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Prologue -New school term-

4月7日。春風がまだ少し肌寒さを残す中、僕はなぜか一人、学校の門の前に立っていた。


今は、朝の6時40分。入学式は9時からだというのに、緊張のあまり一睡もできず、僕は始発でここに来てしまった。


新しい制服のネクタイはぎこちなく、靴はまだ足に馴染んでいない。


「……流石に、早く来すぎたな。」


誰もいない正門。校舎の窓には灯りすらついていない。


けれど、その静寂の中に――奇妙な“気配”があった。


遠くの方で、「カッ、カッ」と硬い靴音が響く。

見知らぬ制服の生徒たちが、手早く耳につけた無線でやりとりしている姿が見えた。

その手には、何か銀や黒の銃のようなものが握られている。


(……え? なに、あれ)


思わず塀の陰に身を隠した。


彼らは迷いなく校舎の裏手へと走っていく。その先に――人影。


フードを被った何者かが、フェンスを越えようとしていた。


「制止! ここは立入禁止区域!」


「逃げたぞ!」


次の瞬間、光が閃いた。音は、ない。

だが確かに何かが発射され、男の足元が爆ぜたように揺れる。


(今の……銃? 音が……しなかった?)


その瞬間、僕の心臓がドクンと高鳴った。


逃げようかと思った――でも、足が動かなかった。


次の瞬間、フードの男がこちらを振り返った。


その目が――一瞬、僕を見た気がした。


(まずい、見つかった……!)


と、思った瞬間だった。


背後からふっと風が吹いたように誰かが立ち、僕の肩に軽く手が置かれた。


「――大丈夫。すぐ、忘れるから」


優しい声だった。


だが、何かが僕の意識を引っ張る。


視界が、白く、音も、匂いも、感覚も――ゆっくりと、失われていった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


気がつくと、僕は校門前のベンチに座っていた。


「……?」


時間は7時00分。入学式開始60分前。


手には入学式のプリントと、誰かにもらったらしい学生証が握られていた。


「変だな……どうやってここまで来たんだっけ……?」


まるで夢でも見ていたような、ふわふわとした感覚が残っていた。


でも――気にする必要はない。


だって、何もなかったのだから。

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