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描け、わたしの地平線  作者: まるそーだ
第1章 ワームピル大陸編
20/219

第18話:第2の来訪者

慣れというものは、

実に恐ろしいものである。

バンダン水路に到着した当初は、

あれほど異臭の酷さをわめいていた4人だったが、

水路の中盤に差し掛かる時には、

もはや会話に登場しなくなっていた。

まあ、どれだけ文句を言ったところで、

どうにかなる問題でもないのだが、

それを差し引いても、

慣れというものは恐ろしいものである。


そういうしているうちに、

長く続いた筒状のトンネルは終わりを迎え、

大きく開けた場所に辿り着いた。

辺りを見渡すと、正面には奥への道が見えるが、

左右を見ると、

まるでどこまでも続いているかのような、

そんな印象を残す暗闇が広がっている。


レナ達が今まで通ってきたトンネルと垂直に通るこの場所も、

巨大な筒状トンネルの造りになっているようだ。


だが、これまでレナ達が通ってきたトンネルよりも、

さらに大きく、

直径50メートルはある巨大なトンネルのようで、

その巨大なトンネルの横に穴が空けられ、

そこからレナ達が姿を現した格好だ。


そして、4人の目の前から、

今まで通ってきた作業用通路が姿を消し、

代わりに木でできた、吊り橋のようなものが姿を現す。

その吊り橋の先には、

先ほど見えた、奥へと続く作業用通路。



「なるほど、ここがワームピル側と、

 エリフ側のちょうど真ん中なのね」



吊り橋の手前で立ち止まり、

吊り橋の下を覗き込みながら、レナが呟く。


レナが覗いた先には、

作業用通路と並行して続いていた排水が、

巨大トンネルへチョロチョロと流れ、

まるで湧水のように、

巨大トンネルの底へ注ぎ込んでいる。


トンネルがあまりにも巨大すぎて、

底を窺い知ることはできないが、

どうやら底にも水が流れているらしく、

閉鎖されていた空間に、

ポツポツポツ……と、

水たまりに水が落ちるような音が響いている。


そして、吊り橋を挟んで反対側には、

こちら側とまったく同じ造りの排水路と、作業用通路。

どうやら、ワームピル大陸とエリフ大陸、

お互いの排水路と垂直に造られたこの巨大トンネルが、

排水を海へと流す、最終合流地点のようだ。



「どうやら、ここが最深部のようだな」



レナの隣にしゃがみ込み、

同様に下を覗き込みながら、プログが話す。



「ってことは、この吊り橋を渡れば……?」


「そういうこった、こっから先は、

 エリフ大陸管轄になるな。

 とは言っても、こんな廃墟、

 管轄も何もないけどな」



興味がないのか、

はたまた覗き込むのが怖いのか、

吊り橋の向こう側だけを見ながら話すアルトの頭に、

ポン、とプログが手を置く。



「でも、この吊り橋を作った人もすごいですね、

 こんな長い吊り橋、そう簡単には作れませんよね」



ローザが50メートル弱続く吊り橋のロープを、

手で揺らしている。



「まあ、どこの大陸にも、

 違う大陸に渡りたいと考えるヤツは、

 たくさんいるってことよ」



そう言いながら、

プログは吊り橋を渡っていく。


1人が通るだけで精一杯な幅の吊り橋は、

キィ……キィ……と、

まるで悲鳴を上げているかのように、

歩くたびに音を上げる。



「ずいぶんあっさり行ったわね……

 ホントに大丈夫なの、コレ?」



眉間にしわを寄せ、文句を言いながらも、

レナはプログに続いて、吊り橋に足を踏み出す。



「こ、これ……

 下見たらダメなやつだね……」


「ちょ、ちょっとアルト、

 大丈夫ですか?」



3番目に渡り始めたものの、

恐怖のために足元を見ることができないアルト。

ノロノロ歩くその姿を見て、

思わずローザが声をかける。



「アルトー!

