001
ワタシは8歳の時…この研究員たちに拉致された。
白い輸送車と白い服の男たちに囲まれた、あの日。
一体あれからどれぐらいの時間…歳月がたったのか…。
ワタシが入れられている培養液の水槽からは今が平成何年かもわからない。
ココガワタシノセカイ。
水槽のガラスに映った自分の姿からも想像がつかない。
なぜならワタシは不老不死に「カイゾウ」されたから…。
ここでの記憶なんて毎日毎日同じことの繰り返し…。研究員たちによる…不老不死への死の実験…。
自分達が生んだ矛盾の答えを見てみたいらしい。
どんなに泣いても、叫んでも、喚いてもこの人たちは顔色ひとつ変えない…。
あぁ、またこれから始まるのか、人を人とも思わない人による悪魔の所業が…。
「これから第二七三八七三次実験を開始する。」
研究員の一人がこう言うとワタシの脳に激痛が走る。
不老不死でも痛みには耐えられない。
耐えきれなくなって強く強く目を閉じる。
薄れていく意識…またいつもの死に向かう感じ。
死がないとはいえこの感じだけはキライ。
始まる走馬灯。
………………………あの男の子は生きてるのかな………………。
「ボクがたすけるから」
拉致された人たちが集められた鉄格子の部屋でワタシにそういってずっと手をギュッと握っていてくれたあの男の子。
黒い髪と真っ赤な瞳の男の子。一日に何回も見る走馬灯。ワタシの中で一番の思い出なんだろうな。
初恋だったのかな。
「………う報発令!緊急警報発令!研究所内に侵入者だ!!」
聞きなれない音に死の入り口から帰ってくるワタシ。…ゆっくり目を開く。
そこには倒れ込む研究員たちと……黒いスーツを身に纏った黒い髪と真っ赤な瞳の男の人が立っていた。