つよがり、こわがり
「こわい」
[君には俺が必要だし、俺にも君が必要]
君からの突然の電話。
「どうした?」
至極優しい口調で。
君とは近いようで遠くて。俺は携帯を耳に押し付けた。
「何か、また・・・・・・怖いよ」
何かに怯える君の元に飛んでいけたらいいのに。俺はそれすら出来ない、君を守れない。
無力だ。
「落ち着けるか?」
「君の声、落ち着いてるから安心する」
そういって、電話越しで笑っているのだろう。かすかに笑いを含む声。
「俺が居るからな」
そっち行って守ってやれなくてごめんな。
俺は少し悲しくなりながら付け加えた。
「大丈夫。なんか元気出てきた!いつものあたしに復活ー」
「そりゃよかった」
君の楽しそうな表情が浮かぶ。俺もつられて笑顔になった。
・・・・・・会いたい。
さっきまで一緒に居たけれど、明日も会えるけれど、そんなこと関係なかった。
声だけじゃ逆に虚しくなるだけだ。
「もう家?」
「うん、電話してたらあっという間だったよ。だからもう大丈夫。何か知らない人に話しかけられただけだし」
でも君のトラウマに少し触れてしまったんでしょ。だから泣きそうな声で俺に電話してきたのに。君はこんなにも気丈な子。
窓越しに外を見る。外は一番星が光り始める時間で。
君も見ていたらなあ、なんて柄にも無く思うんだ。
「何かあったらまた連絡してな。また明日」
「またね」
少し躊躇ってから電話を切る。本当は寂しかったんじゃないかなんて不安になって。
だけど俺に似て君も自分のことは外に出さずに抱え込む人。きっと「平気」しか言わない、そう言い聞かせた。
大好きな君だから、俺は・・・・・・こわくなる。
「つよがりな君。もっと俺に頼ってよ」
そう言ったら、君も怒るかな。
「つよがりなのは、君」って。