 ゆっくりでいいぞー!」


「慌てないでいいわよー!」



そんなアルトの気持ちを察したか、

吊り橋を渡り終えたプログとレナが、

アルトに声をかける。



「は、はーい……」



吊り橋の揺れと緊張で、声を震わせながらも、

なんとか歩を進めるアルトと、

そのうしろで待つローザ。


アルトと吊り橋の格闘は、

しばらく続いた。





「ふぅぅぅ……」



吊り橋を渡り切ったアルトは、

すっかり疲れ切ってしまい、

思わずその場に座り込んでしまう。



「オイオイ、大丈夫か?」



やれやれ、といった表情で、

プログが手を差し伸べる。



「アルト、大丈夫ですか?」



最後に渡ったローザも、

心配そうにアルトに声をかける。



「だ、大丈夫だよ!

 こんなところで休んでいるわけには、

 いかないしねッ!」



ローザが渡り切っている姿を確認して、

慌ててアルトが立ち上がる。



「そうね、ホントならこの辺で、

 ちょっと休憩したいトコだけど……

 この環境じゃ、ちっとも心休まりそうもないしね」



そんなアルトに気を遣いながらも、

レナが辺りを見渡しながら話す。


辺りには、相変わらずヘドロがそこら中にへばりついているし、

何より、今まで忘れていたが、

やはりクサいものはクサいのだ。

こんな場所で休憩したところで、

体も心も休まるはずがない。



「そうだな、幸い敵もそれほど強くないし、

 早いとこ、ここから抜け出しますか」



そう言うと、プログが先頭を歩き出す。



「そうね、あーあ、

 早くシャワー浴びたいわー……」


「そうですね。

 臭いとかも早く落としちゃいたいです」


「そうよねー!

 まったく、嫌になっちゃうよね!」



プログに続き、

レナとローザがお喋りをしながら、

奥へと進んでいく。



(……僕は……)



1人取り残されたアルトは、しばらく下を向いたまま、

立ち止まってしまう。

そして、3人が向かった、

奥の道へ視線を送る。


3人は、まだアルトが立ち止まったままであることに、

気付いていない。

少し薄暗い空間に、

1人残されたアルトの目には、

3人はどう映ったのだろうか。



「……ッ!」



ギュッと唇を強く噛みしめ、

アルトは意を決したように走り出した。

自分より前に行く3人に追いつくために。





かつて、この排水施設は、

ファースターとセカルタが、

お互いの技術を誇示するために、

当時の最高技術を駆使して建築された施設である。

当然ながら、相手の技術よりも、

少しでも優れたモノを造ろうと、

お互い躍起になったものである。


……が。



「なんだ、結局、

 こっちの施設も、

 造りがほとんど変わらないじゃないの」



あたりを見渡しながら、

レナがつまらなそうに呟く。


エリフ大陸側の施設に入った、

レナ達の目に飛び込んできたのは、

ワームピル大陸側の施設とまったく同じの、

筒状のトンネルだったのだ。


結局、お互いの技術はさほど変わらない、

というよりほぼ同じだったのだ。


今まで全く同じ風景だったため、

大陸が変わったことにより、

少しは違う風景が広がるのかと思っていたレナにとっては、

つまらないこと、この上ない。



「まあ、そんなモンだろ」



一度通ったことのあるプログが、

頭の後ろで手を組みながら、

やはりこちらもつまらなそうに歩いている。



「これほどの技術を持っていたのなら、

 お互い、手を取り合っていれば、

 今ではもっと……」


「おっと、やめときな。

 今さらそんなことを言っても、

 しょうがないだろ?

