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Silens&Silentia シレンス・シレンティア  作者: 宮本葵
第一章「Silensとの出会い」
3/7

ep.1 “入学式と謎の組織”

1エピソード2000文字くらいしか書けない底辺作家ですが頑張っていきたいと思います。

これからも応援お願いします。


2025/09/16 一部加筆

2025/09/19 一部加筆

2025/09/25 一部加筆

2025/10/07 一部修正

2025/10/08 一部加筆

 僕、宮本蒼は寝ていた。今日は、私立桜雲学園中等部の入学式だというのに。

 張り切りすぎたせいか、昨夜は一睡もできず、気がつけば始発の電車に飛び乗っていた。そしてなぜか、最寄りの「並木駅」ではなく、ひとつ手前の「NTXつくば駅」で降りてしまっていた。

 何をしているのか、自分でもよくわからないまま、早朝の空気を吸いながら学校へ向かって歩いていた。当然だが、到着は早すぎた。


(なんでこんなに早く来たんだ、僕は……)


 しかし、その後の記憶は、どこか靄がかかったように曖昧だ。確かに学校に着いたはずなのに――何か、見てはいけないものを見たような……そんな感覚だけが胸に残っている。

 たしか、一度ベンチに腰掛けたような気がする。でも、そのあとは……何も思い出せない。そして、気がつくと僕は保健室のベッドに寝かされていた。


「入学式当日に早朝登校して、しかも先生に運ばれて保健室で爆睡してた新入生なんて初めてよ。桜雲学園の伝説入りかしらね。歴史に残るわよ。」


 優しげな女性の声に驚いて目を開けると、白衣をまとった保健の先生が笑っていた。


「あ、あの……気づいたら寝ちゃってました。」

「うん、見てたわ。私が早めに来てなかったら、制服着た不審者として通報されてたかも。まあ、校章で新入生って判断したけどね。」

「す、すみません……。」


(あれ? でも、入学式って……?)


「えっと、入学式は……もう始まってますか?」

「いえ、あと一時間よ。もう各クラスでの説明とかは終わってるけど、大丈夫。まだ本番じゃないわ。」


(……よかった。)


「君のクラスは1-Aね。担任の先生から聞いてるわ。」


(1-A……成績順なのか?それだったらうれしいが、たまたま……だよな。)


「じゃあ、教室戻ります。本当にありがとうございました。」

「ええ、でも次は倒れずに来てね? お昼寝は授業中以外でお願いよ〜。」


 軽く笑いながら手を振る先生に会釈し、僕は保健室を後にした。案内板を見ながら階段を上る。一年生の教室のフロアは四階。想像以上に広い校舎に緊張感が増してくる。


(はぁ……入りづらい。)


 もう自己紹介も終わっているはずだ。今さら教室に入るのは、まるで舞台のど真ん中に一人で立たされる気分だろう。……と思っていた矢先、教室の前でフラフラしているところを担任の先生に見つかった。


「お、来た来た。遅れてきたけど、ちゃんと自己紹介はしてもらうからね。」

「え……あ、はい。」


 半ば押し込まれるように教室に入ると、クラスメイトたちの視線が一斉に集まった。足が震えたが、逃げ出すわけにもいかない。


「えっと……宮本蒼です。柏北東小学校から来ました。一年間、よろしくお願いします。」


 パラパラと拍手が起こった。


「席はあそこね。窓際の席の前から三番目。」


 指さされた席に向かいながら、胸の奥にじわりとした緊張が広がっていった。


(これが、僕の中学校生活の始まりか……。散々だな。)


