ep.3 “Silensって何?”
期間結構空いてしまってすみません。また久しぶりの投稿。
自信作と言っている「シェア傘ラプソディ♪」の更新はどうなってるんだ?思っていると思われる皆さん。僕に毎日投稿はできないんですよ。ごめんなさいね。
そんなことより、今回のシレシアは宮本蒼がSilensと敵との戦いを目撃してしまうらしい。しかも優斗は消えちゃうし。どこ言ったんだよ〜。そんな、シレシア3話をぜひお楽しみください。どうぞ!
入学式とその次の日にすでにやらかして先生に怒られたが、それ以降は何もやらかすこともなく、ゴールデンウィーク前の週を迎えた。
クラスの人たちとも仲良くなり、毎日が楽しい。
そして早速、ゴールデンウィークの初日にクラスみんなでカラオケに行く約束までしている。
「なぁ、蒼」
「何? 和也」
「お前モテるよな。少し分けてくれよ」
「そう言ってるお前もな。ほら、行くよ」
一時間目から移動教室で特別棟へ向かう途中。
突然そんなことを言われたので、軽く脛を蹴っておいた。
「授業つまんないし、サボろうよー」
「……」
ため息とともに、今度は回し蹴り。最近の和也はどこか壊れてる。中学生デビューというより、ただのバカが悪化しただけだ。
それよりも――。
僕は女子の中で特に仲良くなった岩城さんの元へと歩いた。好きなアニメや歌手が同じで、自然と話すようになった子だ。
「あっ、蒼くん! 昨日のアニメ見た? あそこめっちゃ面白くなかった!?」
「うん、寝るの遅くなって親に怒られたけどね」
岩城さんが笑う。その後ろで、違う女子と歩いていた和也が呟いた。
「……すんなりモテやがって」
流石に呆れて無視した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
午前の授業も終わり、昼休み。
僕はいつものメンバー――和也、慎二、優斗と一緒に寮の部屋で昼ごはんを食べていた。普通の生徒たちは学食とか屋上とかで食べているのに対し、僕らは広い寮の食事スペースを独り占めだ。
「おい、今日は生姜焼きって言っただろ。なんで明日の分のカレー作ってんだよ」
「あ、ミスった。すまん」
「当番じゃない奴はゲームしてねぇで勉強しろよな」
「わかってるって!」
そんなふうに騒がしく、平和で、匂いだけは腹を刺激してくる。
――事件が起きるまでは。
ピンポンパンポーン、ピンポンパンポーン♪
校内放送のチャイムが二回。これは、緊急事態の合図だった。
『先ほど、高校棟職員室にて小規模な爆発が発生しました。原因は不明ですが、外部からの侵入が確認されています。同時に、学園サーバーに不正アクセスがあり、ネットワークが不安定になっています。生徒は速やかに一時避難してください――』
空気が一瞬で張りつめる。
「「「なあ、蒼」」」
「……なんだよ」
「「「これ、やばくね?」」」
「いや、普通にやばいね」
全員同時に息をのんだ。外から、叫び声やガラスが割れる音が響く。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
昇降口はパニックだった。叫ぶ声、逃げる足音、泣き出す一年生。僕らは人波に押されながらも、なんとか出口を目指す。
「し…んじ……いるか? ゆ…うと? 和也は?」
「全員……いる。けど……これ、動けねぇ……!」
ようやく階段までたどり着いた――その瞬間。
ドンッ!
爆風とともに、視界が白く弾けた。耳がキーンと鳴り、音が遠のく。そんな中、煙の向こうに、黒い影がいくつも見える。銃を構えた謎の人物たちだ。そして――その連中と、別の何者かが戦っていた。
パシュッ!カチッ!
光の弾が弾け、金属がぶつかる音が響く。まるでゲームのような、非現実的な光景。けど、ほんの一瞬しか見えなかった。視界がまた白くなり、記憶が途切れる。
「……あれ? 優斗は?」
慎二の声で我に返る。周囲を見渡すが、確かに優斗の姿がない。
「爆発の前までいたのに……」
「お前、幻でも見たんじゃね? そもそも爆発なんて――」
「いや、あった! 見たんだ!」
二人が首をかしげた瞬間、僕の頭にあの光景がフラッシュバックする。あの記憶を消した黒い制服の女子生徒。無線機をつけた連中。――Silens。
「優斗も……!」
気づけば駆け出していた。理科棟へと。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そこはまるで戦場だった。銃撃音。閃光弾。氷結した床。感電して倒れる侵入者。そして、黒い制服に身を包んだ生徒たちが連携して戦っている。
その中に――優斗がいた。無線をつけ、冷静に指示を出すあの入学式の時爆弾を処理していた男の先輩の隣で。
「ここ、抑えました!」
「よくやった、神山!」
――神山優斗。僕の友達。でも、今の彼は「Silens」の一員だった。唖然として立ち尽くす僕の肩に手が置かれる。振り返ると、あの黒髪の女の先輩が振り向く。入学式の日にも見た、あの人だ。
「……また会ったね、蒼くん」
背筋が凍るような声だった。冷たく、だけどなぜか情があるような声。
「なんで僕の名前を…?」
「流石に何回も何回も私たちに絡んでくるめんどくさいせいとのことを忘れるわけないじゃない、蒼くん。」