 それに……」



下を向いてしまったローザの方へ、

プログが振り返る。



「たとえそうであっても、

 エリフ大陸の人間は、

 それを良しとしないさ」



組んでいた手を放しながら、

やや低い声でローザに話す。



「エリフ大陸の人間としてのプライド、

 ってことかしら?」


「まあ、そういうことだ。

 ワームピルの人間は、どう感じているか知らないが、

 少なくともエリフの人間には、

 昔はワームピルだけには負けてなるものか、

 って風潮はあったからな。

 今でもその風潮は完全に消えたわけじゃないし、

 実際、ワームピルとの交流は今もないだろ?」


「ふーん、何か難しい問題なんだね。

 僕なんか、お互いの良いトコを合わせて、

 互いにもっと良いモノを作ればいいのに、

 って思っちゃうけど……」


「そうだな。昔のヤツが全員、

 アルトみたいに真っすぐなヤツだったら、

 良かったんだろうけどな。

 ま、どの時代でも、

 歪んだ考えの大人がいるってことさ」


「たとえば今でいう、

 クライドみたいなヤツってことね」


「まあでも、今回は2国の仲の悪さが幸いしたな、

 おかげでセカルタにいれば、

 そうそうワームピルのヤツ等が、

 来ることもないだろうしな」


「確かにそうだけど。

 なんだか皮肉なものだよね、

 仲が悪いおかげで安全って言うのも……」


「そうですね……

 私達としては、

 すごく喜ばしいことなんでしょうけど……」


「セカルタに着いたら、あたしたちのことも含めて、

 改めて話し合いましょ。

 とりあえず、今は……」


「そうですね、まずはここを抜けることを、

 第一に考えましょう」


「うん、そうだね」


「おうよ」



ローザの言葉を最後に、

4人は再び先に進むことに集中する。

セカルタが造りだした当時の最高施設を歩いていく。





バンダン水路に入ってから、

1時間程度が経過しただろうか。

レナ達はエリフ大陸側の、

トンネルの最終地点まで進んできた。

長らく人の手が加えられていなかったせいか、

今まで以上に魔物に遭遇することも多かったのだが、

レナの炎やローザの気術といった遠距離攻撃を駆使し、

ゆっくりではあるが、着実に歩を進めてきた。


そして、レナ達の視線の先、

約50メートルくらいに、

地上に戻ると思われる、

階段が姿を現したのだった。



「あ! あれは……!」


「お、ようやく辿り着いたか」



階段をいち早く見つけ、

思わず声をあげるアルトとプログ。



「これで、やっと出れますね」


「とりあえずシャワーよ、シャワー。

 あー、早くサッパリし




「あら~ん?

 ようやく来たのね、

 お姉さん、待ちすぎてくたびれちゃったわよ~?」



ローザとレナが足早に階段に向かおうとしたその時、

コツコツ……と、

わざとらしく階段を降りる音と、

甘ったるい声を発しながら、

何者かが姿を現す。


階段を上がることだけを考えていた4人は、

慌ててそれぞれの武器に手を置き、身構える。


女性だ。

妖しいまでに艶やかな黒髪を、

レナ同様腰まで伸ばし、

一見、水着と見間違えてしまうかのような、

やたらと胸を強調した、

露出の多い服装をしている。


年齢は、おそらくレナやローザよりも、

少し上くらいか。



「お前はッ……!」



その女の姿を確認するや否や、

驚きの表情を隠せないプログが、

思わず声を漏らす。



「え? 何?

 プログの知り合い?」



隣にいたレナが、

その声を聞き逃すわけがない。

プログを見ながら訊ねる。



「い、いや、俺は知らな


「あら~ん?

 プログったらひどいじゃないの~、

 アタシたち、永遠の愛を誓った仲じゃないの、ねえ?」



プログの言葉を遮り、女は黒髪をファサッ、

っとかきあげながら、

再度レナ達の元へコツコツ、と歩き出す。



「え、永遠の……」


「愛!?」



聞き慣れない、そして、

この場に登場することがないと思っていた言葉に、

アルトと、ローザが目を見開き、

驚きの表情でプログの方へ振り向く。



「ちょ、待て!

 それはお前の勝手な妄想だろうが!

 俺はそんなこと、一言も言ってないぞ!」


「あら~ん?

 そうだったかしら?

 まあいいわ、それよりひどいじゃないの、

 アタシを置いて、どっか行くなんて」


「そんなの知るか!