 だが、このときの僕はまだ知らなかった。そのわずか数時間前に目にしてしまった“あの光景”が――やがて、すべての始まりになるということを。


~~~~~~~~~~~~


 教室での自己紹介を終え、僕たちは講堂へと誘導された。入学式はすでに始まっていて、厳かな音楽の中、校長先生が演台に立っていた。新入生入場の合図で新入生が進みだす。


(うわ……本格的だな。)


 天井の高い講堂には、上級生と保護者、そして教師たちが整然と座っている。大きな校旗が掲げられ、スポットライトが演台を静かに照らしていた。

 僕は案内された席に着き、周囲とともに黙って話を聞く。だが――胸がざわざわとしていた。だんだんと頭痛と吐き気が襲ってきた。長い話のせい……だけじゃない。何かが違う。一瞬ステージ横に先生が見えたが、あの人を見た瞬間から頭痛と吐き気がきたような気がしたのだ。

 気分が悪いと先生に伝え、トイレへと向かう。講堂の裏側を通る通路で、ふと、不審な人影に気づいた。

 なにやら僕らとは違う制服を着た生徒――いや、大人にも見える。彼らは無線機を片手に、壁際で何かの作業をしていた。


(工事中……? いや、今このタイミングで?)


 そのとき、もう一人の人物――長い黒髪を結んだ女子生徒が、低い声で無線に向かって言った。


「解除開始。残り四分。対象は裏通路。複数設置。」


(……解除?)


 見間違いではない。彼らは「何かの装置」を取り外そうとしていた。しかも、そこを通る人はその存在にまったく気づいていないように振る舞っていた。なぜなのだろう。


(まさか……爆弾!?)


 背筋が凍った。恐る恐るその方向を見やると、確かに、金属の隙間に小さな赤いランプが点滅していた。解除班のひとりがしゃがみこみ、手際よく器具を扱いながら作業を続ける。僕は思わずその場に立ち尽くしていた。怖いけど、目が離せなかった。そのときだった。


「君、見えてるのか」


 背後から、静かな声。振り返ると、少年――恐らく上級生だろう――が無表情のまま、僕を見ていた。手には奇妙な装置。そして、拳銃のようなもの。


「見なかったことにしておいて。というか……さっきも見てたよね?まあ、忘れてね。申し訳ないが。」


 そう言って、彼は手の装置を僕の額にかざした。カチッという音。次の瞬間、視界が歪み、思考が霞んでいく。


――記憶が、消えていく。


~~~~~~~~~~~~


 気づいたときには、講堂では校歌が流れていた。


(……あれ?)


 僕は立ち尽くしていた。まるで一部だけ空白になったかのように、記憶が繋がらない。生徒たちが整列し、式は終わったらしい。保護者が席を立ち、ざわめきが講堂に広がる。


(……なにか、見た気がする。でも、なんだったっけ……。)


 急に吐き気が襲ってきた。頭の奥が締めつけられるように痛む。ふらつく足取りで、保健室へ戻ると、あの先生が呆れた顔で立っていた。


「また戻ってきたの? 今度は何?」

「……ちょっと吐き気がして。」

「その症状って...。ちょっとまってて。」


 そういって、先生はなにやら奥の方の棚から薬を取り出すと、言った。


「もしかしたら、この薬が効くかもね」

「もしかしたら?」

「……気にしないで。早く飲んで、教室に戻りなさい」


 促されるまま薬を飲むと、少しずつ頭が冴えていく。階段を上りながら、僕は胸の奥に残ったざらりとした違和感を薬だけではどうしても拭えなかった。


(……この学校、なんか、おかしい。)


 こう思ったことが、僕の“非日常”の、本当の始まりだった――。

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-著者 宮本葵-
茨城県南部出身。中学2年生。鹿行地域とは違ってメロンをたくさん食べれないところに住んでいる、メロン好き。バナナも好きだがやはりメロン。最近、つくばの祭りに行った際、メロンが入ったメロンソーダに目を引かれてしまい、購入。めちゃくちゃ美味しかった。

宮本葵の他作品
僕の中学校生活がループしているので抜け出したいと思います。
シェア傘ラプソディ♪
最後の7日間 〜吹奏楽コンクール県大会まで〜
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