表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強未満、最高以上。  作者: りょ
テンプレを壊す遊び方
2/39

002 チュートリアル?そんなの聞いてない

Connecting to NeoEden…


…78%


…100%


【Welcome to NeoEden】


――空が、あった。


どこまでも高く、どこまでも澄んだ蒼。

雲はゆっくりと流れ、吹き抜ける風は頬を優しくなでていく。

草の匂いが、土の温もりが、遠くから聞こえる鳥の鳴き声が――すべてが、あまりにも自然だった。


現実の再現なんて生ぬるい。

これはもう、現実以上だ。


「……これが、フルダイブってやつかよ」


思わず漏れた独り言。

その声に、横から応答が返ってきた。


「こんにちは。ようこそ《NeoEden》へ。私はAIチュートリアル担当、ヘルメスと申します」


振り返ると、そこには白いローブをまとった青年の姿。

柔らかな微笑をたたえた整った顔立ち。神殿の神官のような、どこか神聖さすら感じさせる佇まい。

だが、目の奥には冷たい無機質さが宿っている。彼はAIだ。


「……チュートリアルね。まぁ、そうだよな」


シュウユは周囲を一瞥しながら、ゆっくりと首を回した。

天候は快晴。周囲には草原が広がり、遠くに小さな村のような建物群が見える。


「初回起動の皆様には、基本操作やインターフェースの説明をさせていただいております。よろしければ――」


「飛ばしてくれ」


「え?」


「チュートリアル。俺、そういうの飛ばしたい派なんだよ」


にやっと笑って、指をぱちんと鳴らすような仕草をする。

その態度に戸惑いを見せつつも、AIの瞳が僅かに光を放った。


「……確認します。過去にフルダイブ型タイトルのプレイ経験は?」


「RTA。あと、少しだけ《ファントムクレイドル》も触った。他は色々あるけど忘れた」


「承知しました。ログイン履歴と認識能力を照合……プレイヤープロファイル一致。シュウユ様ですね。戦闘傾向:機動型、高速処理タイプ。過去のジョブ傾向:変則構成を好む。チュートリアルは最小構成に切り替えます」


「助かる」


一礼するように右手を前に差し出すと、目の前にホログラフィックなUIが展開される。


「では、初期ステータスの配分と、ジョブの選択をお願いします」


その瞬間、まるで現実のゲームでは見たことがないようなジョブ名がいくつも表示された。


見慣れた剣士系や魔導士系もある。が、その中に紛れて、いくつか異質なものがあった。


シュウユの視線が、自然と一つに引き寄せられる。


ホログラムUIに並ぶ、いくつものジョブ候補。

その中でシュウユの目を引いたのは、どこか“異物”めいた選択肢だった。


【|転移魔式使い《アルケインテレポティスト】

――位置操作系魔式の応用により、空間干渉と高速戦闘を得意とする。

※高難度ジョブにつき、初心者プレイヤーには非推奨です。


「……おいおい、こんな美味そうな地雷、選ぶなってほうが無理だろ」


笑いながらそのジョブに指を向けると、ヘルメスがすかさず言葉を挟んだ。


「そのジョブは操作の難しさから初心者には――」


「いや、これにする」


「は、はあ……承知しました。ではスキル傾向に合わせ、ステータスの初期配分もお願いいたします」


再びホログラムが展開され、能力値の割り振りが始まる。


HP、MP、STR、VIT、STM、AGI、TEC、DEX、LUC。

いわゆるおなじみのRPGパラメータだが、どこにどれだけ振るかでプレイスタイルは大きく変わる。


「ふむふむ……なるほどね……」


シュウユはうなりながらも、手を止めずに振っていく。


────────────

Name: シュウユ

LV: 1

職業: 転移魔式使いアルケインテレポティスト

10,000K

HP(体力): 20

MP(魔力): 60

STR(筋力): 45

VIT(耐久力): 1〈推奨:10以上にしてください〉

STM (スタミナ): 30

AGI(敏捷): 15

TEC(技量): 1〈推奨:10以上にしてください〉

DEX(器用):1〈推奨:10以上にしてください〉

LUC(幸運): 30

初期スキル

・転移魔式MP消費軽減 LV.1

・超感覚 LV.1

・空中歩行 LV.1

装備

右:初心者の片手剣

左:見習い魔式使いの杖

頭:選択してください

胴:選択してください

腰:初心者のズボン

足:選択してください

アクセサリー:選択してください

────────────



「これで決まり」


「……あ、あの。運営からの推奨として、VIT・TEC・DEXは最低限10を推奨しております。現在の構成では極端にバランスを欠いており、初期エリアでも――」


「そのバランスがつまらないんだって。俺は“やってみたいこと”をやる。失敗するかどうかは、俺が決める」


「……承知しました。プレイヤーの意志を尊重し、登録を完了します」



「空中歩行って、初期から使えるのか。やっぱこのジョブ、ヤバくて楽しいな」


「それでは、転送地点を設定いたします。今回はプレイヤー適性を考慮し……〈始まりの樹海〉へ送らせていただきます」


「樹海?」


「ええ、風と魔力の流れが複雑なフィールドです。迷いやすい地形ですが、同時に探索には最適の初期マップとされています」


「ふーん。まぁ、楽しめりゃどこでもいいさ」


転送の準備が完了し、ヘルメスが一礼する。


「それでは、シュウユ様の《NeoEden》での冒険に幸多からんことを。――転送、開始します」


シュウユの視界が一気に白く染まり、足元の地面がぐにゃりと歪んだ。


重力のベクトルが切り替わり、彼の身体が下へ――世界の向こう側へ、滑り落ちていく。



お読み頂き誠にありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