球技大会 ~R~
「っダァ!」
ズドォン!
アタッカーの鋭い気合とともに放たれたボールは、気合同様、鋭く相手コートに突き刺さった。さすが元バレー部だけのことはある。そのエースアタッカーもとい澤村は、チームメートと掌を打ち合わせて喜びを分かち合っている。痛くないのかな、あれ。
ここで現状説明。
澤村が試合中である。
桐林は知らん。
では俺はというと、ミルクティーを飲んでいる。
水筒(お茶)は持ってきてはいたが、汗をかく身体にはどうも味気なく、我慢できずに体育館脇の自動販売機にて購入したというわけだ。で、そのついでに体育館を覗いたところ、澤村が試合中だったのである。
それにしても。こうして改めて澤村を見ると、やはり自分とは根本的に違う人種だということがわかる。いくら俺と同じでエロゲが趣味でも、二次元を愛していても、それは上っ面でしかない。
澤村には、会話能力がある。その場のノリがわかる。バカ騒ぎの仕方もわかる。
だが、俺には会話能力がない。むしろマイナスで、コミュニケーション障害(通称コミュ障)がある。その場のノリがわからない。わからないから恥ずかしい思いもたくさんした。バカ騒ぎに至っては、労力の無駄としか思えなくなっていた。よく非合理的な行動に対して「楽しければいい」などという輩がいるが、それは楽しめること前提の話であって。むしろ時間の無駄とか金の無駄とか考えちゃうような人間からしてみれば、それこそ迷惑行為でしかない。そういう奴は俺以外にもチラホラいた。
と、そこまで哲学を展開したところで、試合終了のホイッスルが鳴った。澤村たちは―――どうやら勝ったらしい。
俺はそれだけ確認すると、寄りかかっていた壁から背を離した。