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最強未満、最高以上。  作者: りょ
テンプレを壊す遊び方
32/39

031 理想世界の廃棄されし生命

大変申し訳ありません。課題やミーティングが立て込んでいて、しばらく不定期な投稿になります。

更新された際にはすぐ読めるよう、ぜひブックマークしておいてもらえると嬉しいです。

「おい、見ろ」


塔の外縁部――さきほどまで安定を取り戻していた構造壁に、再びひびが走った。

それは物理的な損壊ではない。空間そのものに干渉するような、バグとも異なる“存在の侵食”だった。


「さっき観測したことで、あっちが――動いた」


塔の最深部、制御核の奥。

そこに、今まで反応しなかった“もう一つの扉”が浮かび上がっていた。


「さっきはなかったな、あんな構造」


創零が一歩、扉に近づくと、空間が歪む。

重力が反転するような錯覚。冷気にも似たエラーコードの風が、彼らの装備をかすめて通る。


「行く?」


「ああ」


扉を開いた先は、暗闇だった。


光源があるのに、視界が“塗りつぶされる”ような闇。

だが、それは少しずつ形を持ちはじめた。


まるで“消去された空間”が、自らを再生しようとするように――


(これは……)


立っていたのは、円形の空間。


球状のフィールドの中に、浮遊するデータの残骸。

ログ、スキル、NPCのフラグメント、かつてあっただろう建造物のデータが、壊れたままホログラムのように揺れていた。


「全部何かの断片か?」


シュウユが、緩やかに剣の柄に手をかける。


「“あの理想世界”の、廃棄された素材たち……ってことか?」


「うん。でも、完全には死んでない。今、少しずつ……再起動してる」


シュウユが〈超感覚〉を使うと、その中心に――“心臓”のように脈動する存在が見えた。


それは、骨のようなフレームを纏ったAI。

完全な姿ではない。パーツで構成され、挙動すら揃わない。


だが、それは確かに“起動”していた。


《構成パターン確認不能》

《警告:動作基準外の演算構造を検知》


「――来るぞ!」


その瞬間、“それ”が反応した。


無音の衝撃。

削り取るような一撃が空間を裂く。


咄嗟に転移魔式で距離を取るシュウユ。

創零も防壁を展開し、ギリギリで直撃を回避する。


「動きは鈍いけど……あれ、“学習型”。次は通じない」


「だったら――速攻で潰す!」


シュウユは魔式連携を展開。五つの座標を結び、〈星陣〉を再起動。


――だが。


敵のが、その連携座標を読み取り、瞬時に“模倣”してきた。


「チッ、まさか……!」


自分の攻撃パターンを解析し、“似た転移型”の挙動で接近してくる。


(理解と応用が速すぎる。こいつ……完成してねぇ分、自由度が異常なんだ)


失われた理想世界の影が、シュウユたちに牙を剥こうとしていた――


爆音が響く。

魔力衝撃とデータ破片が交差し、空間そのものが“ひずむ”。


「ッ、やっば、こいつ……デタラメだ!」


シュウユが跳ぶ。


斬撃も、魔式も、すべてを“模倣”された後に跳ね返される。

相手はすでに“戦い方”を学びはじめている。


創零が横で演算式を走らせながら、干渉魔式を展開。

その指先から放たれた〈拡張干渉式〉が、敵の構造を一部強制開示する。


「“自分”がなかったから、他人を取り込んで構成してるのか……!」


シュウユは魔式の選択を変える。


「なら……“真似されても意味がない”やつでいく!」


魔式〈偽蛇王転位陣〉――


を、超簡略構成で展開。

〈歪曲転写〉で無理やり読み込み、即席仕様に組み直す。


「喰らえ……即席八蛇!」


五点の転移陣が地面に浮かび上がり、そこから蛇型の魔力分体が“ランダムな挙動”で飛び出す。

すべてが“予測不能”。模倣されようにも、“型”が存在しない。


「で、こういうのは“俺らしさ”全開ってことで――」


直後、敵が対応の“準備モーション”に入る。


が、その刹那。


「――今だ、創零!」


「観測式展開!」


創零の目が淡く光る。


魔式〈虚数干渉観測陣〉。


観測者としての権限を一時的に開放し、“構造そのもの”に対して書き換える。


「再構築。ID:CRE-0000に上書き!」


空間が軋む。

ナインレスの挙動が一瞬止まる。


「動き止めたぞ!」


「今のうちに、決める!」


シュウユは五点転移のラスト地点――空中――から落下するように突っ込み、剣を逆手に構える。


「お前の“模倣”じゃ届かない、“俺のやり方”ってやつ、見せてやるよ!」


〈跳閃転移〉+〈衝撃魔式〉+〈偽蛇王余波陣〉

三重魔式の即席連携。


敵の中心核に直撃する魔力の奔流。


「――あばよ!」


爆風。


中心が砕け、構造が崩れ、空間が白く反転する。


そこに残ったのは、ただ微かに輝く断片データだけだった。


「……やったか?」


「うん。消えた。というか、戻ったんだ、あの存在は」


創零が拾い上げた光片は、どこか寂しげに揺れていた。


「……ああ」


静かに、塔の最深部に光が満ちていく。


シュウユと創零が歩き出す。

お読み頂き誠にありがとうございます。

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