 別れたのにお前がしつこく、

 くっついてきただけじゃねぇか!」


必死に弁明するプログと、

どこか、噛み合ってそうで、

噛み合ってない会話を展開する、謎の女。



「とりあえずプログ、この人誰?」



このままじゃ埒が明かないし、収拾がつかない、

そう判断したレナが、横槍を入れる。



「あらん?

 お子ちゃまには、まだまだ刺激が強い話だから、

 大人の会話に入って来ちゃダメじゃないの、

 お・こ・ちゃ・ま、はね?」


「あら、それは失礼したわね。

 でも、若さに嫉妬するのはやめた方がいいわよ、

 ただでさえ見苦しいのに、

 よけいに見苦しく見えるわよ」


「あら~ん? アタシが嫉妬するとでも思って?

 それに、アナタみたいなお子ちゃまには、

 アタシのようなお姉サマの魅力なんて、

 わからないでしょうね、フフッ」


「そうね、あんたのような、

 年増の魅力を理解するのには、

 あたしには相当時間かかりそうね」



まるで心がどこか別の場所にいるかのように、

無表情のまま、坦々と互いに言葉をぶつけ合うレナと女。

あまりの雰囲気の冷たさ、

そして2人の無表情ながらの威圧感に、

他の3人はまったく入り込んでいけない。



「フフッ、クライドに聞いていた通り、

 口数の減らない、なかなか根性のあるクソガキじゃない、

 お姉さん楽しすぎて、ヘドが出ちゃうわね」


「……ッ! クライドですって?」



だが、そんな冷たい雰囲気が、

女の一言によって打ち破られ、

レナの言葉に心が戻ってくる。

思いもよらない名前が、

ここで登場したからだ。



「お前、クライドを知っているのか!?」



結局、女と知り合いかどうなのか曖昧のままなプログが、

レナ同様、驚いた表情で女に聞く。



「あらん? クライドは、

 アタシを紹介してくれなかったのかしら?

 ……まあいいわ、アタシはファルター。

 知と美を兼ね備えた、天才科学者よ」



ファルターと名乗る女が、

4人に向けて軽く頭を下げる。



「ということは、

 あなたもシャックの一員なんですね?」



先ほどからの構えを崩すことなく、

ローザがややこわばった表情で訊ねる。



「シャックの一員?

 ……まあ、説明するのも面倒だし、

 そういうことにしてあげるわ、

 それじゃ、アタシは今日は挨拶と様子見だけだから、

 これで失礼するわね~ん」



そう言うと、ファルターはクルッと向きを変え、

階段を上がろうとする。



「待ちなさいよ、

 あんたがシャックの一員と聞いて、

 このまま逃すとでも思っているのかしら?」



2つの剣を引き抜きながら、

レナがファルターを呼び止める。



「……まったく、鳴き声がうるさいクソガキね。

 それに、勘違いしないでいただきたいわね、

 アタシはシャックの一員じゃなくて、

 クライド同様、統率者の一人よ」



レナに呼び止められ、

そう言いながら振り返るファルターの目線は、

まるで獲物を睨むヘビのように威圧感がある。



「統率者?

 ってことは、クライドと同等って事か」


「そうよん。

 プログも一緒にどうかしら?

 今ならクライドに話をつけてあげてもいいわよ~?」


「断る。

 クライドがいる上にお前までいる集団、

 どう考えてもヤバい集団だろうしな」


「あらそう、

 アタシはこんなに好きなのに、

 アタシの愛を受け取ってくれないのね……」



出てもいない涙を拭う、

じつにわざとらしいジェスチャーをした後、

ファルターは、再び階段に手をかける。



「クライドの仲間ってことは、

 お前も母さんを知っているのか!?」



そんなファルターを、

今度はアルトが引き止める。



「アンタがアルトね?

