイティは少しだけ残念な様子ながらも、

マスターにニッコリ笑顔を振りまき、

プログを追う。



カランカラン……



ドアが開いたことを告げる鐘の音に引き続き、

大きいとも小さいともいえない収穫を手にした、

プログとフェイティは酒場を後にした。





「……マスター、お会計、いいかしら?」


「おや、ずいぶんと今日は早いね」


「ええ、ちょっと、今日はね」



プログとフェイティが酒場を去って約1時間後、

カウンターの端で1人飲んでいた、

フードの女性は椅子から立ち上がる。


お金をカウンターに置くと、

女性は足取り軽く、

出口の方へと向かっていく。

深々と被ったフードから、

わずかに微笑を浮かべる口元が見え隠れする。



「ご機嫌だね、何か嬉しいことでもあったのかい?」


「ええ、それはもう」



そう言うと、マスターに軽く手をあげ、

酒場の外へと出ていく。


陽はすっかり落ち、辺りに人は見当たらない。

気温もグッと下がってきている。

それでも女性は構わず、

口元以外を隠していた、フードを脱ぐ。



「わざわざプログの方からアタシに会いに来てくれるなんて、

 こんなに嬉しいことがあっていいのかしらん?」



甘ったるい声色を発しながら、

脱いだフードの中から姿を現した女性は、

バンダン水路で出会ったあの統率者の一人、

ファルターだった。



<執政代理の第一印象>


後書きをご覧のみなさん初めまして、だな。

セカルタで執政代理をしているレイだ。

まるそーだという人物から急に手紙が来て、

今まで会った人物の紹介をしてくださいと言われたんだが、

私なんかが紹介をしてもいいのか?

該当する人物の中には私が知らない人も……

おっと、次の面会者まで時間がないか。

すまない、手短になってしまうが勘弁してくれ。


<レナ・フアンネ>

ワームピル大陸のルインに住んでいるそうだ。

最初に見た感じ、かなり気の強そうな娘に見えたが、

私の思った通りだったな。

王立魔術専門学校の件では彼女のおかげで解決したといっても、

決して過言ではないだろう。

本当に感謝しているよ。

しかしまさか、本当に学校内に突っ込んでいくとはな……。


<アルト・ムライズ>

ワームピル大陸のファイタルに住む少年だな。

彼は一件おとなしそうに見えるが、

学校での件も、彼が率先して事情を説明してくれたし、

意外と芯が通っている、なかなか見込みがある男だと思うぞ。

今はまだあまり目立っていないらしいが、

これからの成長に期待しているぞ。



<プログ・ブランズ>

元ハンターということらしいな。

俺と同じく、フェイティ先生の教え子でもあるそうだ。

印象……?

彼の印象は……これといって特にないな……。

ほとんど話したこともないし……。

まあいい、次に行こう。

(プログ:……。なんか俺の扱いひどくね?)


<ローザ・フェイミ>

ただ一言、ファースター王女だ。

あのような形で初めてお会いするとは思わなかったけどな。

王女になられるまでに色々とあったようだが、

それでも彼女が王女であることは変わらない、

私はそう考えているぞ。

他人に気を配れる優しい女性だ。

私も見習わなければ、だな。


<マレク>

……すまない、この人は存じ上げないな。

他に人に聞いてもらっていいか?


<クライド・ファイス>

ワームピル大陸の王都ファースターの騎士総長だ。

だが、レナさんからは、どうやら列車専門の犯罪集団、

シャックのボスと聞いている。

会議の時にお会いした時には誠実で実直な方で、

そのようなイメージはなかったが……。

もちろん、まだ100%信用はしていないが、

これから注意深く見ておく必要がありそうだよ。


<イグノ>、<ファルター>

すまない、この人たちも存じ上げないな。

しかし、こうなるならレナさん達に、

少しでもこの方達の話を聞いておくべきだったな……。


<フェイティ・チェストライ>

アックスの村に住む、私の先生だ。

小さい頃から先生には本当にお世話になった。

今、私がこうして政務に携わっているのも、

先生が優しく文武共に教えてくださったからだ。

……まあ少々、ぶっ飛んでいるのが玉にキズだがな。


<アロス・チェストライ>

フェイティの旦那さんだ。

直接お会いしたことはないが、

あの先生の旦那さんだ、

おそらく色々とご苦労を……ゴホンゴホン。



<レイ>

私か?

セカルタで療養されている陛下の代理を務めている。

……私の第一印象と言われてもな、

まあ、色々と苦労する部分はあるが、

セカルタを、そしてエリフ大陸をよりよくするため、

これからもがんばっていこうと思うよ。


<スカルド・ラウン>

王立魔術専門学校の学生だったな。

彼とは最上階で少し見かけた程度だったが、

冷静で物静かな印象を受けたな。

彼にもお礼を言いたかったのだが、

次の日にいつの間にかいなくなっていたな。

何かあったのだろうか……。


何? 面会者が早めに来ただと?

すまない、予定が少し早まってしまった。

俺はこれにて失礼する、

これからも、よろしく頼むぞ。



次回投稿予定→6/21 15:00頃

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