「質問してもいいですか?」
「いいわよ。どうせ記憶消すんだから何個でも。」
冷たく言い放つ。またあの頭が痛くなる記憶抹消がさせられると思うとそれだけで頭が痛くなる。
「ありがとうございます。では、どうしてこのような状況に?」
「それはね、この学校、敵校に狙われているの。どことは言わない。そこまで言って、『記憶消えてませんでしたー。』だったらもう私の立場も悪くなっちゃうんだから。」
敵校については教えてくれなかったし、なぜ狙われているのかも教えてくれない。なら…
「どうして、こんな最新技術、いや未来の技術を使ったような銃をこの学校の組織……Silensが使ってるんですか?」
そう質問すると、その女子生徒は少し体をビクッとさせ、言葉が詰まりながらも、「私はあまり知らないな。」と答えた。何か裏がありそうだけど、別にいいや。
「最後に一つ。どうやったらSilensに入れるんですか?」
「うーん。君みたいな生徒とか?」
これは即答。またまた裏がありそうだけど…。そんなことを考えていると、さっきと同じように今度は違う方の肩に手が置かれる。
「あ、指揮官。すみません、こんなところで道草食ってしまって…。」
「いやいや、いいんだよ。逆にこの子を見ておいてくれて助かるよ。」
「指揮官」と呼ばれたその人は、男の先生だった。入学式の時、ステージ横にいたのを見たことが一回だけあった人だ。
「さて、蒼くん。時に、戦いって何かわかるかい?」
急な質問で言葉が詰まりつつも、「多分、自分の身を守るためだと、思います。」と答えた。すると、ニコッと笑って、「いい答えだな。」と指揮官の先生は言った。
「この戦いは自分の身を守っているんだよ。この場合は学校にバレないように学校の安全を守るってことだけど。」
「…」
「よくわからないだろうけどね。まあ、君もSilensに入ったらわかると思うよ。」
「…え?」
「君、Silensに入りなさい。ここまで知られては、記憶を消したって意味がないだろう。君はSilensに入るのに十分な才能とそして、身体能力と体質がある。記憶を消しづらく、小学校の指導報告を見る限り考察がすばらしいらしいな。あと、身体能力。強く消しすぎて覚えていないかもしれないが、入学式の日、君があの戦いを見てしまった時、君は、記憶を消そうとした彼女と追いかけていた犯人をほぼ一瞬で、彼女の銃で撃ってしまったんだ。」
「そんなこと…」
してません。そう言おうとしたのだが、記憶がだんだん蘇ってくる。咄嗟に記憶を消そうとしていた彼女のてから銃を奪い、まず撃ち、さらにあの悪者そうな人も一緒に撃ったんだ。その後駆けつけた人たちによって、強力な記憶操作が行われた…。
「…ありました。だからと言って…」
「もう一つ、小学校の指導報告で分かったことがある。君は卑下しすぎだ。もう少し、自分に自信を持ちなさい。そういうことでも、君はSilensに入ったほうがいい。」
そんな会話をしていると、光線が急にこっちに飛んできた。一瞬の判断で顔だけ動かして避けた。が、あまりにも急にこちらへ飛ばしてくるものなので、先生が、死角へと誘導してくれた。
「ほら、光線避けたじゃん。」
「それはそうですけど、今結構イライラするので撃ってもいいですか?」
あまりにも一番弱いと思われた僕に対して撃ってくるので、イラっときているのだ。
「本来なら十分な訓練のもとやるんだが…。まあいいだろう。相手を失神させるだけでいいんだからな。」
と銃を渡してくる。この銃はゴム弾で、撃った反動が少々大きいらしいが、まあ支えればいいのだろう。
死角ギリギリまできて、相手の位置を把握。あの指示してそうなやつからぶっ倒すか。死角から出たその一瞬で僕は正確に狙った相手を仕留める。射的とほぼ同じだ。あれは銃口が長くて、撃ちやすいが、方向、風向きなどを考える点ではほぼ同じ。相手は一瞬で倒れてしまった。流石に腹部を狙えばそうなるわな。
だが、敵は諦める様子もなく銃を撃ってくる。流石に避けきれなくなると思ったら次の瞬間、一瞬で複数人いた敵が倒れ込む。後ろを見れば、女子生徒と……優斗。その二人が銃を持って倒していた。
「戦いは、終わりだね。敵の人たちは記憶を消して駅近くの公園にでも寝かせておけば笑い物かな?」
少しジョーク(?)を先生が言い、ようやく戦いが終わった。いろいろわからないこともあるので事件が解決したとは言い切れないが、少なくとも戦いは終わった。
「蒼、なんでお前がここに…?」
「君を追ってきたのだよ、蒼くんは。それにしても、すごいねぇ。あんな一瞬で仕留めるとは。一度考えてみてくれ。今は入りたくないと思っていても、君の実力が学校を救うことになるんだよ。」
確かに、側から見たら不審すぎるこの組織、Silens。怖くて入りたくないというのもあるが、自分の実力が学校を救う……か。
「じゃあ、入ってみようかな?」
「よーし!同学年いなかったら嬉しいぜ、蒼!よろしくな。」
「うん、よろしく。それより、指揮官の先生と記憶を二回も消したそこの先輩の名前は?」
急に呼ばれた二人は戸惑いつつも、「桐生希望です。」「片浜航平だ。」と名乗ってくれた。
期待に応えるように、「じゃあ、片浜指揮官と桐生先輩、これからよろしくお願いします。」と元気な声で僕は挨拶をしたのであった。