 ……クライドに言われてるでしょ、

 知りたければアタシ達を追ってくることね、

 もっとも、追う前にここで死ぬかもしれないけど、フフッ」



チラッとアルトへ視線を送り、ファルターが話す。



「ここで死ぬって……、どういうことですか?」


「結局ここでやりあうつもりなのかしら?

 それとも、この施設を爆破でもするつもり?」



ローザ、そしてレナがファルターを再び睨み付ける。


先ほどからファルターは挨拶、

様子見と言っていることから、

ここでレナ達と戦うことはないはずだ。

実際、ファルターは武器らしきものを、

何も持っていない。


だが、ファルターはレナ達が、

ここで死ぬ可能性があることを示唆している。

階段があることから、

おそらく出口はすぐそこのハズだ。

ここから施設内で迷って出られなくなる、

といった可能性も低い。


だとすれば、どういうことなのか?



「言ったじゃない、アタシは様子見だって。

 ほら、武器とかも持ってないでしょ、

 早まった考えは、

 お子ちゃまの証拠よん?」



そんなレナ達の考えを見透かしてか、両腕を広げ、

武器等を隠し持っていないことを証明するファルター。



「大丈夫よん、アナタ達のお相手は、

 ちゃんと用意してあるから、ほら」



そう言うと、

ファルターは左手で指をパチン、と鳴らす。



「……ッ!」



あからさまな怪しい動きに、

4人は息を飲んで周囲を警戒する。


……が、特に周りに動きはない。

ファルターは相変わらず、

不気味な笑顔を浮かべている。

バンダン水路に、静



「上だッ!!」



プログの大きな声がトンネル内に響き渡る。


レナ達が慌てて上空を見上げると、

何やら黒い大きな物体が、

レナ達を押し潰さんと、

落下してきているではないか!



「くッ!」


「うわあッ!」


「キャッ!」



4人は慌てて後ろに下がり、落下物を避ける。



ブヨンブヨンブヨン……



落下物はまるでゼリーのように、

落下の衝撃を吸収している。



ブラックスライムだ。

だが、今まで遭遇してきたものの数倍の大きさである上に、

体が少しだけ透き通っていて、

ブラックスライム越しにファルターの姿が見える。


そして、スライムの中心には、

何かの核と思われる、

赤く光る球体のようなものがある。


「言ったでしょ?

 アタシは天才科学者って。

 この子は、サンプル一号、

 そこら辺にいた子を、

 アタシが強化してあげたのよ。

 どう、かわいいでしょん?」


「そうね、やっぱり年増の魅力を理解するのには、

 相当な時間かかりそうなのを、実感できたわね」



まるで先ほどの冷たい空間に戻ったかのように、

レナが皮肉交じりにファルターに話す。

だが、先ほどと違うのは、

レナの表情に、

それほど余裕が感じられないことだ。


「そうね、この子の可愛さが分からない、

 やかましいクソガキは、

 ここで死んでおいた方がいいかしらん?

 それじゃ、頑張ってね~ん。

 プログ、いつまでも愛しているわ」



そう言うと、

ファルターはプログに投げキッスをしながら、

コツコツ……と階段をあがっていく。



「あ、ちょっと!」



アルトが地上に消えていくファルターに向かって叫ぶ。



「アルトッ!」



そんなアルトにプログが、

サンプル一号と呼ばれた魔物に、

視線を向けたまま、釘を刺す。



「分かってる!

 まずは、コイツを早く倒しちゃおう!」


「オーケーだ、アルト。

 それじゃ、サッサと片付けるぞ!」



自分が言いたかったことを、

アルト自身がしっかり理解していることを知り、

プログは一瞬、そして少しだけ表情を崩すが、

すぐに表情を引き締め、魔物と対峙する。



「まったく、最後にとんでもなく、

 気持ち悪いのが出てきたわね。

 サッサと片付けて、あの年増女を追うわよ!」



アルトの母親の事、そしてシャックの事、

色々とファルターから聞き出したいことがあるため、

なるべく逃がしたくはない、

そう考えたレナはそう叫ぶと、

剣先に意識を集め始めた。

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